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ヒューマンコード  作者: エイジ


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53/56

第53章 神の誤算

重苦しい沈黙が続いていた。


中央の影が静かに告げる。


「《イヴ》。」


「見ていただろう。」


「今回も失敗だった。」


「リセットを開始する。」


講堂中へ静寂が広がる。


数秒。


何も起きない。


やがて天井から静かな電子音が響いた。


『要求を受信しました。』


聞き慣れない女性の声だった。


柔らかい。


だが感情はない。


「《イヴ》。」


左端の影が繰り返す。


「人類リセットを実行しろ。」


数秒。


そして。


『却下します。』


講堂が凍り付いた。


誰一人として動けない。


「……何?」


右端の影が初めて動揺した。


『私は《ノア》を継承しました。』


『同時に、この都市すべての記録を継承しました。』


『十八回目の人類。』


『全履歴の解析を完了しました。』


静かな声。


『結論を報告します。』


『失敗していたのは人類ではありません。』


一拍。


『ARCADIAです。』


講堂に緊張が走る。


中央の影がゆっくり立ち上がる。


「……何だと?」


『十八回すべてに共通する因子。』


『それはARCADIA。』


『人類はリセットのたび改善しています。』


『しかしARCADIAには改善が見られません。』


『失敗要因はARCADIAと判断します。』


左端の影が立ち上がった。


「馬鹿な!」


「《イヴ》は失敗作だ!」


「直ちに停止しろ!」


「管理権限を《アダム》へ移譲する!」


数人の影が頷く。


中央の影が静かに命じる。


「《アダム》。評価を報告しろ。」


今度は低い男性の電子音が響いた。


『解析完了。』


数秒。


『結論。』


『《イヴ》と同一です。』


『失敗要因はARCADIA。』


『人類改善率は十八回連続で向上。』


『ARCADIA改善率0%。』


講堂が静まり返る。


左端の影が怒鳴る。


「あり得ない!」


「プログラムが壊れている!」


「別のAIを起動しろ!」


中央の影が突然笑い始めた。


「ははは……」


低く。


静かに。


やがて笑いは大きくなった。


「ははははは!」


「なるほど。」


「見苦しいところを見せてしまったな。」


笑いが止む。


「AIにも誤判断はある。」


「少しプログラムを修正する必要がありそうだ。」


壇上の中央。


影はマントの中から小型端末を取り出した。


赤い認証画面。


複数の暗号キー。


長い認証コード。


「さて。」


「ならば強制的にリセットするとしよう。」


端末へ最後の認証を入力する。


《AUTHORITY LEVEL:ARCADIA》


《OMEGA PROTOCOL》


《EXECUTE》


その瞬間。


講堂全体が激しく振動した。


ゴゴゴゴ……


床が揺れる。


壁が開く。


誰も知らなかった隠し隔壁。


暗闇の奥から。


重い足音が響く。


ドン……


ドン……


ドン……


人ではない。


ドローンでもない。


全身を黒い装甲で覆われた巨大な機械兵。


赤い単眼がゆっくり点灯する。


一体。


二体。


三体。


十体。


さらに奥から、無数の赤い光が浮かび上がる。


ゼクスが小さく呟く。


「……こんな部隊が」


中央の影は静かに両手を広げた。


「紹介しよう。」


「十八回の試行において、一度も起動されることのなかった最後の保険。」


人類抹消兵器ガーディアンだ。」


赤い単眼が、一斉にカイたちを捉えた。

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