休憩のスイーツ
宰相が気をきかせたのか、部屋の中にはマリアとロザリア二人が残されることになった。
二人っきりになるとマリアは汚れた姿のロザリアに抱きついた。
「予定が違います。」
マリアが顔が汚れるのも気にせず、ロザリアの服に顔をうずめる。
「流石にあの人数の男たちは私にはさばけません。」
マリアが言った。
「いいじゃない。陛下がいらしたし、結果としては悪くないわ。」
「いいえ、最悪です。」
マリアが土埃を顔につけ、涙で汚れた顔を上げた。
「姫様を危険にさらしました。侍女として失格です。」
「そう?勝手に動いた私が悪いんだけど。」
ロザリアが何でもないことのように言った。
そしてマリアの体を自分から離れさせる。
「いいえ、私もっと強くなります。」
決意に満ちた目でマリアは力強く拳を握った。
方向性が間違っているとロザリアは言いたかったが、マリアの勢いに負け口をつぐんだ。
「それより、あの侍女に仲間がいたなんて、聞いていないけど。」
そしてロザリアは話題を変える。
「予想はできたのでは?」
マリアも先ほどまでの涙が嘘のように冷静に切り替えした。
「まぁね。」
ロザリアもうなづいた。
「それにしても姫様、解毒剤が全てのものに聞くわけではないのですよ。危険な賭けでした。」
マリアが続ける。
「そうね、でもエリザの出した水が…水の中に含まれていた薬が何かわかったし、本当に問題なかったのよ。」
ロザリアが目を伏せた。
「あの水の中に入っていた薬草…マスキンの特産じゃない、この国のものよ。」
マリアが大きく目を見開いた。
「では、マスキンからの間者ではないと?」
「さぁ?そこまで決め付けるのは早計だけど。この国のものであれば、それなりの人間ならいつでも手に入るわ。」
「ですが…。」
マリアがまだ文句を言おうとするのをロザリアが片手を挙げて止めた。
「すっきりしたいわ。」
そうロザリアが言うと、マリアが慌てて湯浴みの支度を整えにかかった。
忙しく動くマリアに聞こえないようにロザリアは言った。
「まさか陛下が来るなんてね、参るわね。」
「参って結構、あの人数の男を長いドレスを着たまま裁けるほどの技量は私にはありません。」
小さな声で言ったはずなのに、耳聡くマリアが言い返した。
「それでも困るのよ。」
ロザリアが小さくため息をついた。
ロザリアはあの時、囚われたフリをしていたあの時。
リュミエールが来た姿を見て緊張が溶けた自分が嫌だった。
リュミエールの姿にほっとした。
リュミエールの姿に安心した自分がいた。
こんなにも…素直に自分の気持ちが分かるなんて…
最悪だ。
こんなにもリュミエールに惹かれているなんて。
好き。
だなんて…
こんな厄介な気持ちいらない。
名ばかりの側室であることには変わりはない、それどころか契約しているだけの関係なのに…
ロザリアはもう一度ため息をついた。




