惑わすスイーツの準備
リュミエールとロザリアが散策に出かけてから一週間。
相変わらずリュミエールは足繁く月の離宮に赴く。
「お菓子は作らないのか?」
リュミエールは月の離宮に来るたび同じ言葉を口にする。
「太ります。」
ロザリアも相変わらず皮肉を込めた返答を軽快に返す。
「動いていたら太らないさ。お前こそ太るんじゃないか?」
「若いから大丈夫です。」
ロザリアがむっとしながら答える。
「それより、今度はなにを作るんだ。」
露店で買ったハーブが窓の外に干されている様子を見ながらリュミエールが尋ねる。
「秘密。」
ロザリアは、いつもリュミエールがよく見せる悪戯っ子のような笑顔を見せた。
「今日も本宮にお帰りですの?」
マリアがリュミエールがいなくなった後、ロザリアの部屋を訪ねてくる。
「忙しいみたいね。」
ロザリアが答える。
「調べますか?」
マリアが侍女らしく尋ねた。
「いいわ、正直、私もしたいことがあるから…ずっといられると迷惑なのよね。」
厄介な恋心も少し冷静に見れるようになってきたロザリアが、不敬な言葉を口にする。
「それよりすり鉢を用意して。女官長にも知られたくないの。」
マリアは静かにうなづいた。
「姫様、できましたか?」
ロザリアは干していた数種類のハーブをすり鉢で細かく粉砕する。
それに油を一滴たらし、またすり鉢で練り合わせる。
最後に水をいれ、さらに練り合わせる。
団子を作るように練玉を形を整える。
「ええ。これでできあがり。あとは乾燥ね。」
お菓子とは違う、お香を完成させたロザリアは黒い笑を浮かべた。
「薬師に本当になれるかも。」
ロザリアがマリアに話しかける。
「では姫様、食いっぱぐれることはありませんね。」
マリアは少し茶化していう。
「そうね。」
小さな練玉を窓辺に置きロザリアが答えた。
特有の香りが風とともに鼻腔をくすぐる。
「あとは乾燥させたら終わり。」
ロザリアがひと段落着いたのを見計らってマリアは手紙を差し出した。
「なに?」
そう言いながらロザリアは手紙の封を切った。
「エミリア様はなんとおっしゃっているのですか?」
マリアが尋ねる。
「お茶会の招待状ね。」
「どうされますか?」
「行こうかしら、一度話してみたいの。」
最も王妃に近いと言われているエミリアと話がしてみたいとロザリアは思った。
少し前までは、王妃候補の名前を挙げられても何も思わなかったのに…
今は気になる。
リュミエールの傍にいる人間がどんな人になるのか気になる。
「姫様?」
「すぐ返信を…いいえ、今から行ってもいいかもしれないわ。」
「今からですか?」
マリアが驚いた声を出した。
「ええ、せっかくだし。運がよければ会えるわ。今日、王宮で開かれているお茶会はある?それにエミリア様が参加されているか分かるかしら?」
ロザリアはすでに衣裳部屋のほうへいきドレスを選び出していた。
「女官長に聞いてきます。」
マリアがうなづいた。
どんな理由にせよ、姫様が美しく着飾られる機会があるのならば、それに越したことはないと満面の笑みをマリアは浮かべていた。




