44話 獄中の仙人
重厚な扉の向こうには、地下に続く長い階段があった。
階段の両端の壁に、等間隔に吊るされる魔道具のランタンが、階段を淡く照らし、不気味な雰囲気を演出していた。
俺は念のためスズカを連れて、その階段を下りていた。
残りのみんなには解放した魔人たちを見張らせている。
こっちを攻撃してくることはないだろうが、念のための処置だ。
「ねえねえカルラ!この下からすごく強そうな奴の気配を感じるんだけど!戦ったら楽しそうだよ!」
スズカはニコニコ楽しそうな顔で馬鹿げたことを言い出した。
…ほんとブレないなこいつ。
「アホ!戦ってどうする!今から解放しに行くんだぞ!仲間になってくれないか交渉もするつもりだし心象はよくしておきたいんだ!…そのあとに合意の上での手合わせなら好きにすればいいがな」
「ああ、そういうことね!オッケー!」
ふう、危ない危ない。
あやうく一触触発の空気になるところだった。
念のため強さを重視してスズカを連れてきたが、人選ミスだったか?
…まあいい。
強さを重視して連れてきたのは、もし解放した瞬間暴れ出すようなら、抑え込むのに手こずりそうだったからだ。
だが、もし戦いになっても俺一人でも倒せるとは思う。
しかし、生かして無力化する余裕はなさそうだ。
だからこそ、スズカを連れてきたのだがな…
そして、他愛もない雑談を続けるうちに、階段に終わりが見えてきた。
下った先にあったのは、予想通りと言うべきか、廊下に沿って、多くの牢獄が並んでいた。
地下牢には、比較的戦闘能力が高そうな魔人たちが囚われていた。
俺はスズカと共に、囚われた魔人を解放した。
中には反抗的な魔人もいたが、スズカと俺でねじ伏せて黙らせた。
ある意味、こんな風にわかりやすい奴らは助かる。
そうして魔人を解放しながら奥に進み、最深部にたどり着く。
そこに囚われていたのは、龍の角が頭頂部から生え、体表には鱗が浮かび上がった、まるで龍人のような魔人だった。
そしてその威圧感は、まさに龍を思わせるような圧倒的なものだった。
龍見たことはないけど。
「……誰じゃ?お主らは」
龍人のような姿をした魔人が鋭い眼光を俺に向けた。
その声は、しゃがれた老人のような声だったが、力強さが残った声だった。
やはり、只者ではない。
まるで、長年修行を積んだ仙人のような…
そんな雰囲気だった。
「俺の名はカルラ・ネメシス。この監獄島を襲撃し、制圧した魔人だ」
「なんと、ここを襲撃したとな。それは豪気なもんじゃなあ」
老人は表情をほとんど変えず、楽しそうな声で言った。
「ご老人、今からあなたを解放する。構わないな?それと、貴方は相当強いと見える。俺を鍛えてもらいたい」
俺は、老人に解放の意思確認をすると同時に、その戦闘の術を教えてもらいたいと願っていた。
「ほうほう、これは珍しい若者じゃなあ。じゃあ、教えるかどうかは、お主の力量を見てから決めよう」
そう言って老人は、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべて言った。




