第49章 予定された結末
サーバールーム。
静寂。
《NOAH》
《停止完了》
その表示だけが、黒い画面に残っていた。
誰も言葉を発しない。
ティアナも。
エドも。
セラも。
カイも。
アヤも。
ただ、その瞬間を見つめていた。
やがて。
セラが小さく息を吐く。
「……終わったの?」
誰も答えられない。
施設内の警報音も止まっていた。
外を見ていたカイが呟く。
「何か……起きてますか?」
アヤも窓の外を見る。
処理班。
監視ドローン。
どちらも、その場に留まっている。
だが。
混乱はない。
銃声もない。
爆発もない。
エドが眉をひそめる。
「何も動きがないですね……」
その時だった。
ティアナの画面に、新たなログが流れ始める。
誰も操作していない。
《NOAH 停止確認》
《統治権限を EVE へ移譲します》
《都市管理システム移行中》
《移行率 25%》
《50%》
《75%》
《100%》
《全システム維持完了》
部屋の空気が凍り付く。
「……EVEって何ですか?」
カイが思わず呟く。
「どういうことですか?これ」
ティアナは答えられなかった。
画面を見つめる。
「分からない……でも、《ノア》とは別のAI……?」
移行完了。
その文字だけが静かに表示されていた。
都市中央区。
夜。
信号は変わる。
車は走る。
列車も止まらない。
街灯も消えない。
大型モニターにはニュースが流れ続けている。
人々は笑い。
会話を交わし。
誰一人として異変に気付かない。
《ノア》は停止した。
それなのに。
世界は、何事もなかったかのように動き続けていた。
第七中継タワー。
ティアナが椅子からゆっくり立ち上がる。
その表情は青ざめていた。
「……やられた」
静かな声だった。
カイが駆け寄る。
「どういうことですか?」
ティアナは画面から目を離さない。
「《ノア》は止まった」
一拍。
「でも……」
画面を指差す。
「《イヴ》っていうたぶん別のAIが、すべての機能を引き継いだ」
沈黙。
誰も言葉を返せない。
「そんな……」
アヤが座り込む。
エドが呟く。
「じゃあ……」
「俺たちは……何のために……」
誰も答えを持っていなかった。
その時。
ティアナの端末が鳴る。
着信。
発信元表示は存在しない。
画面には一行だけ。
《ARCADIA》
全員が顔を見合わせる。
セラが小さく頷く。
「出て」
ティアナはゆっくり応答ボタンを押した。
数秒。
静かな電子音。
そして。
「接続許可を感謝する」
機械音声が響く。
「ジェネシス」
部屋の空気が張り詰める。
ティアナが静かに口を開いた。
「……最初から、これが目的だったのね」
一拍。
『ARCADIA』は、ためらうことなく答えた。
「その通り」
「残されたジェネシスには、《ノア》を停止するという選択しか存在しない」
全員が息を呑む。
「この結果こそが、我々の望んだ未来」
誰一人、言葉を発することができなかった。




