第7話。猫カフェとホラー?
「猫ってさー……」
「え?」
突然聞こえてきたつぶやきに、みのりは声を上げた山崎さんを振り返る。
その視線の先には、部屋の隅をじっと見るちーちゃんの姿があった。
「なに見てるんだろうね。何もないように見えるんだけどなぁ……」
そう言って山崎さん・夏川さんと一緒にちーちゃんの視線の先を見てみるが、ただ壁があるだけでなにかがあるようにはとても見えない。
「あー。よく言うよね、『猫がなにか見てる』って。ちょっと、怖いよね」
「……みのりさんは視える人?」
「全然。お二人は視えるんですか?」
「「全然」」
問いかけてみれば二人の声がハモる。
気になって、スマホを取り出しチェックする。
「人には聞こえない音とか、匂いとか気にしてたりすることがあるんですって。
紫外線も見えるとかってすごいですよね」
……小さな虫を見ていることがある、という話は伏せておいた。あとで確認しておこうと、みのりは胸に刻み込む。
「そっと見守ってあげるのがいいらしいですよ?」
「でも気になるじゃん?」
見つめ続ける山崎さんを見て、夏川さんは肩をすくめる。膝の上に乗って丸まっているハナちゃんの背中を撫で始めた。
「もーいいじゃん。動画見過ぎだって」
「動画?」
夏川さんの声に首をかしげると、夏川さんがため息を吐きながらうんうんと頷いた。
「最近怪談系? とかの動画にハマったらしくて。
なんかあるとすぐにそんなこと言い出すんだよねー」
「だって気になるでしょー」
「だからって人のお店で言わないの。
ごめんね、みのりさん」
「……いいえ。でもたしかに気になりますよね」
……そう言われるとたしかに気になってくる。しかも二人は帰ればすむ話だが、みのりは自分の店なのだ。『何か』にいてもらってはひどく困る。
無理矢理笑顔を作っていると、カウンターに朔夜が上がってくる。こちらをチラリと見、ちーちゃんが見ている方向を見上げ……何故か納得したように目を細めた。そして「なーぉ」と鳴いてみせる。
「え、ちょっと待って。さくちゃん、なに? なにか見えるの?」
店内全員の視線を集めた朔夜はフンと鼻を鳴らし、カウンターを降りる。
長い毛を揺らしながらちーちゃんの側に行き、ペロリと首元を舐めた。ちーちゃんがビックリしたように朔夜を見、お返しに舐めている。
ペロペロと二匹はお互いを舐め合い、止めた。
みんなが見つめる中、朔夜は再度みのりを見、
「なーぉ」
と鳴いてみせた。その後ぽすんとクッションに寄りかかり、大きなあくびをしている。
店内にいた全員が慌てたようにスマホやパソコンを触る。
空気清浄機の動く音だけが響く中、
「……小さい虫とかがいたとかかもしれませんし。
今度見ておきますね」
みのりが渋々そう呟いて、全員が頭を下げた。
朔夜はそれを見て、フンと鼻を鳴らす。そして何事もなかったかのように、ゆっくりと目を閉じた。




