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モルス1911  作者: 古鳥居 日影
第一章
2/12

2

 中年男性は、胸ポケットから一枚の写真を取り出し、カウンターに置く。

「マスター、この人を知ってるか?」

 マスターは、手を止めて写真を見た。

 写真に写る男性は、貧相な顔をしていた。

「いえ、存じ上げません」

「そうか。こいつの名前は坂田康二。一般人であるが、それは表向きの話。正体は闇バイトの首謀者だ」

「なるほど。話を続けてくれ」

 マスターは、再び手を動かしカクテルを作る。

「こいつのせいで、若い人たちが犯罪に手を染めてる。私の娘もそうだ。いや……そうだったになるか……」

「娘さんですか……」

「あぁ……そうだ。莉亜は騙されたんだ。見張りをやるだけで金が入るって言われたらしく、最初は疑ってた。だが、言葉巧みに莉亜を騙し、犯罪の片棒を担ぐ羽目になったんだ」

 マスターは、氷を入れたグラスにウォッカを少し、そしてトマトジュースを入れる。

「それが苦に……娘は自殺したんだ」

 中年男性の瞳が潤んでいる。

「事情は分かりました。ですが、氷の花一つの値段はご存知ですか?」

 中年男性は深く頷く。

「もちろんだ。300万だろ?お願いだ……莉亜の無念を晴らしてくれ……」

「では、前金100万を口座に。残りは完了後で……」

「そ、それじゃあこの依頼は……」

 カクテルを軽くステアして、中年男性の前に出す。

「お待たせしました。こちらブラッティメアリーです。この朱より赤い色をお届けします」

「……ありがとう」

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