67話 尋問
んん…いてて…
そうか…俺は…謎の男にやられて、気を失っちまったのか…
それで…ここはどこだ?
幸い、目隠しはされていない。
だが、手足は椅子に括られている。
檻じゃないのは意外だったな。
周囲を見渡す。
隣には俺と同じように椅子に括られたアイズの姿があった。
まだ目は覚ましていないようで、目をつむっている。
部屋の様子も、奪ったものなのか、様々な書物やら道具が散らかっている。
壁も石造りとなっており、窓も無い。
明かりもランタンの魔道具しかなく、薄暗い印象だ。
そのせいで、今の時間が一切わからない。
どれくらい眠っていたのかも。
…俺の手足を縛っているのは縄だけだ。
逃げるのは容易だ。
…この男さえいなければ。
「よう、目が覚めたか。よかった。あんたらに聞きたいことがあるんだ」
問題は、俺とアイズの前にこの男が座っていることだ。
俺とアイズを容易に無力化して見せた、この男が。
悔しいが、こいつの前では俺の実力では到底逃げられない。
「…俺が簡単に口を割ると思うか?」
俺ができるのは、せいぜい強がりぐらいだ。
「思わねえな。だから、こうしようと思ったんだ。この方があんたには効きそうだ」
そう言ったこの男は、まだ気を失っているアイズの首元にナイフの刃先を向けた。
表情に出さなかったつもりだが、つい出てしまったようだ。
失敗した。こいつがそれに気が付かないわけがない。
「だよな、思った通りだ。あんたは口が堅い。それも、拷問したって吐きはしないだろう。だが、この娘が傷つくのは本意じゃないだろう?」
「…やりたきゃやればいい。俺にはどうってことない」
「見え透いた嘘はつくもんじゃないぞ?うっかり俺の手が滑ることはないと思うのか?」
…虚勢を張るのも無駄か。
面倒だな…
「いいや、あんたはやらないね。情報源になり得る奴を下手に傷つけるほど、あんたはバカじゃないだろう?」
「…思ったより頭は回るようだな。だが、俺としては口さえきければ他はどうなろうと構わないんだが?指の一本や二本、はたまた手足でもいい。斬り落としたところで俺は困らない。どうだ?話す気になったか?」
「……」
俺は黙るしかなかった。
今のやり取りでわかった。
こいつは本気だ。
殺すつもりはなさそうだが、口を割るためならこいつはやる。
「…話す準備は整ったようだな。じゃあ、最初の質問だ」
そう言って、この男は何かが包まれた包み紙を懐から取り出し、俺に見せてきた。
オルガが持ってきたやつと同じだ。
「…こいつを知っているか?」
「…ああ」
俺は観念したように喋った。
「こいつは何だ?」
「…知らない。俺たちもそれを調べてたところだ」
俺がそう言うと、男はアイズにナイフの切っ先を向けた。
「本当か?」
「本当だ。俺が知りたいくらいだ」
男は俺の顔を吊り上がった目で睨む。
「いや、その顔、この薬についてもう少し知っているだろう?言ってもらおうか」
クソッ、こいつ、心でも読めるのか?
「…詳しくは知らない。だが、レイジア教が関与してる可能性がある」
「…なるほど。今度のは嘘ではなさそうだな。じゃあ次の質問だ。あんたらは何者だ?」
あんたら…ね。
「…俺はクロウという。横の女はアイズだ。この薬について調べてた」
「…なるほど。今のも嘘じゃない。そうか…」
よし、わかったぞ。
こいつにわかるのは、俺が嘘をついているか、本当のことを言っているかだけなのか。
それなら、やりようはある。
そう思っていると、上の方から轟音が響き渡った。
「おい!今の音はなんだ!」
「アニキ!カチコミだ!誰かがカチコミかけてきやがった!」
そう言って、転がり込んできたのは軽鎧を着た男だった。
「カチコミだぁ?どこの輩だ!」
「わ、わかんねえ!だが三人だ!異様な姿の奴が率いているみたいだ!右腕が触手みたいで、左腕はでかい悪魔みたいな腕だった!」
右腕が触手で左腕はデカい悪魔の腕?
カルラか?
でも、どうやってここに?
そう思っていると、その軽鎧の男に黒い触手が巻き付き、締め落とした。
「よう、見事に捕まってるじゃないか。お前らしくもない」
そう言って現れたのは、笑顔のカルラだった。




