65話 緊急事態
アレンシオ王都での調査を開始して数週間が経過した。
今のところ、麻薬の出所の手がかりは全くといっていい程得られていなかった。
一か月ほど前から出回り始めたという話は聞けたが、それ以外は全くだった。
王都内でできる依頼を一通りこなし、俺、スズカ、オルガの三人は宿に戻った。
「おいカルラ、どうする?ギルドでの情報収集はこれ以上は無駄じゃねぇか?」
オルガは若干疲れた様子でぼそっと言った。
「だよねえ…。カルラ、私もそう思うよ」
スズカも手応えを得られていないことで徒労感を感じているようだ。
普段の快活さも鳴りを潜めてしまっている。
「…そうだな。ギルドでこれ以上調べても無駄かもしれないな…俺たちも貧民街の調査にまわるか」
定期的に宿でクロウとアイズと合流し、調査結果の報告を聞いているが、向こうも順調とは言い難いようだった。
例の麻薬を使っている奴はそれなりに見つけたようだが、売人と思われる奴らは見つけられていないようだ。
取引現場も見当たらず、困っているようだった。
そして、貧民街を仕切っている犯罪組織もこれに関与していないようだとも言っていた。
俺たちと同じように出所を探っていると思われる構成員を見かけたそうだ。
…となると、犯罪組織が仲介人になっている説もなくなってしまったわけだ。
…うまくいかないものだ。
とりあえず、今日は集まって情報共有する日だ。
そこでいい情報が得られていればいいのだが…
そうして宿で待つこと数時間…
約束の時間はとうに過ぎた。
クロウたちは少し遅れることはあっても、一時間以上遅れたことは今までなかった。
「…ねえカルラ、クロウとアイズ、遅すぎない?何かあったんじゃないの?」
スズカも心配しているのか、室内をうろうろしていた。
「そうだな、いくら何でも遅すぎるなぁ。俺たちも貧民街に向かったほうがいい」
「ああ、すぐに向かおう。準備はできてるな」
入れ違いの心配はあるが、それならそれでいい。
手遅れになるよりはマシだ。
そうして俺たちも、貧民街に向けて走り出した。
◇
貧民街にある、とある建造物、
その一室に、椅子に括りつけられた人が二人。
一人は暗殺者めいた格好の男。
もう一人は魔女のような風貌の女だった。
二人とも意識を失っている。
「おい、こいつらは何なんだ?このブツをばら撒いてる奴らの仲間なのか?」
「わからない。ただ、何か知ってるかもしれないとアニキが連れてきたみたいだ」
そう話しているのは、軽鎧を装備した二人組だった。
そして、その二人の背後に現れる、一人の男。
「俺らのシマでうろちょろしてた二人組だ。例の薬について何か知ってるかもしれないと連れてきた」
「うわっ!いつも言ってるじゃないですかアニキ!いきなり後ろに出てくるのはやめてください!びっくりするじゃないっすか!」
「そうっすよ!ただでさえ気配が希薄なんだからマジでびっくりするんですって!」
背後に現れた男に対し、二人組は飛び上がるように驚き、苦情を言った。
「それで、こいつら、あの薬について何か知ってるかもしれないんですよね?」
「ああ、いろいろ調べてるようだったからな。抵抗されたんで、少し力ずくにはなっちまったがな。まあ、知らなかったとしても構わないがな」
そうして、謎の建造物にて、見知らぬ二人組への尋問が始まろうとしていた。




