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恋人  作者: 纏天
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第七章 あの日の男

ここまで読んでいただきありがとうございます!

そろそろ中盤です。

「海浜幕張 事件」


検索する。


結果は、地域のニュースや事故の記事ばかりだった。


あの日の事件は、出てこない。


もう一度検索する。


「海浜幕張 少女 襲撃」


「海浜幕張 男子学生 刺傷」


「海浜幕張 元アイドル 事件」


それでも、出てこない。


警察も来た。


救急車も来た。


人も大勢集まっていた。


それなのに、事件を取り扱った記事がほとんど出てこない。


私は、その日の仕事が終わると図書館へ向かった。


図書館で、当時の新聞を探した。


事件が起きた頃の日付を確認して、一枚ずつめくっていく。


社会面。


地域面。


千葉県内のニュース。


なかなか見つからない。


やっぱり、ないのかもしれない。


そう思ったときだった。


小さな記事が目に入った。


私は手を止めた。


少女が襲われた事件。


海浜幕張駅周辺。


刃物による襲撃。


そして、少女を助けようとした少年が負傷。


間違いない。


あの日の事件だった。


私は記事を最後まで読んだ。


そこに、犯人の名前が書かれていた。


――河村隆容疑者。


私は、その名前を見つめた。


あの調査票にあった「河村」という名前。


私は新聞を閉じた。


そして、図書館を出た。


⸻


家に帰ると、私はすぐにパソコンを開いた。


検索欄に、


「河村隆」


と入力する。


いくつかの記事が出てきた。


その中に、仕事についてインタビューを受けている記事があった。


私は、その記事を開いた。


そこに、写真が載っていた。


スーツ姿の男。


私は、その写真を見た。


そして――


「はあ、、」


思わず、声が漏れた。


顔は、ほとんど変わっていなかった。


少し年を取っている。


でも、分かる。


この顔を、私は知っている。


何度も見た。


私のライブに何度も来ていた。


熱烈なファンだった。


ファンがほとんどいなかった私にとって、その顔は忘れるはずがなかった。


そして。


あの日、私を襲った男。


私は、画面に映る顔を見つめた。


間違いない。


河村隆。


あの人だ。


その顔を見ているうちに、私は昔のことを思い出した。


事件のあと。


私は、自分を助けてくれた男の子のことをずっと気にしていた。


私を逃がそうとしてくれた。


私の前に立ってくれた。


そして、私の代わりに刺された。


あの子は、大丈夫だったのだろうか。


私は事件を担当している刑事に、


「助けてくれた男の子に、お礼を言いたいです」


と伝えた。


刑事は、少し困ったような顔をした。


「今は、会える状態じゃないんです」


精神的なショックが大きく、本人もかなり動揺しているらしい。


私は、それ以上何も言えなかった。


でも、どうしても気になった。


「どんな子なんですか?」


そう聞くと、警察の人が教えてくれた。


「こちらには、サッカーの代表合宿で来ていた子だと聞いています」


「代表……?」


「はい。遠方から合宿でこちらに来ていたようです」


私は、少し驚いた。


私と同じくらいの年齢。


それなのに、代表に選ばれるようなサッカー選手。


どんな子なんだろう。


会って、お礼を言いたかった。


もう一度、


「名前だけでも、教えてもらえませんか?」


と聞いた。


警察の人はしばらく黙っていた。


そして、


「本当は教えられないんですが……」


そう言って、声を落とした。


「玉田湊くんです」


その名前を、私は覚えた。


玉田湊。


あの日、私を助けてくれた男の子。


それが、私が初めて知った彼の名前だった。


私は、自分の部屋でパソコンを開いた。


「玉田湊」


名前を検索する。


いくつか検索結果が出てきた。


同じ名前の人もいる。


でも、すぐに分かった。


この人だ。


サッカーの記事が、いくつも出てきた。


代表での活動。


大会の記事。


試合結果。


私は、一つずつ記事を読んでいった。


同年代の中でも、かなり有名な選手だった。


私は、自分と比べた。


私は、アイドルだった。


でも、ファンはほとんどいなかった。


ライブに来てくれる人も、いつも同じような人ばかり。


アイドルとして将来に希望を持てず諦めた。


それに対して、この子は違った。


サッカー選手として、将来を期待されている。


記事を読めば読むほど、そういうことが分かってきた。


私は、画面を見つめた。


あの日。


私を助けたことで。


私のために立ち向かったことで。


この子の未来まで、壊してしまったんじゃないか。


そう思うと、怖くなった。


私は、パソコンの画面を閉じた。


でも、頭の中から名前が消えなかった。


玉田湊。


あの日、私を助けてくれた男の子。


私は、その名前をずっと覚えていた。

読んでいただきありがとうございます!

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