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デモンズ・リベレーション~俺は転生して魔人となり、くそったれな世界に叛逆する~  作者: 宇月ナギ


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08話 擬態とダンジョン

 夜は静かだった。

 

 森の中の少し開けた空間。

 

 小さな焚き火の前で、俺はひとり座っていた。


 木の枝がぱち、とはぜる。

 

 それ以外に音はない。


 ……これが、外の世界か。

 

 村を出て、初めての野営。

 

 誰もいない。

 

 何もない。

 

 ただ、静けさだけがある。


 視線を落とす。

 

 自分の腕。

 

 いや。

 

 自分の「体」を。


 そこにあるはずの異形は、なかった。

 

 左腕の鉤爪も。

 

 右腕の変形も。


 ただの、人間の腕。

 

 そして……


「……ないな」

 

 ぽつりと呟く。


 右腕は、元通りにはなっていない。

 

 肩口から先が、存在しない。


 ……戻ったのは、“人間の状態”か


 理解する。

 

 これは回復じゃない。

 

 再生でもない。


 “擬態”だ。


 魔人としての力を抑え込み。

 

 人間だった頃の状態を、なぞっているだけ。


 呼吸を整える。

 

 意識を集中させる。


 ……出せるか?


 あの時の感覚を思い出す。

 

 怒り。

 

 焦り。

 

 守りたいという意志。


「……っ」

 

 瞬間……


 ぞわり、と。

 

 背筋に何かが走った。


 左目が、熱を帯びる。

 

 視界がわずかに歪む。


 来る。だが……

 

 そこで止める。


 深く、息を吐く。

 

 意識的に、力を押し込む。


 すると。

 

 その感覚は、すっと消えた。


 ……なるほどな


 確信する。


 これは、制御できる。


 魔人の姿は、本来の自分。

 

 そして、人間の姿は——

 

 それを抑え込んだ状態。


「……便利だな」

 

 小さく呟く。


 これなら、人のいる場所にも入れる。


 ……よし、行こう。


 立ち上がる。

 

 焚き火を消す。


 行く当てはない。

 

 だが……


 目指す方向は決まっている。


 街道。

 

 人のいる場所。


 追われるにしても、情報が必要だな。


 何も知らずに逃げ続けても意味はない。


 歩き出す。


 ◇

 翌日。


 朝は、曇っていた。

 

 前世の知識と今世の経験で知っている。

 

 雨が降るのも時間の問題だ。


 だが、気にしても仕方がない。


 今は可能な限り前に進む。


 街道に出る。

 

 踏み固められた土の道。

 

 人が行き来している痕跡。


 ここを進めば町だって

 前に村に来た行商人が言ってたな。


 そう思った、矢先だった。


 ゴロゴロと、低い音が響く。


 空を見上げると黒い雲が広がっていた。


「……やっぱりか」


 小さく呟いた瞬間…


 雨が、落ちてきた。


 最初はぽつり、ぽつりと。

 

 だが、それは一瞬だった。


 すぐに視界が遮られるほどの大雨へと変わる。


「マジか…ここまでとは聞いてないんだが…」


 風も強い。

 

 木々が大きく揺れる。


 このままじゃまずい。


 視界が悪い。

 

 足場も滑る。

 

 体温も奪われる。


「……避難場所探すか」


 すぐに判断する。


 街道から外れる。

 

 森の中はならどこかに洞窟とかが

 あるかもしれない。


 足元に気をつけながら、進む。


 雨音が激しい。

 

 周囲の気配も感じにくい。


 最悪だな……


 そう思いながらも、止まらない。


 やがて岩肌の割れ目を見つけた。

 

 その奥に続く空間。


「お、やっぱりあった」


 中を覗く。

 

 暗い。


 だが、雨風は凌げる。


 ……中に魔獣か魔物がいるかもしれない。


 少しだけ、警戒する。


 完全に安全ではない。

 

 だが、今の状況だと選択の余地がない。


「入るか」


 そう決める。


 足を踏み入れる。


 内部は、思ったよりも広かった。

 

 外の音が、少し遠くなる。


 ひんやりとした空気。


 思ったより……奥があるな。


 違和感がよぎる。


 ただの洞窟にしては。

 

 整いすぎている。


 このまま奥に何もないとも限らない。


 この場所が安全かどうかもわからない。


 出口が一つとは限らないし、

 奥に危険なものが潜んでいる可能性もある。


 ……確かめておくべきだな。


 安全のためにも、

 中を把握しておかないと危険だ。


「……少しだけ、奥まで行くか」


 そう呟いて。

 

 さらに奥へ進む。


 暗闇の中へ。


 雨音が、完全に消えた。


 代わりに——

 

 何か、違う気配が満ちていく。



 村から離れたことのなかった俺は、知らなかった。


 この洞窟の正体が


 噂に聞いた、“ダンジョン”であることを。


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