第2話 覚悟
イーグルとフウマは敵が来るのを柵の中で待っていた。
「ちなみに、この作戦は効果があるですか?」
フウマの問いに、イーグルは指を指しながら話す
「貴方達が来る前に一度、この作戦を行い、魔石によるクレーターが出来ているので、クレーターではない場所から進軍する為、敵の侵攻速度を遅くするか、魔石が埋まっている場所を通るしか方法が無いため、防衛側としてはこの作戦しかありません」
イーグルが辺りを見回す。
「それに、ここは平原しか無いので、地形は自分達で変える他ありませんから」
イーグルは指を指す
「…来ましたね」
カタパルトを扱う兵士に準備の合図を行う
「今更なんですけど、あれに松明は使わないですか?」
フウマはカタパルトの球の方を指さす
「ああ、言っていませんでしたね、村全体に油を撒いているので、松明が使えないですよ」
「!?」
「もし、この戦線が崩れた場合、西と東で戦っている仲間に挟撃される訳にはいけないので、少しでも迂回させるように、村全体に油を撒いているです」
そんな事を話していると、マロ帝国兵達が歩いてくるのが見える。
「覚悟は大丈夫ですか?」
イーグルの問いに、フウマは俯く
その様子に心配そうにフウマにだけ聞こえる声で話しかける
「無理はしなくて良いですよ、貴方が来たところは、私には分かりませんが…その様子だと、戦いとは無縁の場所から来たようですね」
「…」
フウマはゆっくりと口を開く
「分かってるんです、戦わなければ死ぬって…相手は人間、自分は竜人…だからこそ殺されるんですよね。分かってるんです、分かってはいるんですが、気持ちではやりたくないんです……それに、自分の所では殺すなんて単語すら、禁句ですから」
「…フウマ、貴方は逃げてください。」
イーグルの声にフウマは顔を上げる。
「逃げてもかまわないんですよ。貴方は竜人帝国から来た援助なのですから」
フウマは周りの兵士達を見る。皆、覚悟を決め、敵を睨みつけていた。
そんな光景に、フウマは今の自分の立場が情けなく思った。戦いに行く彼らを尻目に、にげる度胸が無かったのかもしれないが…
「…何かする事はないですか?」
フウマの問いにイーグルは考え、安心させるよう、微笑んで話しかけた。
「…カタパルトの球に火をつけてもらってもいいですか?」
「分かりました」
フウマが行こうとすると、イーグルが肩を掴んで留まらせる。
「この様な状況に巻き込んでしまい、申し訳ありません。だからこそ、全ての責任は私が背負います。貴方を巻き込んでしまった責任として」
「…」
フウマは暗い笑顔をイーグルに見せ、カタパルトに向かった。
「敵が指定の場所に着きました」
近くの兵士が、イーグルに話す。
イーグルはカタパルトの兵士に合図を送った。
兵士はレバーを引き、カタパルトの球を発射する。
火の玉は空を飛び、落下と共に地面を抉った。
ドドン!
その衝撃に魔石は反応し、大きな爆発を連鎖的に起こした。
魔石の上にいたマロ帝国兵士達は半数が爆発にのまれた。
イーグルはカタパルトに向かって叫んだ。
「装填急げ!」
カタパルトに布をくるんだ石を装填し、油をかける。
「お願いします!」
フウマは空気を吸い、球に火を吹きかけた。
球は一瞬で燃え広がり、火の球に変わった。
「発射!」
兵士はレバーを引いた。
火の玉が、敵兵士達に降り注ぐ。
「1、2、5!」
兵士は敵の損害を報告した。
「敵の魔術師を確認!」
一人の兵士が声を上げる。
イーグルは敵の魔術師を確認した後、声を上げた
「突撃!」
布が掛かった柵の後にいた兵士達は、柵を蹴破り、イーグルと共に敵に向かって走り出す。
カタパルトにいる兵士は、フウマに火をつけるよう声をかけた。
「お願いします!」
フウマは球に火をつける。
火を着けたカタパルトから、レバーを引き、球を発射する。
火の球は、イーグル達の頭上を通過し、敵に降り注ぐ。
イーグル達は火の球が敵に当たるのを確認すると、翼を羽ばたかせ、一気に距離を縮め、敵に斬りかかる。
そんな様子にフウマは苦虫を噛み潰したような顔で、見ていた。
(これが戦場?)
辺りは爆発した煙が残り、火が所々で燃えており、それはまるで…
(まるで、戦争映画で見た光景)
「お願いします!」
兵士の声に、体を震わせる
「は、はい!」
フウマは口から火を着けた。
(あの人達が戦ってるのに、自分は、自分は…)
フウマはその場の空気にのまれ、罪悪感を出していた。
ふと、小さな布が落ちているのを確認した。
一方、イーグル達は窮地に陥っていた。
「技:連撃」
「ぐっ」
イーグルは敵兵士の攻撃に防戦一方であった。
「おらよ!」
「ぐは!」
イーグルは蹴りをもろに食らい、後ろに倒れた。
その様子に敵兵士はニヤニヤしながら近く
「奇襲を仕掛けても、こんなに弱いんじゃなぁ」
敵兵士はしゃがみ、倒れているイーグルに話しかける。
「なあ、あんたの羽、俺にくれよ」
イーグルは顔を上げ、敵兵士を睨みつける
「そしたら、お前らを助けてやるよ」
「どうゆう意味だ?」
「あんたも分かってんだろ、負け戦だって。生き残りと戦っても勝てない事ぐらい」
敵兵士はイーグルの片方の翼を持ち上げる
「だからよ、交渉だよ。あんたらが、誇りに思ってるこの羽を俺らにくれれば、あんたらを翼人とは思わないからよ」
ニヤニヤとイーグルの翼を揺らす
(我々の翼を取れば、助けてやるだと?冗談じゃない。奴らは我々を飛べなくし、逃げる手段を無くすつもりだ……だが、もし、逃がしてくれるのならば…)
イーグルは睨みつけながら考えていた。
すると次の瞬間
「熱っ!」
敵兵士の額に、小さな火の球が直撃した。
敵兵士の視線の先には、投球ポーズのフウマがそこにいた。
フウマは、手をはたき、敵兵士に指をさす
「ちゃっちゃと逃げないと、もう一発食らわせるぞ」
(何やってんの!?自分は!?)
イーグルはその隙に、敵兵士と距離を取り、フウマに話しかける。
「どうして逃げなかったんです?」
「…分からないです。でも、あそこで逃げたら、ずっと後悔するんじゃないかと思って」
「私が責任を取ると!」
「そうじゃないんです。2度目の人生は後悔したくないと、天使様に言ったから」
イーグルはフウマを見る
「クッソ、火傷しちまったじゃねえか」
頭をさすり悪態をつきながら、敵兵士は剣を構える。
「助けてやろうと思ったが、気が変わった、ぶち殺してやる!」
イーグルは敵に振り返った。
「来ます!」




