お土産のスイーツ
リュミエールがエミリアと話していた頃、ロザリアは身支度を整えていた。
簡素な服を脱ぎ捨て、寵妃としてはシンプルなドレスを見に纏う。
「姫様、どうでしたか?」
マリアがロザリアの着替えを助けながら尋ねる。
「普通よ。露店を見て回って。国よりも大きくて珍しいものがたくさんあったわ。」
そう言いながら、マリアに買ってきたハーブを数種類みせる。
「まぁ、本当に珍しい。」
マリアがハーブを見ながら頷いた。
「おもしろかったわ。」
ロザリアが頭につけていた留め金をとる。
「マーガレットのモチーフですわね。」
マリアが留め金を手に取る。
「華奢に見えて、精巧な作り。高く売れそうですね。」
「そうね。」
ロザリアは心ここにあらずと言った様子で答えた。
たわいもない会話を繰り返しながら着替えが終わった頃、女官長が現れた。
「王からの贈りものでございます。」
銀の皿に盛られた色鮮やかなお菓子を差し出す。
「今日のお礼だそうです。」
マカロンだった。
一つ手に取り口にする。
露店で食べたマカロンとは違う味がした。
「ありがとうございますと、お伝えください。」
ロザリアは女官長に言う。
「王は今夜も参られるはずですから、自分でお伝えください。
…あなたは、もう以前のお立場ではないのですからお気を付けください。」
そういって一礼する。
女官長の言葉はマカロンを無作法に食べたことについて言っているのか…
リュミエールと市井を出歩いたことを言っているのか…
ロザリアは目を伏せ、少し考えている風だったが、ゆっくりと口を開いた。
「女官長は知っているのでしょ、白い婚姻だってことを。」
女官長は無表情のままロザリアの言葉に耳を傾ける。
「…もうすぐ終わる、そうすれば、この離宮ともお別れ。女官長には迷惑をかけます。」
一国の王女が女官長とはいえ仕える者に謝罪の言葉を口にする。
「あなたに仕えることは面白いと感じています。」
無表情な女官長の言葉に暖かさをロザリアは感じる。
本当に…早く終わりにしなければ。
離れられなくなる。
リュミエールからも、この国からも。
リュミエールに出会う前ならば、弟が王位継承権1位になった後ならば、すぐにでも帰ろうと思っていたのに…
この国に来て二年、何も起こらなかった。
忘れられた側室だったのに…
思い通りにはいかない、ロザリアはそう思った。
ロザリアがこの国に着てから三回目の季節は目前まで迫っていた。
誤字脱字修正いたしました。ご指摘ありがとうございます。




