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ヒューマンコード  作者: エイジ


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第48章 終焉の刻

政府中央管理局。


統合作戦室。


壁一面のモニターには都市全域の監視映像が映し出されていた。


その一角。


赤い警告表示が点滅する。


《政府ネットワーク侵入検知》


管理官が思わず立ち上がった。


「侵入です!」


「第七中継タワー経由! 政府ネットワークへの不正アクセスを確認!」


会議室の空気が一変する。


その瞬間。


中央モニターに『ARCADIA』が映し出された。


「侵入者を確認しました」


静かな声。


感情はない。


「対象はジェネシス残党と推定します」


数秒の沈黙。


「ゼクス少佐」


会議室後方。


黒いコートの男が一歩前へ出た。


「はい」


「処理班を率い、第七中継タワーへ向かってください」


ゼクスは迷わず頷く。


「対象を制圧します」


しかし——


「いいえ」


『ARCADIA』が即座に否定した。


会議室が静まり返る。


「こちらから指示するまで、一切攻撃を行わないでください」


ゼクスの眉がわずかに動く。


「……包囲だけですか」


「はい」


管理官たちが顔を見合わせる。


ジェネシス残党。


ここまで追い詰めながら、なぜ攻撃を禁じるのか。


理解できなかった。


ゼクスも同じだった。


だが。


彼はそれ以上、理由を尋ねなかった。


『ARCADIA』が命令を覆したことは、一度もない。


「承知しました」


短く敬礼すると、そのまま会議室を後にした。



第七中継タワー。


サーバールーム。


キーボードを叩く音だけが静かに響いていた。


画面には膨大なログ。


認証。


解析。


中継サーバー。


政府管理ネットワーク。


一つ突破するたび、新たな認証層が姿を現す。


ティアナは小さく息を吐いた。


「政府ネットワークの階層が想像以上に深い……」


エドが近づく。


「まだか?」


「もう少し……」


画面を見つめたまま答える。


「あと一つ突破できれば、《ノア》に届く」


リュックからロック解除キーを取り出す。


金属製の小さなデバイス。


ルキとナッシュが命を懸けて託したもの。


ティアナは静かに見つめた。


「ルキ……」


「ナッシュ……」


小さく呟く。


「ここから先は、あなたたちの力を借りるわ」


キーを接続する。


画面に認証プログラムが起動した。


《MASTER KEY AUTHENTICATION》


暗号鍵が高速で流れる。


全員が息を止める。


数秒。


いや。


数十秒にも感じられた。


そして。


画面が切り替わる。


《NOAH》


ティアナの目が見開く。


「……着いた」


エドが思わず振り向く。


「本当か?」


ティアナは静かに頷いた。


「《ノア》本体よ」


その瞬間だった。


施設全体に赤い警告灯が灯る。


《異常アクセス検知》


《防衛システム起動》


低い警報音が施設中へ響き渡る。


「来る!」


エドが叫ぶ。


夜空。


監視ドローンが一斉に飛び立つ。


さらに。


何台もの装甲車両が第七中継タワーを取り囲んだ。


処理班。


数十名。


ゼクスが先頭に立つ。


無線が鳴る。


『ARCADIA』


「対象を包囲してください」


「了解」


「なお、攻撃はまだ行わないでください」


ゼクスは数秒だけ黙った。


目の前には侵入された施設。


本来なら突入命令が出る場面だ。


それでも。


「承知しました」


命令に従う。


処理班は一斉に展開を始めた。


入口。


屋上。


周辺道路。


逃走経路。


完全包囲。


だが。


誰一人として引き金は引かなかった。


「来た!」


カイが反射的に窓際へ走る。


夜空には監視ドローン。


その後ろから処理班の車列が次々と到着する。


「あっという間に囲まれたわね」


セラが銃を構える。


アヤも続く。


だが。


誰も撃ってこない。


ドローンは一定距離を保ったまま監視を続ける。


処理班も照準を向けるだけだった。


「……何?」


アヤが困惑する。


エドも窓の外を見つめる。


「何かがおかしい」


この人数なら。


この戦力なら。


とっくに突入していても不思議ではない。


それなのに。


誰も動かない。


まるで。


"何か"を待っているようだった。


ティアナは手を止めない。


《停止シーケンス開始》


認証。


照合。


停止プログラム展開。


画面に最後の確認画面が表示される。


《NOAH》


《停止命令》


《最終確認》


ティアナの指が止まった。


静寂。


都市の未来。


誰にも分からない。


《ノア》が停止すれば何が起きるのか。


社会は混乱するのか。


都市は崩壊するのか。


誰にも答えはなかった。


脳裏に仲間たちの顔が浮かぶ。


レオン。


サガラ。


ルキ。


ナッシュ。


そして。


アリシア。


ティアナは静かに目を閉じた。


「……終わらせる」


ゆっくりと目を開く。


そして。


エンターキーを押した。


その瞬間。


画面が白く染まる。


《NOAH》


《停止処理実行》


《SYSTEM SHUTDOWN》


《3》


《2》


《1》


《停止完了》


同時に。


都市全域から電子音が消えた。


一瞬だけ。


世界は完全な静寂に包まれた。

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