70話 焼け焦げた村と真実
ヒルファと街道を歩き続けて数十日。
俺とヒルファはついに、カルラの生まれ故郷と思われる辺境の村にたどり着いた。
「ようやく着いたなアラタ。しかし、酷い…」
ヒルファの言う通り、その村は酷い光景だった。
焼け焦げた家屋が立ち並び、村の中央広場には丸太がいくつも打ち込まれ、その根元には焼け焦げた薪のようなものが積まれている。
広場の丸太…これは一体何なのだろう。
そして、その広場の脇には、無数の墓標が並んでいた。
墓標の手前に土が盛られているところを見ると、彼らはそこに埋められているのだろう。
もしかして、全部カルラが埋葬したのか?
「ひでえもんだな…おそらく、あの丸太に括られ、生きたまま火で焼かれたのだろう…」
ヒルファは悲痛そうな表情を浮かべると、無数の墓標に向けて手を合わせ、黙祷を捧げていた。
聖職者らしい一面もあるんだな。
「一応言っておくぞ。これは神に祈ってるんじゃねえ。犠牲になった方々へ、冥福を祈っているだけだ」
ヒルファは黙祷を捧げながら口だけを動かし、言った。
「…知っているさ」
俺もヒルファに倣って黙祷を捧げた。
黙祷を終え、俺は墓標に目を向けた。
『カイル・ネメシス 村長 ここに眠る レイジア教の真実を知り、戦おうとした偉大な父』
『レイカ・ネメシス 村長婦人 ここに眠る 夫を支え、最後まで息子と娘を守ろうとした偉大な母』
『ネリア・ネメシス 村長の娘 ここに眠る 心優しく純粋で、かわいい妹』
一番手前にはこの三つの墓標が立てられていた。
ネメシス…間違いない。カルラの家族たちだ。
大事な家族の墓を自分で掘ったなんて…どれだけ心が痛かったものか…
想像するだけで心が引き裂かれそうだ…
「ん?妙だな…この石碑、なんて書いてあるんだ?読めん…」
ヒルファは心底不思議そうな声を上げ、墓の脇の石碑を眺めていた。
小さい石碑だった。恐らく墓ではない。
俺もヒルファのもとに駆け寄り、石碑に目を通す。
ありえない…どうして?
その石碑は、俺には読むことができた。
『レイジア教よ、覚悟しろ。八神慶、いや、カルラ・ネメシスは、貴様らを決して許さない。いつか真実を白日の下にさらし、復讐してやる』
このように、日本語で刻まれていた。
もしかして…カルラは転生者なのか?
そして、八神慶という名前にも見覚えがある。
召喚される直前、図書館で見た新聞記事。
[特待生の悲劇 父親に殺害される]
この被害者が八神慶だった。
なんてことだ…
前世では父親に理不尽に殺害され、転生してようやく得られた家族をレイジア教に理不尽に奪われた。
こんな酷い話があっていいのか?
俺は、溢れてくる涙を、抑えることはできなかった。
「…アラタ、これを読めるのか?」
「…ああ、読める。これは、俺のもとの世界の文字だ。カルラも…そうなんだろう」
内容もヒルファに聞かせ、驚き冷めやらぬまま、俺たちは唯一焼けていない建物…
レイジア教教会に足を踏み入れた。
しかし、目ぼしいものは見つからない。
大規模魔術に関わる資料も、証拠も一切無かった。
諦めて出ようとしたその時…
床に違和感を覚える。
鳴り響く足音が僅かに違う床がある。
まるで、下が空洞になっているような…
「ヒルファさん、ここかもしれない!」
ヒルファを呼び、俺はその床に向けて魔術を放った。
すると、石畳が砕け、隠し階段が姿を現した。
「でかしたアラタ!よし、行こう!」
そして、暗闇が支配する地下へ向けて、歩を進める。
そしてたどり着いた地下室。
おそらく、隠されていた密会の部屋なのだろう。
探していたものは、すべてそこにあった。
俺とヒルファは、真実を手に入れたのだった。




