50話 降り立つ影
ガルガンドの郊外。
山岳地帯のふもとの山壁にダンジョンの入り口があった。
位置も、古城周辺から適度に離れている。
立地的にも利用するのに都合がいい。
ダンジョンからもし魔物が溢れても被害は大きくならなそうだ。
「よし、じゃあ攻略開始だ。行くぞ」
俺は皆に攻略開始を告げ、ダンジョンに入った。
ダンジョン内は、最初に潜ったものと似たような雰囲気だった。
ダンジョンとは、どこも同じような作りなのか?
古代魔法文明の遺跡と融合したダンジョンは…まあ、あれは例外だろう。
かなり特殊な事例らしいし。
生息する魔物の種類は、Eランクのホブゴブリンがメインだ。
次に多いのがオーク。
稀に、スライムの最終進化系であるDランク魔物のデモンスライムの姿もあった。
これは…経験が少ないから確実なことは言えないが…
このダンジョン、かなり危険な部類なのでは?
ただ、俺たち四人の敵ではなかった。
ガルドに鍛えられ、俺たちはかなり戦闘能力が上昇していた。
スズカは元々、技も持っていたが、どちらかというと力に比重が置かれていた。
それが今では力を技で制御する術を身につけている。
クロウは元神威なだけあって、以前から技を主体とした戦闘をしていたが、ガルドの指導によってそれがさらに洗練されている。
アイズも、元々魔術師でありながら、接近戦にも長けていたが、さらに磨きがかかり、今ではロッドの先に、水属性魔術で刃を作り、槍のようにして思いっきり前線で戦っている。
……後衛職ってなんだっけ?
しかし、猫のような魔人なだけあって、さすがの身のこなしだ。
あいつ、接近戦の方が向いてるんじゃないのか?
っていうか、俺の出番が全くない。
……俺、留守番でもよかったかな?
「さすがにこの危険度だと、訓練目的には適さないか?」
「大丈夫じゃない?さすがに一人だけで入るのは危なそうだけど、私たちのうち二人が同行して、最低六人で入れば死ぬこともないでしょ?」
「ああ、俺もそう思うよ」
「……うん、私は治癒魔術も使えるし…私はなるべく同行するようにするよ」
スズカたち三人はなんてこともないように言った。
ああ、RPGゲームでいうパワーレベリングってやつか。
まあ、そういうことなら問題ないか。
出てくる魔物は強いし、素材は高く売れる。
商業的な価値は十分だろう。
「なら、コアの破壊はなしだな。このダンジョンは利用する方向でいこう」
「うん!そうしよう!私もそのうちこのダンジョンを一人で踏破できるようになりたいし!」
おいおいどこまで強くなる気だスズカのやつ!
まあ、気持ちはわからんでもないが。
その後も魔物を倒しながら、奥に進むと、重厚な扉にたどり着いた。
ダンジョンボスの部屋だ。
「よし、じゃあボスとご対面といこうか!」
俺はそう言って、左腕で重厚な扉を押す。
中は広い空間となっていた。
そこには…魔物の姿はなかった。
「……あれ?何もいないよ?」
スズカも中に入り、不思議そうに声をあげる。
…ボスが存在しない?
そんな馬鹿な…
不思議に思いながら空間の中央付近まで歩を進めた。
左目に魔力を集中させる。
俺の左目は…天井付近から漏れ出る魔力を見逃さなかった。
「っ!みんな離れろ!上だ!」
俺が慌ててそう叫び、全員がその場から飛び退く。
それと同時に、さっきまで俺たちが立っていた地面が爆音と共に砕けた。
上から何かが降り立ったようだ。
砂埃の向こう側に、輪郭だけが見えた。
長い尻尾。
地面を踏みしめる大きな二本の足。
蝙蝠のような形状の巨大な双翼。
トカゲのような頭部。
それが砂埃を払うように翼を軽く羽ばたかせる。
そして、その姿を現した。
そこにいたのは……
Bランクの魔物。
ワイバーンだった。




