第5話 カフェ
コツコツと足音が近づいてくる。
「本当にいるのか?」
野太い声をした男の声が聞こえてくる。
ベットの下から見ると、3人組とカウンターにいた女性がドア付近に屯っていた。
男の近くにいる、子分らしき人物が開いていた窓から、首を出す
「逃げたんですかね?」
「どうだか」
男はドカッと、トコロシェのベットに腰をかける
「探しに行ってこい」
「自分達ですか?」
「テメェら以外に誰がいるんだ?」
萎縮しながら、2人は駆け足で階段を降りていった
「オメェは新しい客が来たら、俺の所に持って来い」
「死体処理、面倒臭いんだけど」
「あ?」
首を横に振りながら、女はゆっくりと階段を降りていった。
男はそのままベットで横になり、直ぐにいびきをかきながら寝てしまった。
ベットの下からキラリと光る刃物が見える。
トコロシェは男と同じ体勢になりながら、ナイフの持ち手の部分を自身の胸あたりに、トントンと叩き、何かを確認している。
納得がいったのか、刃を上にして、一呼吸置いてから思いっきり押し上げ、男の胸から刃が出てくる
「ぐっ!」
男は刃を食いしばりながら、起き上がろうとするも、トコロシェはナイフで空いた穴から更にナイフを突き刺し、ベットの下から這い出る。
腰にあるもう一つのナイフを取り出しながら、男の首元目掛け振り下ろす。
男は抵抗しようとするも、トコロシェの腕の速度には敵わず、ただ迫るナイフを眺めるしか出来無かった……。
ギィッ……
ベットの軋む音が部屋の中に広がる。
トコロシェは、ゆっくりと立ち上がり、もう一度、男の胸に突き刺し、ナイフの液体を拭うと、腰に締まった。
「出てきて良いぞ」
その声を聞くとゆっくりと、ベットの下から出る。
惨状は、トコロシェのベットのみで行われていた。
ふと、ドアが開いているのに気づき、急いで閉める。
「……これから、どうする?」
男だった物を見ながらビクビクと声を震わせながら、トコロシェに聞くと、それを無視する様に、ドアを開け、外へ出てしまった。
その沈黙に不気味に思うが、視界の端に男の体が見えるのが、更に不気味さが増した。
軽快な音で、階段を降りる音が聞こえる
「窓……閉めるか」
全開に開いた窓を見ていると、隠さなくてはいけない衝動に駆られ、窓の取っ手の紐を引っ張り、窓とカーテン閉めた
「うっ……」
窓に逃げていた血なまぐさい匂いが、この部屋に留まり、フウマの鼻に入り込んだ。
その匂いにたまらず、鼻を押さえるも、こびり付くように、その匂いは離れなかった
「?」
下から、ドタドタと音が聞こえると思いきや、直ぐ様、静かになる。
なんだろう……と不思議に思いながら、しかめっ面で、待っていると、ギシギシと階段を駆け上がる音が聞こえる
……どっちだ?
いつでも、隠れる事が出来るように、ドアから半身を出しながら、階段がある方へ覗き込んでいると、ナイフを拭いながら上がってくる、トコロシェの姿が見えた。
見られている視線に気づき、こちらに視線を向けてくる
「此処から離れる」
そう言うと片手で、手招きを行い、階段を下った。
辺りを見回しながら外に出ると、ドアを閉め、階段を下った。
一階に来ると、女の姿は無かった。
不思議に思いながら、カウンターを覗き込もうとすると、後から壁を叩く音が聞こえる
「……行くぞ」
「は、はい!」
冷たい視線に、一時の恐怖を抱きながらも、トコロシェに駆け寄り、宿から出た。
外の風を吸うと、あの匂いは少しマシになる。
ため息を漏らしていると、隣にいたトコロシェは消え、駆け足で遠くまで行ってしまった
「ま、待ってください!」
宿に来る前に走った記憶を思い出し、トコロシェを見失わない様に走り出した。
*****
トコロシェとゆっくり歩きながら、辺りを見回す。
先程の入り組んだ道とは違い、大通りを2人は歩いていた。
大通りには人が多く、綺麗な服を来た人達がチラホラと居る中で、先程の入り組んだ道にいた、浮浪者の様な人物達は少なく、逆にその様な人物の方が目立っていた
「ここは?」
「マロ帝国の第四自治区だ」
「第四?」
「マロ帝国が征服した時の数から取っている」
「第四以上にまだ、あるんですか?」
「第八十自治区まであるな」
「80ってそこまで国家があるんですか?」
「国家だけじゃなく、民族も吸収されている。 だからこそ今後も増えて行くだろうな」
ピーっと、笛の音が通りに響き渡る。
裸足で歩く、布1枚を纏った男が、軍服を来た2人組に追われていた。
一人は追いかけ、もう一人は杖を逃げる男に向けると、杖から水の槍が放たれ、男の頭を貫く。
貫かれた男は、力なく倒れた
「……!」
突然の出来事に、言葉を失う。
視界の端に見える人達はチラリと見ると直ぐ様、元の作業に戻った。
トコロシェに肩を叩かれるとビクリと身体を震わせた
「行くぞ」
倒れた男を尻目にトコロシェに付いていく
「あれって――」
トコロシェが片手で静止させる。
「此処では、これが普通だ。 少しは慣れろ」
トコロシェは、遠くに指を指す所には、外にテーブルが置かれ、カップの絵が描かれた看板が置いてあった。
「喫茶店……ですか?」
「あぁ、あそこで少し話す」
チラリと倒れた男を見ると、2人組は台車に男を乗せると、颯爽と駆け抜けて行った。
振り返ると、トコロシェの姿は無く、先程、話していた喫茶店の店員と話していた。
視線を自分に向けると、手招きをして来る
「ま、待ってください!」
駆け足で、トコロシェに向かった
「遅いぞ」
「す、すみません……」
息を切らしながら、そう答えた
「では、こちらへ」
店員に連れられ、店内へと入って行く。
店内は、暖かい光に包まれており、落ち着いた雰囲気を出していた。
店内には、店員1人しか居らず、ガランとしていた。
「お好きな、席へどうぞ」
店員はそう言うと、カウンターの方に戻って行った。
迷う様子も無く、端の席へ、トコロシェは向かった。
2人は席に座ると、先程の店員がこちらにメモ帳を持ちながら歩いてくる。
「ご注文は?」
「いつものを2つ」
「かしこまりました」
そう言うと、メモ帳を閉じ、カウンターに戻って行った。
「いつも、来てるんですか?」
「……偶にな」
その言葉に不思議に思いながらも、トコロシェはフードを取り、流されるように、自分もフードを取った。
トコロシェは、懐から小さな紙を取り出し、テーブルの上に置く
「今後の話をする」
チラリとカウンターを見る
「大丈夫なんですか?」
「……あの2人は同業者だ」
「なるほど……」
トコロシェはメモに指をさす
「この3人が、対象だ」
「……くねくねしてますね」
くねくねとした文字であったものの、読めない事は無かった。
「此処では、この文字が主流だ」
「……これが、一般的ってことですか?」
「あぁ」
他言語を学習しなくて良いのは楽だ。 と思いながら、太文字で書かれた所を見る。
一番上の太文字に指でなぞりながら、読み上げる。
「コリマス? マロ……め? スーテム……」
「リテアイ・マロ・メ・ステムだ」
「……どういう意味ですか?」
「……名前だ」
「名前……」
文字がくねくねしており、中点の存在が分からなかった。
「この太文字で書かれている人物を暗殺する」
「暗殺……」
「あぁ、この3人はマロ帝国の重要人物と言っても過言ではない。 本来であれば、暗殺したい所だが、彼らの警備は厳重だ。 解毒に強い魔術師や剣術に特化した聖騎士が街全体にいる為、1人を暗殺すれば、確実にこちらが殺される」
「じゃあ、どうすれば?」
「……その3人を犯人に仕立て上げる」
「犯人に!?」
「そいつ等にでっち上げの、事件を着させ、法で裁きを下し、彼らの信用を失わせる。 今ある中でこれが最善策だろう……」
「そんな事出来るんですか?」
「……」
「……決まって無いんですか? やる事……」
「行ってから考える」
(大丈夫かな……)
そんな事を思いながら、店員が歩いて来る。
店員はニコニコしながら、2つのコップをテーブルに置く。
「ホットミルクです」
トコロシェが頷くと、カウンターに戻っていた
「まず1人目だが――」
「ヤッホ! お二人さん!」
明るい声に振り返ると、ニコニコとタキシードを着た女性が席に手をつきながら、ヒラヒラと手を振る……
「誰……ですか?」




