36話 魔術の代償
火属性魔術"炎熱加速"。
発動してみてわかった。
これは悠長にしてはいられない。
いくら魔人が人間よりも頑丈だとしても、長くは持ちそうにない。
短期決戦で一気に畳みかける!
「おうおう、かなりヤバそうな雰囲気になったなぁ…」
「あまり悠長にしていられなそうだからな、一気に決めさせてもらうぞ!」
そして、一気に距離を詰める。
その速度は常軌を逸している。
自分でもわかる。
そして、加速しているのは身体だけではない。
自分の思考も加速していて、オルガの動きがスローに見える。
今なら、負ける気がしない。
左腕の鉤爪で切り裂く。
オルガは反応が間に合わず、直撃。
「なっ!速すぎだろ!」
オルガの魔力を喰ったことで身体強化が解けたようだ。
それに、身体が加速したことによって攻撃の威力も向上している。
吹き飛ぶオルガを右腕の触手で捕らえ、振りかぶるようにオルガを地面に叩きつける。
「ぐあっ!」
オルガが初めて呻き声をあげた。
よし、勝負を決めにいく!
叩きつけた地面に向けて疾走。
右腕を剣に変えて、振りかぶる。
「まだだ!まだ終わりじゃねぇぞ!」
オルガは立ち上がり、魔術を展開していた。
周囲に氷の槍を生成し、俺に向けて射出。
しかし、遅い。
今の俺には当たらない。
すべて余裕で潜り抜け、右腕の剣で振り抜く。
オルガは氷の盾を展開する。
しかし、その盾は役割を果たすことはなかった。
俺は、盾ごとオルガを斬り裂いた。
「っ!」
オルガが声にならない声を漏らした。
まずい!力加減をミスったか!?
死なれちゃ困る!
「……クク…グハハ…おいおい……俺じゃなきゃ死んでたぞぉ…この野郎……」
よかった!生きてた!
「す、すまない…ぶっつけ本番で、力加減が難しかったんだ…」
「……なる…ほどな……俺の負けだ。俺と俺の仲間たちは、お前の下についてやる」
よし、とりあえずは勝てた。
これで、新しい仲間と船が手に入った。
監獄島への道が一気に開けた。
「ああ、これからよろしくな。でも、俺はオルガたちを下に置くつもりはないからな。あくまで対等の仲間だ」
「へっ、ありがとなぁ」
そして、オルガはアイズの治癒魔術で傷は塞がった。
ひとまずは安心だ。
「…ねえ、カルラ…その魔術…時間制限を術式に組み込んだほうがいい…危ないから」
「ああ、わかってるよ。…5秒だな」
オルガの治療を終えたアイズが俺に警告してきた。
言われずともわかっていた。
"炎熱加速"…
この魔術は危険だ。
オルガとの戦闘で発動していた時間はわずか3秒程度。
だというのに、肉体の消耗が半端じゃない。
一度に発動していられる時間はよくて10秒だ。
それ以上発動したら俺の身体が持たない。
再使用時間に関しては、やってみないことにはわからないが…
まあ、今はいいか。
「オルガ、動けるか?動けるなら町に戻ろう」
「ああ、戻って船を沖から呼び戻す。そしたら出航だ!」




