46話 演説
聳え立つ古城。
その玉座の間。
俺はその壊れかけた玉座に腰を下ろしていた。
……どうして…どうして…
…どうしてこうなった!
こんなの聞いてないぞ!
俺は玉座に座しながら冷や汗がダラダラ垂れていた。
そして、そんな俺の気も知らず、前に佇む4人。
「うんうん!やっぱりそこに座るのはカルラが一番だよ!」
スズカがニコニコしながらご機嫌な様子で言う。
「まあ、俺らはお前の指示でここまで来たからな。順当にいけばお前だろうよ」
クロウも腕を組み、目をつむりながら頷く。
「…うん、私たちの中で、一番、カルラが向いてる」
アイズも静かに微笑みながら言う。
「俺らレヴィアス海賊団はお前の下に着くって言ったからなぁ。ならお前がその立場にふさわしいってことだぁ」
オルガも腰に手を当て、胸を張りながら言った。
そう、今は、これからこの魔人の集団の首領は誰なのか、この話し合いをしていたのだが…
俺が首領に担ぎ上げられていたのだ。
どうしよう。
俺は今までこんな大所帯のリーダーになる経験なんぞ積んでいない。
正直、俺はこの魔人たちの首領になることなんて、何も考えてなかった。
何も考えずここまで来てしまった。
……どうにか断れないだろうか?
4人の顔を見る。
スズカは期待のまなざしを俺に向けている。
…やめてくれ。その目線が一番効く。
クロウは俺と目が合うと、苦笑いしながら目線を逸らす。
おいてめぇ!ちゃんとこっち見ろ!めんどくさいから俺に押し付けてるだろお前!
アイズは…期待?なのか?微笑みながら俺にうなずく。
…だめだ。何考えてるのかわからない。
オルガは、その目線で言いたいことがすぐわかった。
大方、『お前しかやれる奴がいねぇ!腹くくれ!』ってところだろう。
…仕方ない。俺がやるしかないようだ。
「……はあ、仕方ない。わかった、やるよ!俺が、この魔人集団の首領だ!」
その言葉と共に4人は満面の笑みでガッツポーズしていた。
おい!これ打合せしてたんじゃないだろうな!
おいこら!
◇
そして、その玉座の間に集まる監獄島にいる魔人たち。
人数はざっと1000人ほど。
みんなの前で演説しろって話だ。
まあ、覚悟はしてたけど。
っていうか、これ俺、魔王みたいじゃないか。
……まあいいか。レイジア教目線だと、もう魔王だろうし。
さて、そろそろ何か言わないと。
みんなの目線が痛くなってきた。
ここは魔王らしく演説といこうか。
内容は何も考えてなかったけど即興で何とかなるだろ。
「よう、今更初めましてってこともないだろうが、カルラ・ネメシスだ。今日より、この魔人集団の首領になった。よろしく頼む」
ここまで言うと、魔人たちからざわめきが起きる。
まあ、そりゃあ戸惑うよな。
「突然すぎて何が何だかわからないってところだろうが、とりあえず聞いてくれ!」
そう言うと、みんなは静まり返った。
お、おう…こうも急に静まり返ると俺が変なことを言ったみたいじゃないか。
いや違う。みんな俺の話を聞いてくれているんだ。
弱気になるな。
虚勢でもいい。
堂々とするんだ!
「まず、言っておく。俺の目的は、レイジア教の醜悪な計画の阻止と、壊滅だ。だが、とてもだが今の段階では達成不可能だろう。そこで、腕に覚えのある人がいれば、ぜひ、共に戦ってほしい」
そうだ、この勧誘も監獄島を襲撃した目的のひとつだ。
「そのレイジア教の醜悪な計画とは、”鎮静化計画”と言われている。大規模儀式魔術を行使して、人々の感情を奪い去るというものだ」
それを聞いたみんなは、まるで信じられないといった様子だ。
そして、言いようのない怒りが湧いているようだ。
「俺は思う。感情なく生きたとして、それは生きていると言えるのか?断じて否だ!人は感情をもってこそ人だ!それを奪うなど誰であっても許されていいわけがない!」
そう、俺はこれを言いたかったんだ。
感情のない人間など、生きていると言えるわけがない。
喜怒哀楽。
これがあってこその人間だ。
人であれば誰もが持っているもの。
それが感情だ。
それを奪うなど、ふざけてる。
皆にも伝わったようで、怒りを宿した表情で頷いてくれている。
嬉しい。
皆思うことは同じようだ。
「まず、ここでの生活基盤を整える!それにはみんなの協力が必要だ!頼む!俺に力を貸してくれ!」
俺はレイジア教に反発するように感情を込めて叫ぶ。
皆はまるで古城を壊さんばかりの叫びをあげた。
よかった。
みんな協力してくれそうだ。
よし、まずは地盤を固める。
……これから忙しくなりそうだ。




