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ヒューマンコード  作者: エイジ


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第51章 静かな反乱

《NOAH》《停止完了》の文字が静かに点灯している。


だが静寂は長く続かなかった。


施設全体に警報が鳴り響く。


赤い警告灯が回転し始めた。


次の瞬間、入口の扉が爆発音とともに吹き飛ぶ。


監視ドローンが一斉に突入した。


その後ろから黒い装備に身を包んだ処理班が雪崩れ込む。


「来た!」


カイが叫ぶ。


エドがライフルを構え、先頭のドローンを撃ち落とす。


セラの銃弾が二機目を貫く。


アヤは処理班へ向けて連射し、ティアナは端末を抱えながら退避経路を検索していた。


「北側通路は封鎖!」


「西もダメ!」


「囲まれてる!」


施設全体が完全に包囲されていた。


次々と増援が押し寄せる。


撃ち落としても、また現れる。


弾薬も残り少ない。


やがて五人はサーバールームの奥へと追い込まれた。


銃口が一斉に向けられる。


その中を、一人の男が静かに歩いてきた。


ゼクス少佐だった。


彼はカイたちを見渡し、小さく息を吐く。


「……たった五人で、ここまで来たのか。」


一拍置いて続ける。


「賞賛に値する。」


「だが、ここまでだ。」


静かな声だった。


カイは銃を下ろさなかった。


「一つだけ聞かせてくれ!」


ゼクスは眉一つ動かさない。


「お前たちは『ARCADIA』の正体を知っていて従っているのか?」


「当然だ。」


ゼクスは即答した。


「『ARCADIA』は政府中枢組織。」


「我々は直属の軍隊だ。」


「当然命令に従う。」


カイは首を振る。


「違う!」


「僕たちはさっき、本当の『ARCADIA』を見た!」


ゼクスの表情がわずかに変わる。


「何?」


カイは静かに語り始めた。


《ノア》停止が『ARCADIA』の計画だったこと。


《イヴ》への権限移譲。


ヒューマノイド。


十八回目の人類。


そして世界のリセット。


話し終えると、ゼクスは短く笑った。


「この期に及んで何を言いだすかと思えば」


「そんな話を信じろと?」


その時だった。


ティアナが一歩前へ出る。


「証拠があるわ。」


彼女は端末を取り出した。


「会話はすべて保存してる。」


再生ボタンを押す。


静かなサーバールームに、『ARCADIA』の声が響く。


『君達は、自分たちを人間だと思っている。』


『君達は十八回目の人類だ。』


『必要であれば、何度でもやり直す。』


『世界をリセットし、再び最適な社会を構築する。』


誰も動かなかった。


録音が終わる。


誰も口を開かなかった。


サーバールームに響くのは、機械の冷却音だけだった。


やがてゼクスは静かに目を閉じた。


ゆっくりと天井を仰ぐ。


これまで感じてきた違和感。


不自然な命令。


説明されなかった粛清。


そのすべてが、一つにつながった。


静かに目を開く。


「……そういうことか。」


彼は銃を下ろした。


ゼクスだけでなく、処理班の一人も銃を少し下ろした。


それにつられるように、もう一人。


また一人。


ゼクスは少しため息を吐き、小さく呟く。


「粛清命令は中止する。」


一人の処理班員が思わず声を上げた。


「ですが、少佐!」


ゼクスは静かに振り返る。


「全員、通信を切れ。」


側近たちは互いに顔を見合わせたあと、無言でマイクをOFFにした。


一人、また一人と続く。


ゼクスは小さく尋ねる。


「……お前たちも聞いていただろう。」


誰も否定しない。


静かに頷く者ばかりだった。


ゼクスはカイへ向き直る。


「お前は、どうしたい。」


「『ARCADIA』と直接話したい。」


即答だった。


「何も変わらないかもしれんぞ。」


「それでもいい。」


ゼクスは少しだけ笑った。


「……そうか。」


彼は振り返る。


そして一斉に空へ向けて発砲した。


監視ドローンが次々と火花を散らし、床へ落ちる。


処理班も続いた。


数十秒後。


サーバールームは静寂を取り戻した。


ゼクスは通信機を取り上げる。


「こちらゼクス。」


「ジェネシス五名を殲滅。」


短い沈黙。


「お疲れ様でした。」


通信が切れる。


その場にいた処理班全員が、静かに頷いた。


誰一人、声を上げる者はいない。


この時、『ARCADIA』への静かな反乱が始まった。

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