30話 元神威と魔女
クロウの案内で海岸沿いの町に向かっている俺たちは
街道を歩いていた。
その道中、俺は新たに共に歩むことになったクロウとアイズと他愛のない会話を進めていた。
「そういえば、一緒にいたなら、アイズも神威なのか?」
俺は何気なく問いかけた。
「…私は違う」
アイズはムッとした表情で答えた。
いかん、地雷だったか?
「アイズは、神威によって壊滅させられた"魔女之宴"っていう魔術師集団の一員だったんだ」
クロウが代わりに答えた。
「んん?わるぷるぎす?」
「すまん、俺も知らないな」
スズカと俺がそう答えると、アイズが説明してくれた。
魔女之宴とは、以前大陸西側の小国にあった魔術師集団で、魔術の真理の探究をしていたらしい。
そして、その研究内容が、感情の高ぶりと魔術威力向上の関係性についての
研究に差し掛かったところで、レイジア教に目をつけられた。
警告も無しに即座に神威による殲滅が始められ、アイズ以外のメンバーは殺されてしまった。
当時神威だったクロウも既に魔人化していて、それを隠して殲滅作戦に参加し、魔女之宴の人たちを
逃がそうとしたようだが、力及ばず、満身創痍の状態で唯一の生存者であるアイズを連れて逃げた。
なるほどね、なら、俺の目的にも協力してくれそうだ。
「…そういえば、お前らは何で沖合を目指してるんだ?」
「監獄島を目指してるんだよー!…そういえば、なんで目指してるんだっけ?」
クロウの問いかけにスズカが返し、即座に俺に振り向いて聞いてきた。
そういえば目指してる理由までは言ったことなかったな。
いい機会だし、言っておくか。
「…スズカの言う通り、俺たちは監獄島に行くために沖合を目指してる」
「……わざわざ捕まりに行くつもり?」
アイズも俺に怪訝な目を向けてきた。
まあ、普通に考えたらわざわざ行こうとは思わないだろうし。
「んなわけないだろ?俺たちが監獄島を目指してるのは…」
俺はここまで言って、一息挟む。
「監獄島を襲撃して、囚われてる魔人を解放するためだ。できれば、そのまま制圧して監獄島を俺たちの拠点にしてしまうつもりだ」
「おお!」
「はあ!?」
「ええ…」
俺の言葉に対し、スズカは目を輝かせ、クロウは驚愕し、アイズは呆れた表情を浮かべた。
「わかってるのか?監獄島はレイジア教の聖騎士による警備も敷かれているし、制圧なんて容易じゃない」
「もちろんわかってる。だからこそ、仲間が必要なんだ」
監獄島を襲撃して魔人を解放、そのまま戦力に加えることで、レイジア教への反撃の狼煙とする。
これは、前から考えていたことだ。
だが、まだ足りない。
まず、船がない。
船を盗むっていうのが手っ取り早いが、動かせる奴がいない。
俺はもちろん、スズカも操舵の技術なんて持っていない。
船乗りの魔人でもいてくれればいいんだが…
仮に船を盗んで運よく監獄島に乗り込めればいいが、もし監獄島内に操舵できる者が居なければ
島から出られずに缶詰め状態になってしまう。
そうなってしまえば間抜けにも程がある。
「…言っておくが、監獄島は普通に渡航するのは不可能だぞ?」
「……マジ?」
クロウの言葉に、俺は一瞬思考が停止した。
え?普通に渡航できないってどういうこと?
「マジだ。監獄島周辺の海域は潮の流れがかなり速い。レイジア教の人間が渡航するときは一か所のみ存在する比較的潮の流れが緩やかな箇所を通って渡ってるんだ。そして、俺はその航路を知らん」
なんてこった。島であれば船と操舵技術がある人が居れば渡れると思ってた。
これは困ったぞ…
俺の計画は、始まる前に頓挫した…




