第19話 撃破
デビルフィッシュは、けたたましい声を上げながら、逃げる様に海底へと向かった
「これ以上の戦闘は難しいね……」
フウマ達はその背中を見届けると、海面に浮かんでいた、生き残りの兵士達を拾うと、陸地に向かった…
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「おや……」
兎人共和国の陸地に向かうと、そこにはケルベロスの兵士達が手を振っていた。
近くまで降り立つと、1人の兵士が駆け足で近寄り敬礼する
「第2歩兵連隊、第1中隊より報告。目標地域の制圧を完了しました」
「敵兵は?」
「予想よりも数が少なく、現地民の協力の末、敵部隊を壊滅させました」
「輸送船団に主力が……。 今からでも叩きに行く?」
冗談交じりにイーグルに聞く
「兵士や魔石が枯渇している今、これ以上の攻勢は、損害を増やします」
いたずらがバレたかのように、ケルベロスは微笑む
「分かってるよ。 それに、主力艦隊が壊滅した状況で、輸送船団を動かさないと思うからね。 ……ルーエ君、此処ら一帯を任せても大丈夫かな?」
「…承知しました」
「では、竜人帝国向かおっか」
「何をしに向かうんですか?」
「何をって報告だよ、報告。 今回の戦果を伝えにね」
*****
【竜人帝国】
ケルベロスの軍隊も兎人共和国に残し、3人のみで、竜人帝国に降り立った
「君達は、少し休んでて」
「私も行きます」
ケルベロスは、片手でイーグルを静止させる
「大丈夫だよ。 それに、個別で聞きたい事もあるから休んでて」
「そうですか……」
フウマとイーグルは、ケルベロスが角を曲がるまで、その背中を見届けた。
糸が切れたように、ドカッとイーグルは椅子に座る
「ふぅ……」
イーグルは肩の荷が下りた様にため息をついた
「? フウマも座りな」
フウマは、イーグルの隣にゆっくりと腰を掛けた
「はは、酷い顔だね」
「イーグルも、目がたれてるよ」
イーグルはグニグニと自身の目の周りを触る
「確かに……少し疲れた……」
フウマは、最初に合ったキリッとした顔着きが、今では、寝落ち寸前の顔のギャップに驚きつつも、自身も疲れているのか、ため息交じりに観察するかの様に眺めていた。
イーグルは窓の景色を眺めながら口を開く
「私はね、あそこで生涯を終えると思っていたんだよ」
フウマは喋らずに、イーグルの話に耳を傾ける
「相手は軍事国家、更には大国と、火を見るより明らかな話だった……
だからこそ、そんな大国の歴史に祖国が刻む事が出来ないかと模索した結果、集団自決の様な事をしてしまった……
私は祖国が好きだった。 頭を容易に越える程の草、様々な果実が実る木など、私の思い出が詰まっていた土地が好きだった……
だが、そんな土地は戦争によって、更地になり、いつ侵攻されても可笑しくないよな土地に住まわされ、その時、決心した……
何が何でも、傷跡をつけてやると……
だからこそ、君には感謝している。 これ以上にない、結果を残してくれた君には……」
イーグルは息を整え、話を続ける
「私の目標は終わった。 だからこそ、君の力になりたい。 ……何か目標はあるかな?」
急に振られたフウマは固まり、頭をフル回転させる
「目標は……ちゃんと決まって無いです……」
「はは、それなら、それで良い……決まってないなら、色々出来る証拠だ…」
イーグルのまぶたは段々と下がっていく
(自分の目標ってなんだろう……
他の異世界人を探すこと?
…………いや、そんなんじゃない気がする…
もっとこう、大事な使命が……
……………使命?)
フウマの考えはそこで膠着する。
疲れと眠気が合わさり、船を漕ぐ。
頭が地面に落ちる寸前に、顔を上げ、チラリとイーグルの顔を見る
(……寝てる)
完全にまぶたは閉じ、口は半開きになっていた。
その様子に釣られて、フウマも目を閉じた……
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ツンツン
(?)
ペチペチ
(……?)
グニグニ
(……)
フウマは重いまぶたをゆっくり上げる。
そこには、紙の束を持ったケルベロスが覗き込んでいた
「うわぁ!」ゴツン!
驚いたフウマは、頭を勢いよく上げ、後ろの壁に強くぶつかった
「そんなに怖い?」
苦笑いしながら、フウマに伺う
「いやそういう、訳じゃ」
「なら良いけど……ちょっと来てもらって良いかな?」
「はい!」
(イーグルは……)
大きく伸びをしながら、身だしなみを整えていた
(今、起きたのかな?)
「ちなみに、外ですか?」
「いいや、相談室みたいな所だね」
「相談室?」
「そう、ここで他には話せない様な内容だから……良いかな?」
「分かりました」
「イーグルくんも大丈夫そう?」
「はい」
「よし、じゃあついてきて」
ケルベロスを先頭に2人はついて行った……
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ガサガサ
ゴソゴソ
ケルベロスは、壁紙や机に手を突っ込みながら、何かを探すように動き回る
「何してるんですか?」
「ん? ああ、ちょっとね」
辺りを見回し、手のホコリを払い、フウマ達に振り向く
「よし。 ささ、こっちに座って」
ケルベロスは、手でソファに座る様に促す
促された、ソファの前に立ち止まり、ケルベロスが座るのを見ると2人は腰を掛けた
「大事な話っていうのはね…………私の私兵になって欲しいんだ」
「私兵?」
「そう私兵。 君達は、今回の一件で実戦経験を積んだから、私の私兵になって欲しいんだ」
「理由を聞いても?」
様子を眺めていたイーグルが、口を開く
「理由は、今回の一件で一応は認められた……でも、一定数は運による物だと言い張っているから、結局の所、今のままだと私の構想は実現しない……」
「だからこそと……。 ですが、実戦経験を積んだ所でそれは、一般兵と変わらないのでは?」
その言葉にニヤリとケルベロスは微笑んだ




