初恋のスイーツ
城に着くと、リュミエールや宰相が手を回していたのか、四人は人目につくこともなく月の離宮に戻ることができた。
月の離宮では、女官長が待ち構えた様子で四人を出迎えた。
「お戯れが過ぎます。」
女官長は、何か言いたげだったが一言釘を刺すだけにとどめていた。
リュミエール軽く手を振って流す。
そして、リュミエールは宰相に追い立てられるように執務室へと戻って行った。
執務室にリュミエールが着くと、そこにはエミリアが待ち構えていた。
エミリアの瞳は少し赤く色づいていた。
「エミリア。」
「どうして私ではいけないのですか?」
理性的であろうとしながら、感情が抑えきれない様子でエミリアがリュミエールに詰め寄った。
「なんのことだ。」
「馬屋から聞きました。あの人と街に出かけたと。」
「余計なことを。」
リュミエールはそう言えば馬屋の老人はエミリアの領地の出身者だったと思い出す。
「言っているだろう。お前は妹だ…と。」
何度も、ロザリアがこの国に訪れる前から繰り返し言っている言葉をリュミエールは口にする。
「そう思うのは陛下だけです。」
エミリアは強くリュミエールをにらむ。
「お前も『お兄様』と呼んでいただろう。」
何度も繰り返した言葉にうんざりしながらリュミエールが返す。
「お兄様ではいけませんか?別に王妃になるのに愛情はいらないでしょう。」
『王妃になるのに愛情はいらない』
エミリアの言葉に宰相が苦笑する。
「お前がなりたいのは王妃だろう。」
リュミエールが諭すように言う。
エミリアは頭を振る。
「陛下が好きなんです。」
エミリアは自分の失言に気が付かないのか、何回もしている告白を繰り返す。
「昔から…お前は思い込みが激しいから。お前の兄が将来は王妃になれっといったことを真に受けて…。」
リュミエールが苦手とするエミリアの兄を思い出しながらぼやく。
「陛下。」
エミリアが非難の声を上げた。
ふと…
そうふと、リュミエールが真剣な顔をした。
「初恋だと言ったら笑うか?」
「初恋…ですか?」
リュミエールの唐突な言葉に、エミリアはただ言葉を繰り返す。
「ああ。」
リュミエールの真剣な、熱を帯びたまなざしにエミリアは目を閉じる。
「私は…諦めません。」
「そうか。」
リュミエールは軽くエミリアの頭をなでた。
「失礼します。」
エミリアは少し起こった様子で執務室を後にした。
「お止めにならないのですか?」
宰相がリュミエールに声をかける。
「何がだ?」
「エミリア様を。何をするかわかりませんよ。」
リュミエールは笑う。
「猪突猛進の兄妹か。」
そういいながら執務室の大きな机に向かう。
「それで、予定より早く来たのは何があった。」
王の顔をしたリュミエールがそこにはいた。
「マスキンとの小競り合いですか…使者が来ております。」
宰相も宰相の顔に戻る。
「使者?」
「以前から言っている和平の話はどうなっていると。」
「和平だと?」
リュミエールがはじめて聞く話に目を少し大きく開いた。
「和平の親書を送っているが返事がないと…使者は言っております。」
「少し調べる必要があるな。」
リュミエールが冷たい顔をした。
少しづつ、そして確実に時間は進む。
○




