51話 修行の成果
ガルガンド郊外のダンジョンの奥地。
そこで俺たちは、ワイバーンと対峙していた。
なんというか、前世の世界のゲームにあった某ハンティングゲームの某火竜に似ている。
「ワイバーンなんて初めて見たよ!凄い迫力だね!」
スズカはわくわくした表情で言った。
こいつは相変わらずだ。
そう思っていると…
ワイバーンが咆哮を上げる。
完全に戦闘態勢だ。
すると、ワイバーンは息を大きく吸い込む動作をする。
そして、大口を開けた。
その口は、俺たちに向けられていた。
「ブレスだ!避けろ!」
俺がそう指示すると、三人も散開する。
その直後、俺たちがいた場所に灼熱の炎が放たれた。
離れた位置からでもとてつもない熱気を感じる。
ワイバーンが口を閉じ、ブレスが止む。
俺たちのいた場所は、灼熱の炎に熱せられ、床の石は赤く光を放っていた。
マジか。とんでもない温度だ。
まともに喰らえばひとたまりもない。
だが、だからこそ面白い。
「おいカルラ、どうする?」
クロウは指示を待っている。
この場合は、撤退するか否かではなく、どう戦うか、という意味だろう。
だが生憎、既にどう戦うかは決めている。
ここまでの道中、俺には一切の出番はなかったんだ。
これくらいの我儘は通るだろう。
「ワイバーンは俺に譲ってくれ。お前らは道中十分遊んだんだからいいだろ?」
「えー!独り占めずるい!私も戦いたいよー!」
「うるせえ!この件は問答無用だ!それを言うなら道中は三人占め状態だったじゃないか!俺だけ散歩して帰れって言うつもりか!」
スズカがクレームを入れてくるが、この際無視だ。
……俺だって、修行の成果を実戦で確かめたいんだ。
すると、三人は広間の隅に移動して、観戦の姿勢に入った。
スズカだけはブーブー文句言っていたが、結局クロウに引きずられていた。
ワイバーンは、俺以外の三人に戦闘の意思がないと理解したのか、俺だけに目線を向けていた。
なるほど、それなりの知性も持っているのか。
やべえ…知性まで持っているってのは聞いてない。
大見得切った以上、無様な戦いはできない。
ええい!考えるのはやめだ!
よし、行こう!
俺は右腕を剣に変形させる。
身体強化も使い、ワイバーンとの距離を一気に詰める。
ワイバーンもそれを読んでいたようだ。
ワイバーンは、口を大きく開けて、噛みつく構えだ。
その攻撃は、俺の移動先に向けられていた。
俺は即座に炎熱加速を発動させた。
身体に熱がこもり、視界がスローに変わる。
俺はそのままワイバーンの顎を紙一重で躱し、そのまま足元めがけて走る。
そして、足の間を潜り抜けざまに、右腕の剣で足を斬り裂いた。
ワイバーンの足元から逃れ、炎熱加速を解除する。
発動時間は0.5秒にも満たない。
これくらいの短時間であれば、ほぼノーリスクで発動可能だ。
ワイバーンは、俺の姿が一瞬で視界から消えたのと、足を斬られたことで驚いたようだ。
痛みによって、苦痛の鳴き声を上げた。
そして、俺から距離を取るように羽ばたき、宙に浮いた。
なるほど。空中なら攻撃が届かないと踏んだか。
右腕を大砲にして魔術を放つ手もあるが、今ならもっといい手がある。
右腕を悪魔の腕のように変形させ、その掌をワイバーンに向ける。
そして、新しく考えた魔術を発動させた。
すると、ワイバーンは、急に身体が重くなったように、浮いていた状態から一転、高速で地面に叩きつけられた。
土属性魔術、”重力圧砕”。
土属性魔術は、ただ土を操るだけではない。
拡大解釈のようだが、大地を操っているとも言える。
ならば、重力も操れるのではないか?と考えた。
ただ、この魔術は射程距離が短い。
精々、5メートルだ。
だからちゃんと飛び立つ前に落とす必要があった。
落とされたワイバーンは、一体何が起きたのかわからないといった様子だ。
一気に勝負を決める!
俺はトドメを刺すべく、ワイバーンへと疾走する。
すると、ワイバーンが、口を俺に向けて開いた。
瞬間、ワイバーンの口からブレスが放たれた。
俺は再び、炎熱加速を発動させる。
即座にブレスの範囲から逃れ、肉薄する。
俺はワイバーンの首めがけて右腕の剣を振り下ろした。
剣はワイバーンの鎧のような鱗ごと、首を断ち切った。




