61話 元締め
魔人の犠牲者たちを弔って数週間。
復興も軌道に乗り始め、俺が島を留守にしても問題ない体制が出来上がった。
そんな俺は今…
「ちょっ!ガルド!少しくらい手加減してくれてもいいんじゃないの!?」
「何をおっしゃいますカルラ様。厳しく鍛えてほしいと願い出たのは、カルラ様ではありませんか」
ガルドにしごかれていた。
いや、自分の不甲斐なさを感じて鍛えてほしいって言ったのは確かに俺なんだけどさ…
こうもフルボッコにされるとさすがにへこむって…
「別に身体強化を使っての修練も決して無駄ではございません。使えば、もう少し食い下がれるかと思いますが?」
「俺はお前に勝ちたいわけじゃないんだが…」
そう、これはあくまで修行。
身体強化を使って勝っても意味がない。
俺は勇者に身体能力や技量で勝っていながら、炎熱加速を使うまで攻めきれなかった。
おそらく、あの勇者は勘が異常に鋭いタイプなんだろう。
…もしかしたら運もいいのかもしれないけど。
ならどうするか。
炎熱加速を使わずとも、勘や運に頼った防御でも止められない攻撃をすればいい。
…安直すぎか?
いや、シンプルイズベストだ。
間違ってはいない…はずだ。
そうして、修行を続けていると…
「おおカルラ、やっぱここにいたかぁ!」
「ん?オルガ?お前帰りはまだ先の予定じゃなかったか?…何かあったのか?」
先週から、オルガにはレヴィアス海賊団を率いて大陸での物資補給と魔人の保護をお願いしていた。
全て終わらせてきたにしては早すぎる。
こいつらが途中で切り上げて戻ってきたということは…
よほどの事態があったのか…
「…気になるブツを入手してなぁ…お前にもすぐ知らせるべきだと思って緊急で帰ってきたんだぁ」
そう言ってオルガは折りたたまれた包み紙を懐から取り出した。
その包み紙には…錠剤が入っていた。
「…それはなんだ?なんの薬?」
「救出した魔人が持っていたのを取り上げたもんだ。その魔人、魂が抜けたようにぼーっとしてやがったんだが、これを取り上げるときだけ妙に抵抗されてな。おそらく、麻薬の一種だろう」
…ああ、やっぱりその手の薬はこの世界にもあるのか…
そういうところは前世の世界も、この世界も、変わらないな…
「…この薬が、人間社会に蔓延しているのか?」
「情報屋から聞いたところによると、どうやら最近出回り始めたらしい。そして、ここからが本題だぁ。この薬を流している元締めが、レイジア教かもしれないとのことだ。お前の言っていた、鎮静化計画にも関わりがあるかもしれないと思ったんだ」
…もはや呆れて驚く気も起きない。
曲がりなりにも人類救済を謳う宗教団体が麻薬をばら撒くとかいろいろと終わってる。
でも、確かに気になる。
調べる価値はありそうだ。
「よく知らせてくれた、オルガ。俺たちも大陸に渡る。今日のところは準備を整え、明日出発する!」
そうして俺たちは薬の出どころの噂を確かめるため、大陸に渡る準備を始めた。




