第18話 暴動
午前の授業が終わると、リリー先生が俺を呼ぶ。
「これから授業で使った資料を図書館に返すんだけど、一人だと大変なの。トウヤ君手伝ってくれないかな?」
教卓の上に積み上がった本や紙の束を指して、リリー先生が申し訳なさそうに言う。
「わかりました。手伝いますよ。」
「本当?うわ~、ありがとう。助かるわ。」
今日も昼食は、いつものメンバーで集まる。そのままリリー先生と一緒に行けばいいので、資料を図書館に持っていくだけなら不都合はない。
詰み上がった資料を抱える。視界が遮られるほどの量で、思っていたよりも多い。
「大丈夫?トウヤ君。」
数冊の本を抱えたリリー先生が心配そうにこちらを見る。
「ええ…、なんとか持っていけます。たぶん。」
(結構多いな…。もう一人誰か一緒に来てもらったほうがいいかも)
「俺も行くぜ、トウヤ。」
マルコが、俺の抱えていた資料の半分を持つ。
「ありがとう、マルコ。正直助かった。」
「いいってことよ。さっさとこれを図書館に持っていって、昼飯食べようぜ。」
「…そうだな。」
昨日アイシアに告白されたばかりだが、この後どういう顔をして会えばいいのだろうか。
それに…、ホノカともなんだか気まずい雰囲気になっている。
(朝会った時、なんだか素っ気なかったな…)
挨拶したが、ホノカは短く挨拶を返して、こちらを一瞥するだけだった。
(やはり、昨日の告白を気にして…)
「どうした?この後、女子達と楽しいランチだっていうのに浮かない顔してるな。」
「そんなことはないよ。…ていうか女子達って、お前の目当てはアイシアだろ?」
昨日そのアイシアから告白されたことを、マルコは知らない。もしもアイシアに好意があるなら、言った方がいいのだろうか。
「…いや、俺じゃヘヴンゲートさんとは付き合えそうにない。ヘヴンゲートさんには好きな人がいるだろうからな。」
そう言って、マルコはニシシっと俺を見て笑う。
(さすが、クラス一番のモテ男。気づいていたか…)
どうやら、とっくにアイシアの気持ちに気付いていたようだ。
「見てりゃ、誰だってわかるって。」
気づかなかった俺って、相当鈍感かもしれない。
「まあ、そういうわけだ。今日はお前らを見物しながら、コハルさんの美味しい料理を食べることにするぜ。」
「…俺達のことは気にせず、お昼ご飯を食べてくれ。」
そんな話をしながら、庭園を通る。途中、ふとガゼボの方を見ると、お茶をしているヘイゼル校長と目が合った。
「あら、ヘルフィールド君。こんにちは。またここで会ったわね。」
「こんにちは、ヘイゼル校長。」
お淑やかに微笑むヘイゼル校長に、軽くお辞儀をする。
「お昼も、ここでお茶してるんですか?」
「ええ。業務の合間に抜け出してここでサボってるの。ヘルフィールド君も授業をサボりたくなったら、ここに来て一緒にお茶しましょ。」
「あはは…、考えておきます。」
「それにしても、三人ともすごい荷物ね。これからに図書館に行くの?」
「はい。授業で使った資料を、返納しに行くとこなんです。」
ヘイゼル校長の質問に、リリー先生が抱えている本をヨイショっと少し持ち上げて応える。
「そうなの。転ばないように、気を付けてね。」
「はい。では、失礼します。」
三人でヘイゼル校長にお辞儀をして図書館に向かおうとすると、ヘイゼル校長が頬んだまま言う。
「それにしても、今日はいい天気ね。何かお祭りをするには、良い日かもしれないわね。」
「……………」
その言葉にリリー先生が立ち止まる。そして、ヘイゼル校長へと振り返る。
「もしお祭りがあるなら、きっと楽しいでしょうね。」
「ふふ、そうね。」
ヘイゼル校長と別れ、図書館に辿り着く。
王都中央高等魔法学校の図書館は蔵書の量が多いため、特殊な内装をしている。館内には通常の本棚が建ち並んでいるほか、建物の壁までもが本棚になっており、その壁に沿って螺旋状の階段が天井近くまで続いている。その特殊な作りにより下から館内を見上げた光景は、まるで本を詰め込んだ巻貝の中にいる様だ。
入口受付の事務員のお姉さんに挨拶をした後、自習スペースのテーブルに抱えていた本や資料をドサッと置く。
「二人とも、ここまで重い荷物を持ってきてくれて、ありがとう。ついでで申し訳ないのだけど、本や資料を元の保管場所に戻すのも手伝ってほしいな。」
手を合わせてお願いするリリー先生。
「ええー、今からこれ全部ですか!?」
マルコがテーブルに置いた何冊もの本と紙の束を見て、げんなりする。
図書館に持っていくだけかと思っていたが、全部元の場所に戻すとは思わなかった。
「私とトウヤ君で本を棚に戻すから、マルコ君はこの資料を事務員のお姉さんと一緒に、書庫に返してほしいの。」
図書館の書庫に保管している貴重な資料らしく、それを事務員の案内で返すようマルコに頼む。
「事務員のお姉さんと…了解っす。んじゃあ、ちょっくら行ってきます!」
なぜか喜々として資料の束を抱えるマルコ。
「さっき初めて会ったけど、ここの事務員さん綺麗な人だったぜ。資料返すついでに、ちょっとお話してくるわ。」
そう言って、鼻歌を歌いながら重そうな資料の束を持っていった。
「ふふ。そうだろうと思って、頼んでよかったわ。」
さすが、担任の先生。生徒の事をよくわかってらっしゃる。
(さてと、この本達を元の棚に戻すのか…)
高く詰み上がった本を見る。果たして、みんなとの昼食に間に合うのだろうか。
「ところでトウヤ君、昨日の事まだ悩んでいる?」
机から本を持っていこうとすると、リリー先生がそんなことを聞いてきた。
「…はい。まだ考え中です。」
「そうなの…。ふふ、人間関係っていうのは、難しいものよね。」
「…ですね。」
どうすれば、アイシアを気づけずに彼女の告白を断ろうか…、それにもしもホノカも俺に好意を寄せていたとしたら…、などとずっと考えていた。
(…俺は邪神だ。誰かと恋人になることなんてできない。)
いつの日か人間としての人格が消えて、俺は完全な邪神になるかもしれない。その時、果たして俺は世界を滅ぼす存在になるのだろうか…。
森で邪神になったあの日から、その不安がぬぐい切れない。
一度邪神になった俺が、人間に戻ることが出来たのは、大宮司様の『封印魔法』のおかげだ。
その封印魔法が、邪神の力を抑え込む蓋の役割をしている。しかし、何かのきっかけでその蓋が開いて、また邪神になるかもしれない。
前回は俺が火炎魔法で自死した事が、蓋を開けるきっかけになった。
俺が死んで役割を終えた封印魔法は一度消えたが、その後、邪神として蘇った事で、邪神の力を抑える役割を再び得て、封印魔法が発動した。
時間をかけて、目覚めたばかりで不安定だった邪神の力を抑え込だことで、俺はなんとか人間に戻ることが出来た。
だがその蓋が次開けば、もう閉じることは無いかもしれない。
日に日に俺の中で邪神の力が強くなり、蓋を開けようと…――封印魔法を取り除こうと蠢いている。
確実に邪神の完全復活が刻々と足音を立てて、静かに迫ってきているのだ…。
(邪神となったその時こそ…、俺は断罪されるのだろう)
自分で自分を殺す事は出来ない。邪神として甦ってしまうだけだ。
きっと、教会の手によって抹殺されるのか、神ノ社によって祠に封印されてしまうのだろう。どちらにせよ、今の日常には戻れない事は確かだ。
…いつか人間の敵となり、人間の手によって消される俺は、誰かと恋人になる資格はないのだ。
「でも、贅沢な悩みよね~。」
「え?」
考え事をしていると、リリー先生がそんなことを言う。
「だって、あのアイシアさんに告白されたのよ?普通の男の子なら、即行で付き合おうとするわよ。」
「まあ…そうですよね。本当、俺には勿体ない話ですよ。」
「それとも、アイシアさんよりホノカさんの方が好きなのかしら~?」
「…いいえ、別に…そういうわけでは…」
「それとも………君が、邪神だから?」
(……ッ!?)
一瞬、自分の耳を本気で疑った。なぜ、リリー先生がその事を知っているのかと…。――だが、先生を見てすぐにその理由を理解した。
「くふふ…」
ニヤリと口角を上げた口と細まった目が三日月のようになって、怪しい笑みを浮かべるリリー先生。
その口元には今までなかった小さなホクロが現れ、見覚えのある口元に、あの日の出来事を思い出される。
「あんた、まさか…教祖の娘!」
「正~解。驚いちゃった?」
ジャジャーンと言いながら、両手のひらを振るリリー先生。
(そんな…まさか、リリー先生が…)
リリー先生から視線を外さず、数歩後ずさる。
「くふふ…、そんなに離れなくてもいいじゃない。先生、悲しいな~」
「リリー先生…いや、教祖の娘」
「教祖の娘なんて呼ばないで、リリーでいいわよ。一応、本名だからね。」
「…暁の福音のトップであるあんたが何故、魔法学校の教師なんかやってるんだ?」
「私の父が邪神を召喚してから十五年…。十五の歳なら、どこかの学校に通うと思ったの。
それで、神様の生まれ変わりともなれば相当優秀な子に育って、優秀な子達が集まる学校に来るんじゃないかって、この王都中央高等魔法学校の教師になったのよ。」
そこまで言うと、リリーがクスッと笑う。
「最初は、成績の良い生徒ばかりに目を付けていたけど、どれも邪神の生まれ変わりじゃなくてね。当てが外れちゃったと思っていたら、まさかギリギリの成績で入学したあなたが、邪神の生まれ変わりだなんて知って笑っちゃったわよ。くふふ…」
「成績低くて悪かったな。これでも、だいぶ良くなった方だよ。」
「ふふ、そうね。担任の先生としては、喜ばしいわ。」
俺はリリーの話を聞いて、さらに疑問が浮かぶ。
「なぜ俺が邪神の生まれ変わりだと気付いたんだ?」
邪神の力が覚醒する前から気付いたようだが、俺自身父から言われるまで知らなかった事だ。
「簡単よ。生徒の家族構成を調べたら、あなたの家だけ不自然な点があったのよ。ヘルフィールドていう苗字が偽名であることがわかって、ピンっときたわ。」
…そういう事か。
「十五の歳で学校に通うと思っていたと言ったが、暁の福音の教祖は最初っから、邪神が赤子の姿で召喚されるとわかっていたのか? 」
「いいえ。お父さんは知らなかったわ。邪神が赤子になった事を何故知っているのかというとね…、邪神が召喚され、父が大きな獣の手で握りつぶされて死んだ時、幼かった私はその場にいたのよ。聖騎士だったオウルが、赤子の邪神を連れて行ったのを隠れて見ていたわ。」
邪神が召喚された場所に、リリーもいたのか。それじゃあ…
「俺の実家に来た時、あんたは父さんを教祖の仇と言っていた。邪神が召喚されたあの場にいたなら、あんたの父親を殺したのは、俺の父さんじゃない事は知っていたはずだ。」
リリーが実家を襲撃した時、執拗にオウルを攻撃していた。それは、彼女が父親の仇を討つためだと思っていた。
だが、父オウルから聞いた話によれば、獣の様な巨大な手が教祖を握り潰したという。それが何かは分からないが、リリーの憎むべきは父オウルではなく、邪神である俺のはずだ。
「そうね。確かに、父を殺したのはオウルではない。正直言うと、父を殺されたことには、それほど恨みはないの。邪神を召喚したのだから、死んでも自業自得。私がオウルに恨みがあるとすれば、私の前から邪神様を連れ去った事よ。…私はね、ただ邪神様に恋焦がれているの。」
「…なに?」
「父を一瞬で握り潰したあの巨大な手を見た時、幼かった私は恐怖で腰が抜けたわ。失禁するほどにね。
でも、その後見たの。オウルに抱きかかえられた赤子…漆黒の両眼をした邪神が、王都最強の聖騎士を惑わし、声高く嗤っているのを。 」
その時の事を思い出して興奮したのか、顔を紅潮させたリリーが嬉しそうに語る。
「お父さんの作った宗教団体を否定し、団員を何人も殺して、めちゃめちゃにした聖騎士を、邪神は赤子の姿で意図も容易く自分の操り人形にしたのよ。邪神の神気に精神を蝕まれて、思考が狂ったことにも気づかないで、オウルは優しい眼差しで大事そうに赤子を抱きかかえていたの。そんな自分を、邪神が嗤っていることにも気づかずにね!あの間抜けっぷりったら、滑稽だったわ!くふふ…あははは」
父オウルを、リリーは心の底から嘲笑う。
「その時思ったの。ああ…、邪神様ってすごい!これが私達、父娘が信仰する神様なんだって!あははははは!!」
恍惚に邪神を語るリリー。その話し方や仕草、笑い方…、そのどれもが俺の知る担任の教師のものではなかった。これがリリー・ベッカーの本性なのだと、わからせられた。
「…俺やクラスの皆を、ずっと騙していたのか?」
「騙すも何も無いわよ。私は、最初から邪神の生まれ変わりを見つけるためだけに、教師になったのよ。まあ、怪しまれないように、教師らしく授業はちゃんとやったけどね。」
「俺達と一緒にお昼ご飯を食べていた時…、楽しそうにしていたのも、全部演技だったのか?コハルさんの料理を美味しいって褒めていたのも、嘘だったのか?」
「……そうね。」
俺の質問に、リリーの顔から嫌な笑みが消える。
「みんなと一緒にお昼ご飯を食べてる時は、楽しかったわ。コハルさんの料理、すごく美味しいし。
生徒から慕われる優しい教師『リリー先生』の演技に疲れて、一人になりたいがために無断で屋上の鍵を持ち出したはずなのに…、いつの間にか、屋上があなた達と過ごす場所になってしまったわね…」
スカートのポケットから鍵を取り出して、それを懐かしそうに眺める。
「その時だけ、邪神の事も暁の福音の事も何もかも忘れて…、本当のリリー先生になったような気がしたわ。」
リリーはそう言って、自重気味に笑った。
どこか寂しそうで少し優し気なその表情は、俺が知る担任教師のものだった。
「リリー…先生」
「でも、もうリリー先生は今日でお仕舞い…」
リリーがそう言うやいなや、外で大きな爆発音が轟く。
(…っ!?)
「くふふ…」
リリーが再び嫌な笑みを浮かべる。
「リリー、まさか…」
リリーの不敵な笑みと外から聞こえた爆発音。既視感に、俺はハッとさせられた。
「そうよ、トウヤ君。ヨミノ町を襲撃した時は、暁の福音の団員が僅か50人程度だったけど、今日はもっと多いわよ」
さらに何度か外で大きな爆発音がして、悲鳴が上がる。
「暁の福音の団員、総勢666人!これより、王都をぶっ壊すわ!!」
「なんだと…っ」
「おい、トウヤ、リリー先生。外がなんかやばいことになってるぞ!」
マルコと図書館の事務員、そして図書館を利用していた一人の女子生徒が異常を知らせにこちらに走ってくる。
「…邪魔ね。」
リリーが手をマルコ達に向ける。
「…っ!マルコ、こっちに来ちゃだめだ!」
「え?」
リリーの手の前に冷気が漂い、三つの氷柱が出来上がる。
「…!」
その三つの氷柱が鋭い矛先を前に向けて、リリーの手から飛んでいく。
「マルコ!」
「うわっ!?おっと、危ね!」
突然飛んできた氷柱を、持ち前の運動能力でなんとか避けるマルコ。
しかし、もう二つの氷柱は、一緒にいた事務員と女子生徒を突き刺した。
「きゃあっ!!?」
「く、ああっ!!」
悲鳴を上げて二人が血を流して倒れる。
二人に駆け寄ったマルコだが、彼女たちの状態を見て苦虫を噛み潰したような表情になる。
「ハァ…ハァ…くっ」
女子生徒は腹部に氷柱が刺さり、苦しそうに荒く息をしている。
しかし、事務員は心臓を一突きされ、絶命していた。
「くそっ!リリー先生、あんた、何してんだよ!?」
マルコがリリーを批難するが、彼の前に現れた大きな氷の壁によってその声が遮られる。
俺とリリー、マルコ達との間に現われた氷の壁により入口通路から館内が塞がれてしまった。
「なんだ、これ!?リリー先生の魔法か。トウヤ、大丈夫か?おい、リリー先生どういうつもりだ!」
氷の壁の向こう側からマルコが叫ぶ。
「うるさいわよ、マルコ君。今、私とトウヤ君は二人っきりですることがあるの。邪魔だから、どこかに行ってくれる?」
「トウヤに何するつもりだ、この悪徳教師!待ってろトウヤ。こんな氷、すぐに壊して助けてやるからな!」
「その氷の壁は簡単には壊れないわよ。いくら、あなたの魔法でもね。それより、負傷した子を助けるのが先じゃない?早く応急措置しないと、死んじゃうわよ。」
「…くそっ」
マルコが黙る。おそらく、俺を助けるか女子生徒を助けるか迷っているのだろう。
「マルコ、俺の事はいい!その子を早く医務室に連れていけ!」
「でも、トウヤは…」
「大丈夫だ!俺に構わず、行け!」
「…っ、わりぃトウヤ!この子を医務室に連れて行ったら、すぐに戻るからな!」
氷の壁の向こうで、マルコが女子生徒を抱えて走り去る足音が聞こえる。
「くふふ…。かっこいいわよ、トウヤ君。さすが…優しくて、勇敢で、正義感が強いって、アイシアさんに言われるだけあるわね。」
俺はリリーを睨み付け、人差し指に意識を集中させる。
そんな俺の視線を涼しい顔で受けるリリーの手からは、真白い冷気が漂う。
「トウヤ君、今日こそあなたという人間の人格を殺して…邪神様を私の物にしてあげるわ。」
「…そうはいかない。俺があんたをここで倒して、暁の福音の暴動を止める!」
俺は熱を帯びた人差し指をリリーに向け、リリーは冷気が漂う手のひらを俺に向けた。
「火炎魔法―『火弾』!!」
「氷結魔法―『氷鏃』!!」
図書館の中で二つの魔法が発動し、放たれた火の弾丸と氷柱の矢が、ぶつかり合って弾けた。
―――王都中央高等魔法学校の敷地内。
トウヤがリリーの正体を知ったその頃、学校の敷地を囲んでいる壁が破壊され、長いローブを纏った暁の福音の団員達が学校の敷地内へと侵入していた。
「暁の福音の同胞達による王都への総攻撃が開始された。我らは同胞達に続き、優先攻撃対象の一つである王都中央高等魔法学校を襲撃、生徒及び職員を皆殺しにする。同胞以外の者は見つけ次第、殺せ。…散れ!」
集団の先頭に立っていた人物の合図で、団員達が散開する。
庭園を魔法で攻撃して荒らしながら移動し、校舎の窓や壁までも破壊して校内へ侵入する。
「な、なんだお前らは!?――ぐあっ!!? 」
廊下で出くわした生徒の一人が、団員の魔法で攻撃されて壁まで吹っ飛ばされてしまう。
校内に突然現れた侵入者達に、生徒達が唖然とする。
別の場所では、三人の団員が壁を渡って登り、窓ガラスを割って教室に侵入していた。
「…お前達、暁の福音の団員か?」
クラスメイトを背に庇う様に、前に出るホノカが団員達と対峙する。
「如何にも…。」
「我ら、暁の福音…。」
「学生諸君…。大人しく、我らに命を差し出すがいい。」
不気味な雰囲気を醸し出しつつも、威圧感を放つ三人の団員達。
「全ては、邪神様と世界の終焉のために…。 」
『邪神様と世界の終焉のために…。』
真ん中の団員の言葉の後に、二人の団員が同意するように復唱する。
「……………」
ホノカは鋭い眼差しで団員達を見据え、静かに人差し指と中指を揃えて立てる『刀印』の手型をした。
さらに別の場所では、友達の女子グループと一緒にいたアイシアが、校内に侵入してきた他の団員達と遭遇していた。
「なによ、あなた達は!?」
「それ以上近寄ると、先生を呼びますよ!」
女子生徒達がローブ姿の団員達を警戒して後ずさりながら、警告する。
「クケケ…お嬢さんたち、そんなに怖がらなくてもいいんだよぉ」
団員の一人が舌を舐めずり、下卑た笑みを浮かべる。
「僕たちはただ、君たちと遊んだ後…その若くて、きれいな肌と骨をもらいたいだけなんだぁ」
「そう…、邪神様への捧げ物としてね~。」
団員達がローブから、長い鉄の爪を備えた手を出して見せる。
「ひい!?何なんですの、あの人たち…」
「絶対普通じゃないわ!変態よ!」
「アイシアさん…危ないから、わ…私達から離れないでね!」
三人の女子生徒がアイシアを守る様に背中で囲う。
「みなさん…」
自分を庇おうとする友達を心配するアイシア。
彼女の手が、自身の首の辺りに触れた。




