68話 突入
クロウとアイズが集合時間になっても宿に戻らなかったため、俺たちはすぐに行動を開始した。
貧民街に向かい、クロウたちの足跡を追った。
流石というべきか、あまり痕跡が残らないように調査していたようで、全く手がかりがない。
ううむ…困った。
味方が優秀すぎてこっちが苦労することになるとは…
と、思っていると…
「……なあ、アニキが連れてきたあの二人って誰なんだ?」
「俺が知るかよ…あの人が言うには、俺たちのシマを最近嗅ぎまわってたらしい。そんで、何を調べてるのか聞き出すために連れて来たらしいが…」
なんて話し声が聞こえてきた。
…クロウとアイズのことか?
俺たちは建物の影に隠れ、様子を窺った。
この貧民街の中では比較的大きな建物だ。
その扉の前で見張りをしている二人が暇つぶしなのか、雑談に興じているようだ。
「でも、聞き出すっていう割に二人気絶してたぞ?なんか強引に気絶させてきたって感じだったけど」
「……ま、まあアニキは脳筋なとこあるし…あの人らしいじゃん?」
「まあそうなんだがな…っていうか、あの二人絶対只者じゃないだろ…一人は身体に羽っぽいの生えてたぞ?あれ絶対魔人だろ…」
「まあなー。だが、別に魔人だからどうだってこともないだろ」
あー、クロウですねこれは…
殺されていないようで、ひとまずは安心だ。
だが、クロウもアイズも決して弱くない。
そんな二人を殺さず捕らえるとは…
油断したら俺たちもやられかねない。
っていうか、雑談でそんな大事な情報漏らすとか…
こいつらバカなのか?
なんていうか…抜けてる…
一周回って罠じゃないだろうな?
まあ、罠かどうか慎重に調べているうちに手遅れになるよりは、突っ込んで確かめた方がマシか。
そして、俺は後ろにいるスズカとオルガの方を見る。
「…聞いたな?クロウとアイズはあの建物にいる可能性が高い。準備はできてるか?」
「もちろん!いつでも行けるよ!」
スズカは小声だが、元気に答える。
「俺もだ。いつでもいいぜぇ」
オルガも好戦的な笑みを浮かべ、答える。
「あくまで目的はクロウとアイズの救出だ。相手は殺すなよ。気絶させるだけにしろ」
「……わかってるし…」
「……わかってらぁ…」
スズカとオルガは俺から顔を逸らしてボソッと言った。
おい、なんだ今の間は…
こいつら殺す気満々だったのか!?
あっぶねー、念のため言っておいてよかった…
クロウとアイズが殺されてるならともかく、生きたまま捕らえられている以上、まだ敵対が決定的になったわけじゃない。
「よし、行くぞ!」
俺の掛け声と共に、スズカとオルガも駆けだした。
俺もだが、二人とも既に魔人形態となっている。
即座に見張りの二人を無力化し、扉を蹴破る。
「っ!!誰だてめえら!」
「見張りの二人は!?やられたのか?」
「カチコミだ!下のアニキを呼んでこい!」
俺たちが突入すると、途端に建物内が騒がしくなる。
…なるほど。アニキとやらは下か。
なら、クロウたちも下にいるかもな。
っていうか、こいつら俺が聞き出すまでもなく情報を垂れ流してくれる件。
やっぱバカなのか?
っていうかカチコミって…
ヤクザじゃないんだから…
なんてことを考えながら、俺たちは次々と中の奴らを無力化する。
一人は触手で締め落とし、一人は顎に蹴りを入れて気絶させる。
スズカは峰打ちで気絶させ、オルガも水属性魔術で相手の口と鼻を塞ぎ、気絶させていた。
オルガ、やってることがえげつないぞ…
…まあいいか。死んでないみたいだし。
そして、左目の魔眼でアニキとやらを呼びに行った奴が残した魔力の痕跡を追った。
すると、地下に続く階段にたどり着いた。
「アニキ!カチコミだ!誰かがカチコミかけてきやがった!」
そんな声が、階段の奥からこちらまで響いてくる。
この先にアニキとやらがいるのは確実だな。
俺たちは階段を駆け下りる。
「カチコミだぁ?どこの輩だ!」
さっきとは違う声が奥から響く。
「わ、わかんねえ!だが三人だ!異様な姿の奴が率いているみたいだ!右腕が触手みたいで、左腕はでかい悪魔みたいな腕だった!」
はい、道案内ご苦労様。
俺は背後から男を触手で締め落とす。
部屋には、椅子に括られたクロウとアイズがいた。
クロウは既に目を覚ましていたが、アイズはまだ意識がないようだ。
そして、二人の目の前にいたのは…軽鎧を着用し、フードを被った男だった。
なるほど…こいつが…
確かに、他の奴らとは格が違いそうだ。
「よう、見事に捕まってるじゃないか。お前らしくもない」
俺は捕まっているクロウに向けて話しかける。
クロウは目を見開いて驚いている。
「…おいおい、おたくら何者だ?この二人の仲間か?」
「まあ、そんなところだ。二人を返してもらおう」
フードの男が気だるそうに話しかけてくるが、俺もすぐ言葉を返す。
「そうはいかないんだな、これが。お前らも仲間だってなら、ちょうどいい、お前らからも聞かせてもらおうか」
そうして、フードの男との戦いが始まった。




