29話 集う魔人たち
空を飛ぶ謎の魔人の助けによって神威の追跡を
振り切った俺とスズカは謎の魔人の誘導に従い
街道から大きく逸れた、人があまり寄り付かなさそうな森に来ていた。
その森の、少し開けた場所に謎の魔人は降り立った。
そして、そこにはもう一人いた。
全身を覆うようなローブ。
身長ほどの長さの長杖。
いかにも魔法使いという風貌の女だ。
「おかえり、クロウ。…その人たちは?」
「ただいま、アイズ。この人達は神威に一泡吹かせてた魔人達だ」
降り立った謎の魔人は、翼を腕の形に戻してこちらを振り向いた。
声で分かっていたことだが、男だ。
その風貌は暗殺者のような出で立ちだ。
「助けてくれたことには礼を言うが、お前らは誰だ?」
助けてくれた相手が味方である保証はない。
警戒は必要だ。
「んー?カルラ、そんな警戒必要かな?大丈夫だと思うけど?」
スズカはあっけらかんとして言い放った。
…その能天気さはある意味尊敬するよ。
ただ、スズカの言いたいこともわかる。
神威から助けてくれた上、こいつは魔人だ。
もう一人は知らんが、一緒にいる以上、魔人なのだろう。
少なくとも、無条件で敵になることはないだろうが
味方になると決まったわけではない。
「まあ、当然警戒はするよな。じゃあ、まず俺から自己紹介といこうか」
そう言って魔人は微笑んだ。
「俺の名はクロウ・ホワイトだ。見ての通り、魔人だ」
「…アイズ・クロウリー。私も魔人だよ」
「…カルラ・ネメシスだ」
「スズカ・ムラサメだよ!」
クロウに、アイズね。
「それで、何で俺たちを助けた?お前のメリットは?」
「当然、あるさ」
クロウはにやりと笑みを浮かべる。
「俺ら二人だとレイジア教に一泡吹かせるには足りないんでね。だから、俺らも一緒に行動させてほしいんだ」
…なるほどね。
ただ善意で助けたのではないなら信用はできるな。
「俺は元神威でね。1年前に、とある任務が原因で魔人になっちまったのさ」
「元神威だと?」
であれば、こいつなら感情を奪い取る計画について細かいところまで知ってるかもしれない。
「…元神威なら、レイジア教が進めている感情を奪い取る計画について知ってるか?」
「…いや、知らないな。だが、神威の隊長と副隊長なら知っているだろう。隊長と副隊長のみ、教皇との謁見を許されてるからな」
まあ、教皇クラスに会えるのは隊長クラスくらいなものだろうな。
しかし、神威の構成員すら知らないとなると…面倒だな。
「ちなみに、副隊長ならさっきあの場にいたな。すまない、捕らえるべきだったな」
「あの状況なら仕方ないさ。その副隊長はアイクという片手剣を持ってたやつか?」
俺はクロウをフォローしながら問いかける。
予想でしかないが、あの男は指揮官として動いてる印象を受けた。
それに、村で感情を消す計画についての密会を行われていて
その護衛をしていたのがアイクだったのだろう。
「おお、知ってたのか?片手剣を持ってたやつがそうだ」
…やはりな。
「……わかった、とりあえず一緒に行動するとしよう」
とりあえずは利用するつもりで様子を見ることにしよう。
「そう言ってくれると思ってたよ、ありがとう。じゃあ、お礼として神威の情報を知る限り話すよ」
そう言ってクロウは俺たちに神威の情報を語り出した。
神威は、別に魔人狩りに特化した実行部隊というわけではなく、レイジア教にとって
都合の悪い勢力を潰すための暗殺や賊に見せかけた襲撃も行ってるそうだ。
クロウが魔人になってしまったのも、レイジア教に都合の悪い組織の殲滅を行った際に
神威のあまりにも行き過ぎた行動に強い罪悪感を持ってしまったばかりに変異してしまったらしい。
クロウは誰も殺さずにいたようだが、それをほかの構成員たちが楽しむように
拷問まがいの方法で殺していたのだとか。
これがきっかけでレイジア教の正当性に疑問を持ったらしい。
…なるほどね。
たとえ残虐な行為でも、それが正義のためと信じ切って行えば
負の感情を持つことはない。よって魔人化もしないってか。
完全に人格破綻者の集団だ。
正義が聞いて呆れるね。
そして、神威の構成員が人間の枠を超えた身体能力を得た方法が
どうやら体内の魔力を高速循環させて身体強化をしているらしい。
もしかしたら俺たちでもできるかもしれない。
…今度練習してみるか。
「んじゃ、とりあえず、アレンシオ沖合に向けて移動するか。クロウ、沖合に近い町とか知ってるか?」
「ああ、知ってる。案内するよ」
そうして、俺たちは監獄島を目指して歩き出した。




