63話 調査開始
アレンシオ王国、王都。
活気に溢れ、通行人の顔にも笑顔が浮かんでいる。
大通りには多くの露店が立ち並び、客引きの元気な声があちこちで響いていた。
一見すると、都にふさわしい華やかな町だ。
しかし、確かに闇も深そうだ。
ひとたび大通りから外れ、裏路地に入れば、まるで別世界のようだった。
汚れた石畳。
人通りは少なく、陰鬱な雰囲気が支配していた。
やはり、貧富の差は激しいようだ。
…まあ、この辺は仕方がない気もするが。
そうして俺たちは、ひとまず宿を取り、そこで今後の方針を話すことにした。
「このアレンシオ王都には、こういった路地裏だけでなく、貧民街もある。そして、そこを牛耳る犯罪組織もあるようだ。こう考えると、確かに麻薬が広まりやすい条件は整っているな」
クロウがメモを見ながら、仕入れた情報を報告する。
なるほど。情報屋からもらった情報をメモしてくれていたのか。
…キミ、しごとできるタイプだね?
「ああ、こういった治安の悪い地区は、政府の目が届きづらいのもあって、後ろ暗い奴らが潜伏するのにもってこいだからな」
つまり、薬の保管場所として、一番怪しいのはその貧民街。
だが、情報屋からの情報も、保管場所としてアレンシオ王都が「怪しい」というだけで、確証があるわけではなかった。
…よく考えりゃあ確信がないからこそ無料の情報だったのかもな…
だが、俺たちだけでは手がかりすら掴めなかったんだ。
美味しい情報に変わりはない。
「クロウとアイズは、まず貧民街の調査から始めてくれ。大所帯で貧民街に足を踏み入れるのは目立ちすぎる。まずはお前たちだけで頼む」
「あいよー、任された」
「俺とスズカ、オルガでギルドに向かう。冒険者とか傭兵からも情報は得られるかもしれん。依頼を受けて金策しながら情報収集だ」
それぞれに指示を与え、俺たちはアレンシオ王都の調査を本格的に開始した。
◇
西側諸国のとある地下集会所。
そこに再び集まる黒いローブの集団。
しかし前回とは違い、円卓の椅子の一つは空席だった。
すると、その空席の椅子から、若々しさと老獪さが同居したような声が響いた。
「今日はそちらに向かうことができなかった。申し訳ない。魔道具越しに参加させてもらう」
「わかった。では揃ったな。定例会議を始めよう。何か報告することがある者はいるか?」
「私から報告事項がある。つい先日、カルラ・ネメシスとの接触に成功した。その際、最近出回り始めた麻薬の情報を渡した。これで、カルラの一味とレイジア教は衝突するだろう」
魔道具越しの報告は、皆を驚かせるには十分な内容だった。
「おお、凄いな。どうやったんだ?」
議長が驚きと同時に問いかける。
「どうやるも何も、向こうから接触してきた。オルガとは元々知り合いだったからな」
「…ほう、オルガと知り合いだったのか。初耳だな。でも、よくやった」
そうしてわずかな間を置き、再び声が上がる。
発言者は、黒いローブを纏った女性だった。
「私からも報告。大した内容じゃないけど。カルラの率いる魔人の集団は、監獄島でレイジア教による襲撃を受けたみたい。そのときに、カルラと勇者が交戦、両者はほぼ互角。死傷者を多数出したものの、撃退に成功。復興は順調に進み、今は落ち着いているみたい」
「…なるほど。お前は情報源になる魔人を送り出していたんだったか。いい情報だ。よくやった」
そうして会議は進み、報告は出尽くした。
そして、議長が会議を締める。
「報告は以上でいいな?では、今後もカルラの一味への支援は続けるものとする。以上、解散」
そして、黒ローブの集団は再び闇に紛れて消えていった。




