幕間 動き出す神威
カルラとスズカがギルドの図書館を立ち去ったのと
ほぼ同時刻、サンクレイ神仰国王都にて…
王都の中央部にレイジア教の大聖堂を兼ねた王城があった。
その奥地…
教皇の間にて…
「貴様、今言ったことは…まことか?」
疲れ切った神威の構成員にそう問いかけたのは
玉座に座ったサンクレイ神仰国の王にしてレイジア教教皇である
レイシス・サンクレイ教皇猊下その人だ。
「はい、猊下。わが命に賭けて真実でございます」
そう跪いて答えるのは、辺境の村の教会で行われた密会の護衛を務めていた
神威の副隊長、アイク。カルラの手から逃れた唯一の人間だった。
「…にわかには信じがたいな。あらゆる武器に形を変える右腕と
相手の力を喰らう左腕をもつ魔人など…」
「しかし猊下、そうでなければ神威の構成員である彼が任務を失敗するとは思えません。恐らく、稀に発生する"特殊個体"でしょう」
なおも怪訝な表情を浮かべるレイシスにそう口を挟んだのは
レイシスの側近であるサンクレイ神仰国宰相、アレクシス・ハーヴェイだった。
「ふむ、それもそうか」
レイシスはひとまず納得したようで、普段通りの…
傲慢そうな表情に戻った。
「それで、貴様がこの私に奏上したいとは…なんだ?聞くだけ聞いてやろう」
「はっ!かの魔人はいずれ我々にとって大きな脅威となると思われます。ですので…」
そこまで言ったアイクは一呼吸置いた……
「その昔、初代教皇猊下が神から与えられたという秘術、"勇者召喚"を行うべきだと具申いたします!」
「なにっ!あれは千年に一度しか使えぬ秘術だと言われているのだぞ!?それを使えというのか貴様!」
レイシスは驚きと共に怒りを滲ませて言い放った。
アイクは怯みもせずに続ける。
「はい、それほどの脅威であると確信しております!ですのでどうか、ご一考を!」
「…猊下、彼がここまで言うのです。検討の余地はあるかと愚考致します。"鎮静化計画"が控えている現在、不確定要素を排除するためにも…」
アイクの発言に対し、ただならぬ気迫を感じ取ったアレクシスは助け舟を出した。
そして、アレクシスはさらなる提案を続けた。
「しかし、彼しかその魔人の目撃者がいないのもまた事実……」
「ですので、神威の構成員5人でその魔人の調査を行って、実力の程を確かめてから
勇者を召喚するべきか確かめるのがよろしいかと存じます」
「ふむ、アレクシスの言う通りであるな。よし、ではそうしよう」
レイシスはアレクシスの提案を受けて、決断した。
「して、その魔人が現れたのはどこであったか?」
「我が教団が密会のためにアレンシオ王国から権利を奪った辺境の村でございます。」
「わかった。では、神威に任務を与える。アレンシオ王国に出現した特殊個体の魔人を捜索し、発見次第その戦闘能力を見極めるのだ。討伐可能であれば討伐して構わん」
「はっ!」
アイクはレイシスの命を受け、教皇の間を後にした。




