幕間 蠢く円卓
西側諸国のとある地下集会所。
そこに、黒いローブを纏った8人が円卓を囲んでいた。
それぞれが謎のマークが刻まれた椅子に着席している。
「揃ったな。それでは、定例会議を始める。なにか報告事項のある者はいるか?」
他よりも少しばかり豪華な椅子に座った黒ローブが議長として進行する。
「俺からいいか。いくつかの文献を当たったが、アレはやはりまだ”混沌の森”にある可能性が高い。冒険者に紛れ込んで、心当たりのある遺跡の捜索に同行したが、全部空振りだった。もうそこしか思い至らない」
黒ローブの一人が挙手して発言する。その声は、若々しさと老獪さが同居した不思議な声だった。
「だが、やはり混沌の森に足を踏み入れるのは難しそうだ。常に周辺は聖騎士による監視が敷かれている。倒すこと自体は容易だが、そうなると、もし違った場合面倒なことになる」
不思議な声の黒ローブが引き続き発言する。
「となると、やっぱり障害になるのはレイジア教だね」
他の黒ローブが追従して発言した。その声は女性によるものだった。
「……やはりか。まあ、そうだとは思ってたが」
議長は苦々しさを隠そうともせず言った。
「だが、現状では俺たちだけでレイジア教に歯向かうのは考え物だぞ?倒すことは可能だろうが、俺たちに注目が集まるのは避けなければならない」
その言葉に対し、女性の黒ローブが反論する。
「いや、レイジア教の方も油断ならないよ。最近、勇者を召喚したって情報も入ってる。それが本当なら、危険だよ」
「ああ。勇者も侮るべきではないし、我々は表舞台に姿を現すべきではない。そこで、一つ面白い情報が手に入った」
最初に発言した黒ローブが再び挙手をして声を発した。
「レイジア教が魔人たちを投獄している監獄島が、先日”カルラ・ネメシス”という魔人とその仲間によって陥落したらしい」
その情報に、他の黒ローブたちは驚きを隠せなかった。
「あそこが陥落したのか!?しかし、一体どうやって?」
「レヴィアス海賊団の船で島に乗り込み、あとは片っ端から聖騎士たちを始末して回ったらしい」
「おお、なかなか大胆だね」
その情報によって、会議が動き始める。
「…だが、この状況は利用できる。その魔人たちを陰から支援しろ。うまくいけば、レイジア教を潰してくれるやもしれん」
議長が最終的な方針を指示した。
「ああ。レイジア教がなくなれば、我らの長年にわたる贖罪の成就に、一歩近づけるというもの」
謎の集団による秘密会議は、地下深くで続く。
◇
会議も終わり、一人円卓に残る議長。
「長年大陸を支配し続けたレイジア教…突如として現れた魔人を束ねる者…レイジア教が召喚した勇者…」
そう言って、議長は手元の情報の束に目を向ける。
「……まさかこんな形で世界が動き出すとは思わなかった」
議長は間を開けて呟く。
「さて、これからカルラとやらの支援をするとして、どんな形でするべきか。奴らに面が割れるのは避けなければならないし…」
そうして議長は一人で思慮を巡らせる。
そして、情報の束を円卓に置き、懐から一枚の古文書を取り出して、眺める。
「……われらの祖が犯した罪…そろそろ清算したいものだな」
その古文書には……賢者の石について記されていた。




