28話 衝突
神威の戦闘能力は予想以上のものだった。
即座に斬りかかった俺だったが、俺の剣は大剣で容易に受け止められてしまった。
「む?思ったより重いな。こりゃあ少し舐めてたかな?」
……平然と受け止めておいてよく言う。
というより、ただの人間なのになんて腕力してやがる!
「隙だらけだよ!」
そして、俺の剣を受け止めて硬直している隙を突いて
スズカが大剣の男に向けて高速で接近し、抜刀術を放つ。
しかし…
「邪魔はさせん!」
もう一人の長杖を持った男が魔術で盾を展開して
スズカの抜刀術に割って入り、受け止める。
「へえ、そんな魔術師みたいな風貌してるのにそんなに動けるんだ」
「我ら神威は剣士、魔術師と問わず肉体訓練は欠かしておらん。魔術師だからと動きが鈍いという固定観念は通用しないと知れ!」
そして、魔術師は魔術の盾を展開しながら無詠唱で魔術を組み上げて
光線のようなものをスズカに向けて放つ。
「おわっ!」
スズカは瞬時に後ろに跳躍して躱す。
まずいな…
後ろにも神威が迫ってきている。
この半魔人状態だけで勝てるような甘い相手じゃない。
……やむを得ないか。
「スズカ!やるぞ!」
「オッケー!」
俺は大剣の男から距離をとって
剣をマジックバッグに仕舞う。
そして、俺とスズカの姿が魔人のものに変わる。
左目は黒く染まり、瞳が黄金に輝く。
左腕は肥大化し、黒く、禍々しく変異を始めた。
鋭い鉤爪が現れる。
右腕には黒い肉が現れ、腕の形を取る。
スズカにも左右非対称で禍々しいが、どこか美しい角が額に表れる。
「へっ、ようやく正体を現したな」
大剣の男が好戦的な笑みを浮かべる。
「よし、この姿になったからにはさっさと片付けさせてもらうぞ」
そう言って俺は右腕を剣に変える。
「……なるほど、これが例の形を変える右腕か」
男はそう小さく呟いた。
やはり俺のことは既に伝わっているか。
「さあ、お前の力を確かめさせてもらうぞ!」
そう言って、その巨体に見合わない速度で
突進し、その巨大な剣を振り下ろした。
左腕の鉤爪で受け止めて、いなす。
男の体勢が崩れた。
よし、今だ!
男との距離を詰めて右腕の剣を振り下ろす。
「っ!甘いわ!」
男は体勢を崩しながら、大剣を軽々と操り受け止める。
そう防御するのは読めていた!
受け止められるのと同時に左腕の鉤爪で下から切り裂く!
男は舌打ちしながらバックステップして躱したが…
「くそっ!……少し遅かったか」
男の胴体には大きくはないが確かな爪痕が
くっきり刻まれていた。
それに、魔力も喰えた。
「…おいおい、アイクの見間違いだとばかり思ってたが、マジで魔力を喰うのか。厄介だな」
…なるほど、能力のことも知られていると。
それと、あの片手剣使いの名前はアイクね。
「驚いてる時間はないぞ!」
俺は再び右腕の剣で斬りかかる。
男は動揺から立ち直り、今度は躱された。
しかし、それも読み通りだ。
俺はすかさず右腕を剣から数本の触手へと変える。
そして、男に向けて伸ばして拘束する。
「な、何!?こんなこともできるのか!」
「これなら避けられないな!」
俺は触手ごと男を鉤爪で切り裂いた。
「ぐああああ!」
男は身体に深い爪痕を刻まれながら後ろに吹き飛んだ。
よし、あれほど深い裂傷ならそう長くは持つまい。
男ごと切り裂いた触手は、そのまま切り離されて霧散し、
右腕の触手はもとの長さに再生した。
スズカの方はどうなった?
と思ったが、既に無力化していた。
魔術師は身体に深い刀傷を負って既に虫の息だ。
…まあ、明らかに相手にとっては相性が悪いもんな。
「よし、スズカ、さっさとずらかるぞ!」
そう言おうとしたところで…
「っ!!ドラグ!ゲイン!」
追ってきていた3人がここまでたどり着いた。
…遅かったか。
3人とはいえ、連携されたら厄介かもしれない。
できれば早く逃げたいところだが…
すると…
3人の目の前に上空から小さい球体のようなものが落下した。
その刹那…
球体から煙が噴き出して3人を包み込んだ。
咳き込む声がその場に響き渡る。
一体、どういうことだ?
「何をぼさっとしている!逃げるぞ!」
上空から声が響く。
見上げると…
両腕が黒い翼に変わった男が空中に漂っていた。
間違いない。魔人だ。
いや、考えるのは後だ。
「早くしろ!こっちだ!」
俺とスズカはその謎の魔人の誘導に従って
この場を立ち去った。




