39話 海賊船へ!
漆黒が支配する深夜。
オルガとの一騎打ちを終え、俺たちは町に戻り、港に来ていた。
しかし、案の定と言うべきか…町は昼間ほどではなくとも、夜とは思えない騒ぎが起きていた。
「ねえオルガ、どうするのー?この状況でどうやって船呼ぶのー?」
「ほんとだよ、分かっちゃいたけど聖騎士まみれだし!」
町では教会を襲撃した俺たちを捕らえようと、目を覚ました聖騎士たちが血眼になって捜索していた。
建物の陰に身を隠して状況を伺う中、スズカとクロウはオルガに小声で詰め寄っていた。
「んなこと言われても困るんだがなぁ…この辺砂浜もないし、海に出れる場所がここしかないんだからよぉ…」
そう言ってオルガは表情をバツの悪そうなものに変えた。
しかしそれも一瞬のことだった。
すぐに不敵な笑みを浮かべながら言った。
「まあ、考えはあるから安心しな。俺が逃げたことはもう知られちまってるわけだし、こそこそする理由もないから、派手に脱出してやろうじゃねぇの!」
そう言うとオルガは腰のポーチから掌ほどの大きさをした丸い石のようなものを耳に当てた。
すると、石が淡く光る。
「よう、俺だ。レイジア教の牢獄からは脱出した。………ああ、計画変更だ。沖から空砲を撃ちまくって聖騎士どもの目をそっちに引き付けてくれ。あとはこっちで泳いでいく。ああ、あと紹介したい奴らがいるんだ。一緒に連れて行く。………ああ、頼んだぞ」
通信の魔道具か?
そんなものまであるとは…
まるで電話だ。
通信を終えたオルガがこちらに向きながら、詳しい説明を始めた。
「ってことで、今から俺の仲間たちが沖から空砲を撃って聖騎士の目を船に引き付ける。その間に俺たちは海に飛び込むぞ」
「いや待て、沖まで泳いでいくのか?時間がかかって仕方がないぞ。それに、絶対に見つかるぞ…」
思いっきり穴だらけだ。
オルガの説明に俺は思わず口を挟む。
いくら船からの陽動があるとはいえ、海をバシャバシャ泳げばすぐに見つかってしまうのは想像に難くない。
何考えてるんだこいつは…
すると、オルガは不敵な笑みのまま俺に向けて再び口を開いた。
「その辺は心配するな。ちゃんと考えはある。お前たちは泳ぐ必要はない。俺が引っ張るからな」
…どういうことだ?
オルガはそんなに泳ぐのが速いのか?
…確かに魔人の姿はシャチみたいな印象だったけど…
「そら、来たぞぉ!」
オルガがそう言った次の瞬間…
沖の方から鳴り響く轟音。
音の主を探すように、音のした方に向けて無意識に目を向けた。
暗闇で見えづらいが、確かにそこには船があった。
それなりに大きい。
そして、船に目を向けたのは当然、俺だけではなかった。
「おい、なんだ今の音!」
「沖だ!恐らくレヴィアス海賊団だ!」
当然といえば当然だが、聖騎士たちの目は船に釘付けになっていた。
「よし、もう少ししたら海に飛び込むぞ!この紐を握ってな。離したら命の保証はできねぇぞ!」
そう言ってオルガは自分の胴体に紐を結び、その紐の先を俺たちにそれぞれ差し出した。
一体何をするつもりだ?
「よし、頃合いだな。行くぞ!走れ!」
そして、オルガは海に向けて走り出した。
引っ張られるように俺たちも駆ける。
すると、オルガは魔人の姿に変異する。
そして、海に飛び込む瞬間…
一瞬の出来事だったが、俺には見えた。
オルガの下半身がシャチの尾びれに変異していた。
…なるほど、そういうことか。
オルガがその尾びれで泳いで、俺たちを引っ張るってことか…
そして俺たちは海に飛び込んだ。
肌を刺すような感覚が全身を襲う。
そして次の瞬間、襲い来る慣性。
引っ張られる俺たちを置き去りにしようと凄まじい水圧が俺たちを襲う。
…いやこれやばいって!
みんなは両手が使えるからいいだろうけど、俺は片手なんだぞ!
握力持たないって!
そして俺は魔人の姿に変異し、右腕を触手に変え、紐を辿ってオルガの腰に触手を巻きつけた。
…ふう、これで一安心だ。
そうして引っ張られること約一分…
突如として急激な牽引が終わった。
俺たちは海面に身体を浮かせた。
すると面前には巨大な海賊船がその船体を揺らしていた。
「着いたぞ。これが、レヴィアス海賊団の海賊船、”ブラックカルディス号”だ!」




