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スイーツな王様  作者: 月帆
本編
65/114

薔薇のカヌレ

リュミエールの言葉に気をよくしたのか、マリアがいそいそとお盆を持ち給仕に回る。

「疑念を持ったのは認めましょう。それが確信に変わられたのは?」

宰相がまじめな顔で尋ねた。

「エリザのまとっていた…香です。」

ロザリアが答えた。

「香?」

宰相が聞き返した。

「ええ。本来は安眠効果のある薬草なのですが…少し手を加え数種の薬草を混ぜると、これができるんです。」

そう言ってロザリアは自らが作った香草の練り玉をテーブルの上に転がした。

「本当はお香として炊くことで知覚麻痺効果が得られるの…お茶に混ぜるだけでも感覚鈍化をおこすこともあります。」

ロザリアは練り玉について説明する。

マシがいち早く手に取り香りをかぐ。

「臭いはないな。」

「そうですね。」

宰相も同意する。

「火をつけてお香にして使います。効能としてはさほど強くはありませんが、暗い室内と夢中になるお話しに気をとられて、効果が上がったのかもしれませんね。」

ロザリアがマリアに練り玉に火をつけるように身振りで示した。

「夢中になるお話し…ね。」

マシが目を細めた。

「欲にまみれては、周りが見えなくなると言うのは本当ですね。」

宰相が丁寧な言葉できついこと言った。

「そして、その薬草はマスキンでしか採取されない。……偶然が重なり合った結果、あの人が怪しいと確信しました。宰相のヒントもありましたし。」

ロザリアは肩を小さくあげた。

「あとは、現場を抑えるだけ。簡単でしょ。」

ロザリアの謎解きは終わった。


「それにしても一国の姫が薬草の知識もお持ちとは。おまけに剣まで扱える。驚きました。」

嫌味とも言える言葉を宰相は投げかける。

「弟王子の王位継承権が繰り上がるまで、くれぐれも姫を頼むと言われていたのですが。」

そういえばロザリアがこの国へ来るきっかけをつくったのは宰相だったとロザリアは思い出した。


「父の…王の変なところを受け継いだのでしょうね。」

形ばかりとはいえこの国に嫁いできたときのことを思い出しながら、ロザリアは答える。

「姫様は薬師としての知識もおありですし、王妃様から護身術は学ばれております。…私も含めて。力では男の方には敵いませんから、それなりの術になってしまいますが。」

すました顔でマリアが補足する。


「王妃が護身術ね、おかしな国だな。貿易は盛んなのに、不思議と国の中枢を担う人間の…人間くさいところは見えてこない。」

マシがつぶやいた。


「結果として、勝手に動いてしまったけれど…私欲に凝り固まった貴族、マスキンへの牽制、それに…綺麗な令嬢たちへの牽制…寵妃としての、もともとの役割はそれなりに果たせたと思いますわ。」

ロザリアはリュミエールを見つめた。

「ね、陛下。」

リュミエールを見つめていることを確認するようにロザリアが言う。

「……襲われたのは計画のうちか。」

リュミエールの声は、冷たく低いものだった。。

「予想はしていませんでしたけれど…、的がうまく動いてくれましたね。」

「的が動く…か。」

リュミエールの冷え冷えとした声。

さすがのマシも沈黙を守る。

「マリアもいましたし。」

言い訳がましくなってしまったと思いながらロザリアは言葉を繋いだ。

ロザリアから出た言葉にリュミエールの表情は納得していないのは明らかだった。

「あの人数を…か」

威圧する王としての姿。

「けれど、得られたものは多かったかと…」

ロザリアが答えた。

「本当に…そう思っているのか?」

リュミエールの冷たい声がさらに冷たくなる。

「ええ。」

ロザリアも小さく答えた。


「難しい話はそれぐらいになさって、姫様もお疲れです。」

場の空気が読めないのか、気を利かせたのか、どちらか判断が付きにくい明るい声でマリアが盆に隠していたお菓子を披露する。


「薔薇のカヌレでございます。」

マリアがそれぞれの皿にカヌレを取り分ける。

ボルドー色の濃茶の焼き色をしたカヌレをロザリアは小さくナイフを使い切り分けり口に入れる。

表面の固い生地を噛むと、香ばしい味が口の中に広がる。

そして、噛めばすぐに内側のしっとりとして柔らかい生地が優しく口の中で転がる。


「おいしいわ。ありがとう。」

ロザリアはマリアに言った。

マリアは嬉しそうにロザリアの茶器にお茶を注いだ。

表題のお菓子ですが、読者様からいただいたお菓子情報を使わせていただきました。ありがとうございます!一応サブタイトルのお菓子はすべて解釈があります…本編終了後投稿できたらと思っております。

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