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スイーツな王様  作者: 月帆
本編
64/114

マドレーヌの後味

湯浴みも終わり、身支度も整い、夜の帳がおりるにはまだ少し早い時間、リュミエールと宰相、マシは連れ立ってやってきた。

「一応後宮ですのに、男の方ばっかり。」

マリアが頬を膨らませながら言った。

その顔には湯浴みから時間が経っているとはいえ、ロザリアを人目にさらしたくないという思いがありありと浮かんでいた。

「陛下もいらっしゃいますしね、別に後宮だからといって男性と会うことは問題ではありませんよ。」

宰相がやんわりと交わす。

「姫様を見られたくないって嫉妬か、嫉妬は人を汚くする。」

マシがマリアを面白そうにからかう。

マリアが下からマシをにらみあげた。

「怖い侍女様だ。」

マシが両手で自分の体を抱きしめ、震えあがったまねをした。


「やめておけ。」

リュミエールが制した。

ロザリアは、来客があることが分かっているにもかかわらず、紅も塗らず簡素なドレスに身を包んで優雅に椅子に腰をかけていた。

その姿にリュミエールも眉をしかめた。

「もう少し何とかならないのか?」

リュミエールがロザリアに言った。

「もう湯浴みもすみましたし、お話が終われば休むだけでしょ。面倒で…お目汚しですね。」

ロザリアの本心からの言葉に、その場の人間は肩を落とした。

余計な化粧を施されていない分、ロザリアのきめの細かい白い肌が目立つ。

人前だと言うのに髪も結わず、髪が流れるままにしているその姿は無作法ではなく、金の滝のように輝いていた。

「陛下ほどじゃないが、食指が動くな。」

マシが面白そうに手を叩きながら笑った。

マリアとリュミエールが同時ににらみつける。

「こわい、こわい。」

マシが再びマリアに見せ付けるように体を震わせた。


場の空気が微妙なものになりだしたころ宰相が口を開いた。

「無茶な真似をなさいましたね。」

ロザリアの細く白い首に巻かれた包帯をみて宰相が言った。

「傷より大げさなんですよ。こんなものすぐ治ります。」

ロザリアが怒った表情でマリアを軽く睨みながら言う。

「それよりも泳がせておいた餌を食べてしまって申し訳ありません。」

ロザリアは椅子から立ち上がり頭を下げた。

「いえ、彼女が怪しいとは思っていましたが。確証までは、証拠がなかったですしね。どうやって情報を探っていたのですか?」

単刀直入に宰相は切り出した。

「勘です。」

「勘?」

ロザリアが自信を持って言い切った。

「お会いしたとき…宰相様ともあろう方が女官長でもなく、いくら庭とはいえ侍女と話しているなんて…

違和感がありました。」

マシがおもしろそうに瞳を細めた。

「だって…宰相はお忙しい職務ですのに。他の誰かに頼んでも差し支えないでしょう。

きっと、エリザも宰相に怪しまれていることは気が付いていたのでしょう、城に残るよりも、私を手土産にどこかに行こうとした。」

ロザリアはリュミエールの視線を痛いほど感じた。

悪いことはしていないはずなのに、まるで怒られている子供のような気持ちだった。


「難しいお話は、お座りになられては。姫様もお疲れです。」

そう言って、マリアはお茶の準備をしたテーブルを見た。

テーブルの上には小さなマドレーヌが置いてあった。


「何も入っておりませんよ。」

にっこりと主人とよく似た笑顔をマリアは浮かべる。

リュミエール達は勧められた席にすわりお茶とマドレーヌを口にする。


「聖女か悪女か…まさに、だな。」

リュミエールはは誰に言うでもなくつぶやいた。

言葉の使い方を訂正しました。誤字脱字修正しました。ご指摘ありがとうございます。

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