48話 首領の苦悩
魔人集団の首領として担ぎ上げられて数週間。
現在は生活の地盤を整えるため、まずは衣食住の充実を進めていた。
それと、ガルガンドの開拓も行っていた。
そして、その空き時間で、ガルドのもとでの修行を行っていた。
修行の方は順調だった。
…基本フルボッコにされてるけど。
なんせ、技量を向上させるために、身体強化や炎熱加速に頼らずに戦っているため、マジで手も足も出ない状況が続いている。
だが、俺の技量は確実に成長が見られた。
模擬戦として、スズカやオルガとも戦っているが、身体強化なしの二人には同条件で勝てるようになった。
あの時のスズカの悔しそうな表情は中々見ものだった。
そのあと本気出したスズカに完封されたけど。
あと、魔術の幅も広がった。
魔人になってから今まで土属性魔術は使ってこなかったが、発想の転換で面白いことができるようになった。
まあ、それはいい。
今、俺たちは、ある意味ピンチなのだ。
食糧問題の方はなんとかなっている。
農業の知識がある魔人が多数いたのでガルガンドの土地を切り開いて畑を作って作物を植えてもらっている。
すぐに収穫できるわけではないが、来年以降にはかなりの収穫量が期待できそうだ。
当面の間はレヴィアス海賊団のレイジア教物資輸送船の襲撃による食料調達や、買い付けに頼ればどうにかなりそうだ。
だが、どうにもならない問題もあった。
そう、居住地の問題である。
今まで魔人たちはほとんど一室に十数人が押し込められて収監されていたのもあり、古城内にそのまま住んでもらうことが難しいのだ。
そうなれば、必然的に城の外に住んでもらう他ないわけで…
そして、建築技術を持つ魔人はいなかった。
はい、詰んだ。
俺の前世の知識は高校生止まりだ。
建築の知識などあるはずもない。
現状では、前世のキャンプ用のテントもどきを作って凌いでもらっているが、ずっとそのままというわけにはいかない。
あまりにもかわいそうだ。
え?土属性魔術で家を建てればいいじゃないかって?
……とっくに試したさ!
そう、建てること自体はできた。
だが、魔力の供給を断てば、その瞬間に崩れ落ちやがる。
中にいた人が生き埋めになりかけました。
あれは本当に申し訳なかった。
かといって、俺が供給し続けるのも現実的じゃない。
さて、どうしたものか。
現状、魔人の保護をお願いしてるオルガたちに建築技術を持つ魔人がいれば最優先で保護してくれとはお願いしているが、こればっかりはそう多くいるとは思えない。
お願いしておいて何だが、望み薄だろう。
まさかこんなところで躓くとは。
「カルラ様、最近悩んでおるようですな?儂でよければ聞きましょうか?」
そう話しかけてきたのは、俺の師匠、ガルドだった。
「……ガルド、その”様”付けで呼ぶのは辞めてほしいんだが」
「そうはいきますまい。カルラ様は今や魔人たちの首領。すなわち、王なのです。王である以上、敬称は必要です」
そう、俺が魔人たちの首領と決まってからスズカをはじめとする共に旅をしてきた人たち以外の魔人たちが俺を”様”付けで呼んでくるのだ。
…正直、堅苦しい。
クロウは『こういうのは形も大事なんだ。我慢しろ』とか言ってきやがったし。
…まあ、それはいい。
そう言えば、ガルドには聞いたことなかったな。
「…まあ、いいか。ガルド、家の建て方知らない?」
これで知ってたら苦労しないのにな。
「…知っております」
知ってるんかい!
知ってるならさっさと教えてほしかったわ!
屋外でテント同然の住居で雨風を凌ぐあいつらを見てかわいそうだと思わなかったのか!?
「……それ、もっと早く教えてほしかったんだが?…まあいい、あいつらに家の建て方を教えてやってほしい」
「承知いたしました。ただ、儂の知っている住居も、あまり頑丈なものではありませんので、そこはご理解いただければと」
まあ、この際贅沢は言えない。
「ああ、それはあいつらもわかってくれるだろう。頼むよ」
…とりあえずは住居問題もオッケーだな。
だが、このままだと必ずどこかで破綻してしまう。
俺は、心のうちの不安を自力で解消することができなかった。




