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モルス1911  作者: 古鳥居 日影
第二章
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魔王降臨

 マスターは、血の気が引いた。

 しかし、このままいても何も変わらない。

 目の前にあるのは、間違いなく我が城である「ノクターン」だ。

 「ええい、ままよ!」

 マスターは、意を決して扉を開く。


 中に入ると、明かりは付いているが彩華がいない。

「……ただいま」

 か細い声で挨拶する。

 だが、返答はなく気配すらない。

「……よかった」

 胸を撫で下ろした……その時。

「……ねぇマスター」

 思わず姿勢を正すマスター。

 体が動かない……いや、動けない。

 だが、首だけは動くことができた。

 ゆっくりと、冷たく突き刺さる声がする後ろを振り向くと……。

 なんと、今入ってきた扉の横に存在だけで即死できそうな彩華(魔王)が腕を組みながら仁王立ちしているではないか。

「ただいま……戻りました」

「ねぇマスター。今何時かな?」

 室内の壁掛け時計を見ると、時刻は17時。

「17時みたいですね……はい」

 彩華が、一歩また一歩と近づいてくる。

 何か手を叩く音がする。

 よく見ると、彩華はウィスキーが入っている瓶で、左手を叩いていた。

 しかも、あのウィスキーは高いやつ……。

 下がって距離を保ちたいが、まるで蛇に睨まれた蛙の状態で動けない。

「ねぇマスター。買い物はどうしたのかな?」

「き、聞いてくれ。これには深いわけがあるんだ」

「へぇー、何かな。教えて?」

 距離をつめてくる彩華。

 体の熱が伝わるほどの距離だ。

「坂田康二がスーパーで勤めていて免許証をスマホで写してきたんだ」

 マスターは、ポケットからスマホを取り出し証拠を見せる。

「こ、これだ」

 彩華はスマホを見て頷く。

「情報通りだね」

 情報通り?

 どういう事だ?……まさか。

「彩華。まさか知っていて俺を送ったのか?」

 彩華は、不敵な笑みをする。

「私は情報専門。マスターは実行専門だからね」

「それなら、普通に言ってくれよ……」

 彩華は、まるで憑依されたかのように無表情になる。

「で?買い物は?」

 もう逃げられない。

 覚悟を決めたマスター。

「……忘れました」

 次の瞬間、鈍い音とともに視界が暗くなる。

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