58話 撃退の後
レイジア教の襲撃者たちは撤退した。
島の防衛には成功した。戦略的には勝利と言える。
だが…受けた被害は…到底勝利といえるものではない…
家屋は破壊され、民間人には大量の犠牲が出た。
隠し通路に気が付かなかったなんて、言い訳にもならない。
スズカとアイズたちは、レイジア教の奴らが撤退してわずか数分後に帰還した。
その惨状に、さすがのスズカも真剣な表情で、帰還後すぐに救援活動に入っていた。
「…ちくしょう…みんなに申し訳がたたねえ…」
こんなことで犠牲になっていい人たちじゃなかった。
これまで理不尽な目にあってきた人たちだ。
これから幸せに暮らしていってほしいと思ってたのに…
俺はみんなを守れなかった…
「……おいカルラ!しゃんとしろよ!こんな時にお前がもたついてどうする!」
クロウの檄が俺に向けて放たれる。
…分かってる。
分かってるんだ。
俺がこんなことではいけない。
空元気でもいい。
切り替えろ!
反省なら後でしろ!
今やるべきことをしないで何が首領だ!
「まずは負傷者の救護を!アイズ、片っ端から治療を始めてくれ!重傷者を優先に頼む!ほかの者たちは消火活動と、建物に取り残された人たちの救助を頼む!」
声を張り上げ、指示を飛ばす。
みんなはそれぞれ一目散に散っていった。
…俺も動かないと…
考えるのは、すべてが落ち着いた後でいい。
そうして動き続けること半日…
ひとまず、救助活動は一段落した。
「アイズ、ガルドの容体は?」
「……命に別状はない…ただ、数十人の聖騎士から一斉に魔術の集中砲火を浴びたみたいだし…数日は絶対安静…ごめん…これほどの傷だと、私の技量だと一気に治せない」
「…いや、十分だ。お前が居てくれてよかった。ありがとう」
正直、アイズがいなかったら、犠牲者は数倍にもなっていただろう。
…間に合わなかった人たちもいたが…
クロウには、他の隠し通路の捜索を行ってもらっている。
こういったものを探してもらうのは、クロウに任せるのが一番だ。
…通路は残すことにした。
正直、破壊するべきだという意見も多かったが、一度使った隠し通路を、レイジア教の奴らがもう一度使ってくるとは思えない。
それに、うまく利用できれば、避難経路としても使えるし、もしかしたら港をもう一つ作れるかもしれない。
そういった意味でも、壊すのは惜しかった。
…このままでは終わらせない。
このまま、レイジア教の奴らに好き勝手やられてたまるか…
俺は決意を新たにして、自分の仕事に戻った。




