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デモンズ・リベレーション~俺は転生して魔人となり、くそったれな世界に叛逆する~  作者: 宇月ナギ


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15話 ギルド

 ギルド支部は、思ったよりも大きかった。

 木と石でできた建物。

 

 中からは、騒がしい声が漏れている。

 ……思ってたより普通だ。

 もっと物々しい雰囲気を想像していたが。

 

 中に入ると……

 酒の匂い。

 

 笑い声。

 

 剣や槍を背負った連中。

 

 まるで酒場だ。

「ま、こんなもんだ」

 横でヒルファが言う。


「仕事の受付もやるし、飯も酒も出る。暇つぶしにもなる」


「……便利な場所だな」


「そういうことだ」

 カウンターへ向かう。


「登録だ」

 ヒルファが短く言うと、職員の女がこちらを見る。


「初めてですか?」


「ああ」

 

 俺は頷く。


「では、登録の前にギルドについて軽く説明させて頂きます」


 職員曰く、ギルドは冒険者と傭兵を束ねる組織らしい。

 特定の国家に属さずに依頼の受注や探索を行うのだとか。


 冒険者部門はダンジョン探索や未開地、遺跡の探索を行う。

 中には熱心に賢者の石を探してる奴もいるそうだ。

 実在するかは知らんが…


 まあ、気持ちはわからなくもない。ロマンだしな。


 傭兵部門は商人の護衛や討伐依頼の受注などを担うらしい。


 ギルドに登録してギルドカードが発行されれば

 冒険者と傭兵の両方の活動を行うことが可能で

 ランクも共有しているらしい。

 

 これは便利だ。


「聞いた話じゃあ、昔は冒険者だけしか存在せず、傭兵の稼業も

冒険者が行ってたらしい」


 横からヒルファが口を挟んできた。


「しかし、当時のギルドがブラックな環境だったらしくてな。

業務過多によってギルド職員がストライキを起こしちまって、それ以来

冒険者部門と傭兵部門に分かれたんだと」


 …異世界にもブラック企業とストライキの概念があったとは…

 異世界も世知辛い…


「で、ではこちらに必要事項を記入してください、読み書きが

できない場合、代筆も可能です」


 職員は苦笑いしながら俺に紙を差し出した。


 代筆のサービスがあるのなら、この世界の識字率は

 低いらしい。


 俺は村出身の田舎者だが、村長の息子だったために

 幸い母さんから読み書きの教育を受けることはできた。

 項目は簡単だった。

 

 名前。

 

 出身(任意)。

 

 戦闘経験。


 ……嘘が必要な項目はなさそうだ。

 最低限だけ書く。


 紙を返すと、職員は軽く目を通し、頷いた。


「問題ありません。登録自体はこれで完了です」

「えらくあっさりだな」

「形式ですから」

 淡々と返される。


「ただし」

 職員は指を1本立てる。

「登録手数料が必要になります」


 ……だろうな。


「いくらだ?」

「銀貨1枚です」

 ヒルファを見る。

 

 何も言わない。

「……今はない」

 正直に言う。


 職員は一瞬だけ考えたあと——


「では、素材や装備を売却して相殺する形でも可能です」

 おお、そんなことができるのか、助かったな。


「それで頼む」

 マジックバッグから取り出す。

 

 ゴブリンの装備。

 

 素材。

 

 そして——

 

 ゴブリンキングの部位。


 職員の目がわずかに変わる。

「……これは」

「偶然入ったダンジョンで討伐したんだ」

 短く言う。


 素材が奥へと運ばれていく。

 少し待つ。


 そして戻ってきた職員が告げる。

「手数料を差し引いても、まだ余りますね」


 職員はそう言いながら

 カウンターの上に金貨数枚と銀貨数十枚が差し出された。


「そうか、それは何よりだ」

 ……思ったより価値があったらしい。


 俺はそこから通行税分の銀貨を取り出して

 ヒルファに差し出した。

 

「……今は金に困ってねぇ、今度でいい」

 ヒルファは銀貨を受け取らなかった。


「あの…よろしいでしょうか?」

 ギルド職員が恐る恐る割り込んで割り込んでくる。


「この規模の討伐実績がある場合、昇格試験を受けることが可能です」

 ギルド職員は続けた。


「お、やっぱり来たな」

 ヒルファが横で笑って俺に目を向ける。


「……試験?」

 試験っていきなり言われても困る…


「やること自体は簡単なもんだ、こいつに勝てばいい」

 ヒルファは親指で後ろを指す。


 立っていたのは、武器を持った男。

 こちらを品定めするような目つきをしながら

 ニヤリと笑っている。

 

 明らかに職員ではない。

「形式的なものです。危険はありませんよ」


 職員はこんなことを言っているが…

 いやいやいや…どう見ても好戦的な奴なんだが…


 だが、まあいい。

 自分の力を測るにはちょうどいい。

「やる」

 短く答える。


 数分後。

 簡易的な訓練スペース。

 

 周囲には数人の冒険者と傭兵が見ている。

 俺は剣をマジックバッグから取り出し、左手で構える。


「始め!」


 声が響いた瞬間

 相手が動く。


 速い。


 ……だが、見える。


 半歩ずらす。

 

 攻撃を躱して懐に入る。

 そのまま——

 

 一撃。

 男の腹に柄頭で打撃を与える。


 男が前かがみになった瞬間、かがんで即座に足払い。


 仰向けに転んだ男の喉元へ切先を突き立てる寸前で止める。


 静止。


「……そこまで」


 終了の声。


「合格です」


 あっさりだった。


「おめでとうございます!Eランクに昇格です!」


 思ったより簡単だった。


 少し拍子抜けする。


「今のを見る限りもっと上のランクも行けそうだが

規約上、飛び級できるのはEランクまでらしいぞ」 

 ヒルファが言う。


 ギルド職員が試験を終えて休憩している俺に

 歩み寄ってくる。


「お待たせしました。こちらがギルドカードです。」


 カードを受け取る。


 鉄製の、簡易なもの。


 俺の名前と、左上にはEと印字されている。


 なるほど、これが身分証になるのか。

 何はともあれ、これで自由に動ける。


 ロビーへ戻る。

 ざわついていた。

 怒鳴り声が響き渡っている。


 何人かが集まっているようだ。

 ……何やら騒がしい。


 視線を向けると、そこにいたのは……


 見慣れない格好の女。


 黒みがかった赤の袴。

 

 黒い羽織。

 

 腰には…あれは日本刀?

 さすがに名称は違うだろうが

 この世界にもあったのか。


 正直ほしい…


 …それは今考えることじゃない、今はあの女だ。

 この世界じゃ見ない格好だ。


 前世の江戸時代の侍のような風貌。


 明らかに異質。


 場の空気になじんでいない。


 だが、それだけじゃない。


 左目に意識を向ける。


 一瞬。

 

 視界が変わる。


 見える。


 魔力の流れ。

 

 そして……

 

 瘴気。


 確信する。


 あいつも…俺と同類だ。


 人間じゃない。


 ヒルファも、視線を向けていた。


 ほんの一瞬。

 

 目が細くなる。

 直感だろうが、間違いなく気付いてる。

 

 俺を見破ったくらいだからな。

 こいつならありえる。


「なんだあいつは」


 ヒルファがぼそっと言う。


「……面倒そうだな」


 だが、その口調とは裏腹に

 興味は隠していない。


 俺は黙って見ていた。


 “自分と同じ側”の存在を。

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