42話 狼煙
監獄島からわずかな距離の沖。
俺たちは、ついに監獄島付近までたどり着いた。
「……いよいよだな。ここを襲っちまったら後戻りできないぞ?いいのか?」
とは聞いたものの、答えは分かりきっている。
「私は強いやつと戦えればいいからね!問題ないよー!」
スズカは、ニコニコ笑いながら答える。
「まあ、俺には引き返す選択肢は端から無いからね。追われる立場だし、たまにはしっぺ返ししたいと思ってたんだ」
「……うん、私も。魔女狩りの一件で…敵対してるし今更だよ…」
クロウとアイズもさも当然のように言った。
「グハハハハ!みんなやる気いっぱいだなぁ!んじゃあ、せっかくレイジア教に与える最初の一撃だぁ!派手に行こうかぁ!」
オルガのその発言に、クルーたちはお祭り騒ぎ状態だ。
「ああ、聖職者を気取ったペテン師集団に、度肝を抜かせてやろう!」
俺も、柄にもなく、思わずテンションを上げて言った。
俺の言葉に呼応するようにみんながより大きな声が上がる
さあ、奴らの目ん玉が飛び出るような”お祭り騒ぎ”を演出しよう。
◇
静まり返る監獄島。
駐屯の聖騎士たちは緩み切っていた。
いまだかつて、監獄島を襲撃した者はいない。
そもそも海流に妨害されて来れるわけがないのだ。
そう、そのはずだった。
突如として静寂を破る轟音。
それは、監獄島の沖から鳴り響いた。
轟音から数拍遅れて訪れる爆発。
正面入り口の門が、火属性魔術が込められた大砲の砲弾で無理やりこじ開けられた。
「な、なんだ今の音は!」
「て、敵襲だ!総員、配置に着け!」
「だが!こんな誰も来れっこないところに一体誰が!」
聖騎士たちは、慌てて正面入り口に集まる。
そして、そこには正面港を制圧した5人の魔人が立っていた。
魔人であることは一目瞭然だが、先頭に立つ魔人は、魔人であることを差し引いても異常な外見をしていた。
肥大化した禍々しい悪魔のような腕。
剣の形状をした右腕。
漆黒に染まった左目は、瞳だけが黄金に輝いている。
明らかに異常だった。
その異形の魔人が口を開く。
「やあ」
異形の魔人はそう言って一拍開けた。
「レイジア教の皆さん。俺の名前は”カルラ・ネメシス”。突然で悪いが、この島をもらいに来た」
先頭に立つ異形の魔人は、そう言ってニヤリと不敵に笑った。
◇
ついにこの日が来た。
だが、これは始まりに過ぎない。
ここから、レイジア教の牙城を崩す。
これはその足掛かりだ。
上陸するのは、俺、スズカ、クロウ、アイズ、オルガの5人。
そして、俺たちは魔人に変異したオルガに引かれて海中を進む。
クルーたちが船上から発射した砲撃の爆音が轟く。
一射目は扉を破壊する射撃だ。
その射撃と共にオルガが陸に飛び上がる。
引っ張られ、俺たちも上陸する。
すかさず正面港の制圧にかかる。
今回は不殺なんて、制限はしない。
この場にいる聖騎士はレイジア教の真実を知る者であると確認はとれている。
つまり感情を消し去ることを許容している者たちだ。
ならば、容赦せず、消す。
そうして制圧が終わったのとほぼ同時に駐屯の聖騎士が破壊された正面扉からなだれ出てくる。
そして、宣戦布告がてら、俺は口を開く。
「やあ、レイジア教の皆さん。俺の名前は”カルラ・ネメシス”。突然で悪いが、この島をもらいに来た」




