72話 ガルガンド
「同盟だと?」
ファングは鋭い目で俺を睨んだ。
まあ、信用できないのは当然だな。
「ああ、俺たちと、お前たちシャドーウルフの当面の目的は同じだろう?」
「うん!いいんじゃないかな!この人は強いしね!」
スズカも同盟には賛成のようだ。
どうせ深くは考えてないんだろうが。
「…断ったら俺たちはどうなる?厄介な俺たちには死んでもらうってか?」
ファングは俺たちを威圧しながら口を開いた。
いや、どうして殺されるって思考になるんだ…
変に敵を作るほど馬鹿じゃないっての。
「断っても何もしない。だが、相互不可侵の約束は交わしたいな。お前らを敵に回したくはないからな」
「……なるほどな。断る理由はなさそうだな…だが、覚えておけよ…裏切ったら落とし前をつけさせてもらう」
「わかった。このカルラ・ネメシスの名において、絶対に裏切らないことを誓う」
こうやって宣言しておけば、最低限信じてくれるだろう。
「よし、そうと決まれば…」
俺たちは、シャドーウルフたちの拘束を解いた。
拘束を解かれたシャドーウルフたちに、ファングは声を張り上げて言った。
「よし、同盟成立祝いだ!てめえら!酒を用意しろ!今日は宴会だ!」
「よっしゃ!さすがアニキだぜ!」
「飯も大量に用意するぞ!」
おいおい、いきなり親睦会かよ!
…まあいいか。
親睦を深めるにはいいかもしれない。
そうして、あたふたする俺たちをよそに宴会の準備が進んでいくのだった。
◇
「はっはっはっは!飲め飲め!」
「いいねえ!みんなすごく楽しい人たちじゃん!」
宴会は驚くぐらいの盛り上がりだった。
特にスズカ…
すっかりシャドーウルフの人たちと打ち解けている。
だが、確かに話してみると面白い奴らが多い。
そして、ファングから面白い話も聞けた。
シャドーウルフは魔人になってしまった人たちで構成されている、アレンシオ王国の裏社会の中枢らしい。
要するに、魔人となり、表の社会で居場所を失ってしまった人々の行き着く先がシャドーウルフとのことだ。
対立する裏社会の勢力もあるらしく、俺たちのことは、対立組織から送り込まれた鉄砲玉だと思っていたらしい。
まあ、いろいろ嗅ぎまわっていたからそう思われても仕方ない気もする。
「ところでよ、カルラ、お前たちの組織はなんて言うんだ?」
…組織…名?
そういえば考えてなかった!
「…考えるの忘れてた…」
「…ぶっはっはっは!それを忘れてどうするんだ!名前は大事だぞ?」
おっしゃる通りで…
どうしよう…
「えー、名前ならカルラが今決めちゃいなよ!」
「おう、異論はない」
「…うん、今決めちゃお」
「かっこいい名前を頼むぜぇ!」
スズカたち四人は、何でもないことのように言った。
お前ら他人事だと思って軽々しく言うな!
結構難しいんだぞ!
…いや、いいのがあるじゃないか!
完全に転用する形になるけど、俺たちを表すのにこれ以上の名前はないだろう。
「…『ガルガンド』はどうだ?」
「…監獄島の名前をそのまま使うんだね!いいじゃん!」
「うん、悪くないな」
「……賛成」
「…お前、適当にそのまま使ったんじゃないだろうな?まあ異論はないが」
そうして、俺たちは『ガルガンド』と名乗ることに決まった。
まさか組織名が酒の席で決まるとは…わからないもんだな。




