第12話 村々
フウマは何も考えず、振り返らないようにしていた。
背中にはケルベロスが、ガッシリとフウマの腹部を掴んでおり、額を背中に押し当てている状態に、今のフウマは気が気では無かった
「だ、大丈夫ですか?」
ワイバーンの速さ故にフウマはケルベロスに聞く
「はい!大丈夫です!」
背中から女性特有の声を聞くと、更にフウマの頭はこんがらがり、集中力が失われていく
「しかし、壮観な眺めですね」
イーグルはワイバーンに乗りながら、そう呟いた。
現在、フウマ達はカーゴドラゴンが7体、竜騎兵200体が翼人共和国に向かっている途中である。
カーゴドラゴン達に乗っているのは、ケルベロス率いるコボルト達がすし詰めの様に乗っていた。
コボルト達は弓を持ち、懐に小刀を納め、前衛や後衛ができる、万能型となっている。
イーグルはカーゴドラゴンの下部に縄で、ぶら下がっている、2門の野砲を見る
「しかし、カーゴドラゴンの輸送能力は凄いですね! あれほどの人数を乗せてなお、野砲を2門を運べるのは!」
「…ええ、これが我が国の誇るカーゴドラゴンですから……」
ルーエは鼻をこすりながら、イーグルに説明する
「我が国には、一人づつで荷物などを運搬するしか無いですから、この様な大規模な輸送は初めてみました!」
イーグルは興奮気味で話す。
そんな態度に満足したのか、ルーエは口を開く
「あれはまだ、カーゴドラゴンの本気ではない……本領発揮するのは、アレの10倍になってからだ」
ルーエはフフンと鼻を鳴らす。
その言葉にイーグルは驚きの目で、ルーエを見る
「フウマさん!?」
イーグルは、フウマを見ると、顔を真っ赤にしたまま上の空を見ており、一目で不味い状態だと分かる。
だが、そんな状況にも関わらず、飛行は安定していた
「フウマ!」
イーグルは、フウマのワイバーンに近づき、フウマの顔を引っ叩く……が、応答はなく、呆けていた。
その様子にイーグルは、仕方なく、グーパンチを繰り出す
「痛っ」
フウマは頬をさする
「大丈夫か!?」
「…? 此処はどこ? 私は……!」
下を見たフウマは、我に返り、状況を一瞬で理解する
「大丈夫なのか!?」
イーグルの声に、驚くものの、イーグルの顔を見て頷く
「そうか……なら良いんだが…」
イーグルは心配そうにフウマを見る
「疲れているなら、カーゴドラゴンで休んだ方が良いぞ」
「そうですよ、休める内に休んでください」
イーグルとケルベロスはフウマを心配する
そんな2人にフウマは、罪悪感に駆られる
「だ、大丈夫です。すみません」
(ルーエさんの視線が痛い…)
そんな会話をルーエは眺めていた
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そんなこんなで、翼人共和国の村々が見える所まで飛行を続けていた
「へぁ…」
フウマは日をまたぐ距離が嘘のように早く着いたことに驚く
「…」
一方、イーグルは、魔石や木箱が規則正しく置かれている村々を見て、今だに戦闘が続いており、自身はその戦火の中にいない事に嫌悪感を抱く
「?」
ふと、イーグルは遠くに、空に浮かぶ、巨大な1つの光の矢が見えた。
その光の矢は、地面に向かって勢いよく落ちる
ドドン…
音が遅れてくるも、光景は凄まじく、光の矢が落ちた先は土を巻き上げながら、大きなクレーターを作る
「! あそこは! ケルベロス様!」
イーグルはケルベロスに顔を向ける
「あそこで戦っているのは、我が国の軍人です…助けにいけないでしょうか?」
ケルベロスは、助けるか悩むも、言葉は決まっていた
「…戦況を見て考える……イーグル君、戦況はどうなってる?」
イーグルは振り返り、戦闘が起こっている場所を凝視する
「…戦況は……我が国が劣勢であり……村の大部分を敵が占め、我が国は村でゲリラ戦を展開し、侵攻を食い止めています」
「…」
「…ケルベロス様?」
ケルベロスの顔を見て、イーグルは理解する。
助けに行かないと。
そんな様子にフウマは口を開く
「…ケルベロスさん……道中でなら助けるんですよね?」
「フウマ…」
ケルベロスはため息交じりにフウマの脇腹を軽くつねる
「…仕方ないね……行こうか!」
ケルベロスはルーエに手で合図を送る。
ルーエは呆れ顔でため息をする
「だけど! カーゴドラゴンは兎人共和国に向かわせるからね」
「はい。ありがとうございます」
イーグルは、礼の代わりに敬礼し、感謝の気持ちを伝える。
ルーエは手を挙げ、振り下ろす
「…全軍突撃!」
カーゴドラゴン以外の竜騎兵達は、フウマ達と共に加速しながら、戦場に向かう。
その速度は、吹き飛ばされるかの様に、風がフウマ達の体に当たり、フウマは飛ばされないよう、ワイバーンの紐を死に物狂いで掴む。
その甲斐もあり、フウマの目でも戦場が見える場所まで来た
「!」
フウマは、倒れた亜人に剣を振り下ろす、兵士を確認する。
フウマは、自身のワイバーンに敵を判別させる為に、ワイバーンの目に合わせるように兵士に指を刺す
「あれだよ! あれ!」
ワイバーンは理解したかの様に首を上下に動かし、口から火の玉を出す。
その火の玉は、兵士の顔に当たり、亜人に剣が振り下ろされる事はなくなった
「よし!」
フウマはワイバーンの頭を撫でると、ワイバーンの尻尾は右へ左へと振り回す
「大丈夫ですか?」
フウマは倒れた亜人の横に降りると、その亜人は驚きの表情をフウマに見せる
「竜人!? なんで此処に!?」
「助けに来ました。イーグルさんの国を」
「…イーグル? ……まさか!?」
亜人は、勢いよく起き上がり、フウマに跪く
「…遠方からの援助、誠に感謝申し上げます…」
突然の態度に、フウマは慌てる
「辞めてください! 自分はそんな偉くないですから!」
「いえ…我が小国にとっては、竜人帝国の援助は計り知れない感謝に他なりません…」
「…」
フウマは口を噤ぐしかなかった
ケルベロスは、フウマの背中からひょこっと出る
「…君は?」
「…私は西部方面軍大隊長、チキンであります」




