52話 冷ややかな目線
ワイバーンの討伐に成功した。
……ふう、正直危なかった。
炎熱加速は一度解除してから、最低でも10秒空けなければ、命に関わる。
当然、発動していた時間が長ければ再発動までの時間はそれだけ長くなる。
そして、最後のブレスを避けるために炎熱加速を再発動したのは、噛みつきを避けてからちょうど10秒後だった。
つまり…一歩間違えれば、死にはしなかっただろうが、戦闘不能にはなっていただろう。
傍目には余裕たっぷりに見えていただろうが、実際のところは冷や汗ダラダラだ。
「……まあ、こんなもんよ。ワイバーンなんて、俺の敵じゃないってことだな」
「炎熱加速発動時間ギリギリだったのに?」
「や、やだなぁ、そんなことあるわけないじゃないかー」
バレテーラ。
まあ、こいつらの目は誤魔化せないよな。
「ま、まあ勝てたからいいんだよ!それより、素材回収するぞ!」
こういうときは話を逸らすに限る。
三人からの冷ややかな目線を背中で受けながら、俺は一足先に素材回収を始めた。
ごめんて。
一人で戦い始めたのは謝るからそんな目で見るのはやめてほしい。
◇
ワイバーンの素材回収は終わった。
めちゃくちゃ大変でした、はい。
あいつ図体でかすぎるって。
だが、労力に見合うだけの価値はあった。
輝く頑丈な鱗。
防具にもアクセサリーにもできるうえ、大量に採れる優れた素材だ。
ワイバーンの逆鱗。
ワイバーン一体につき一枚しか採れない希少な鱗。高く売れる。
その他諸々、大量だ。
ワイバーンも、戦闘要員の魔人たちだけでは無理だろうが、俺、スズカ、クロウ、アイズ、オルガのうちの二人が同行すれば、そう苦戦する相手ではないだろう。
重力圧砕は、ワイバーン相手にも通用した。
これはかなり使える。
ワイバーンに使ったように、翼をもつ魔物や魔獣が飛び立った瞬間にこれを使えば、無理やり地面に叩き落とすこともできるし、飛行する相手でなくとも、重力で押しつぶして動きを拘束することもできる。
それに、この重力を使った魔術は他にもいろいろできそうだ。
奥地にあった宝箱には、ランタンの魔道具が入っていた。
……正直、微妙だ。
俺とスズカのときに出たマジックバッグは、ただ幸運に恵まれただけのようだ。
そうして、俺たちは古城に帰還した。
帰還後、留守を任せていたオルガにワイバーンの素材を渡した。
次の航海のついでに売ってきてくれるそうだ。
いくらになるか楽しみだ。
翌日、戦闘要員たちは、スズカとアイズと共にダンジョンに出かけて行った。
……スズカはワイバーンと戦いたいだけな気がしないでもないが。
そして、オルガ率いるレヴィアス海賊団が航海の準備を始めたその時…
それは唐突に起こった。
「カルラ!大変だ!緊急事態だ!」
古城の執務室で、諸々の報告書を確認していると、オルガが焦った様子で執務室に駆けこんできた。
「オルガ、どうした?お前らしくもない。何があった?」
「ガルガンド沖合に、レイジア教の帆船が現れた!」
……いつかは来ると思っていたが、よりによって今日かよ!
スズカとアイズはダンジョンに行っていて不在だ。
戦闘要員も何人か同行していて欠けがでている。
「すぐ行く!非戦闘員は古城の地下室に避難させてくれ!町に残った戦闘要員は全員戦闘準備だ!」
「わかった!」
そうして俺たちはすぐ古城を出て、港まで向かった。
そこには既にクロウの姿があった。
「カルラ、さっき上空から偵察してきた。そしたら、神威の隊長と共に、勇者らしき奴が乗ってたぞ!」
……なるほど。これは一筋縄じゃいかないな。




