第24話。お詫びの品と、少しの違和感
「……ってことがあったんですよ……」
「あらあら。大変でしたねぇ……」
おもわず愚痴るように店長の芦澤みのりが話すと、スタッフのゆかりさんは困ったように笑っていた。
「だからゆかりさんも遠慮なく召し上がってくださいね」
そう言っていただきものの箱をゆかりさんにそっと差し出せば、ゆかりさんは「ありがとうございます、私も好きなんでうれしいです」と頭を下げて一つ手にしてくれた。
「でも……大丈夫ですか、受け取っちゃって?」
「物としては多分大丈夫だと思います。
キレイに包装されてましたし、なにより箱に穴や開封した後はありませんでした。猫用も人間用も振ったり水に入れたりしても、中身が出たり濡れたりとかはしなかったですし……なにより猫たちも封を切らないと見向きもしなかったので」
「……失礼ですが、人としては?」
ゆかりさんの口から出た言葉にドキリとした。
こんな物言いをするのは珍しい。なにかあったのかな――そう思いながらも、みのりは首を振った。
「初めて来店された時はちょっと色々あったみたいですけど、昨日は特に。
人としては……臆病で人見知りっぽい人でしたけど、悪い人ではないと思います」
昨日はなんとか猫たちとも触れ合って笑顔で帰ってくれたので、多分大丈夫。
そう言うと、ゆかりさんがまた少し困ったように笑ったことが気になった。
「……どうか、しました?」
問いかけると、ゆかりさんが緩く首を振った。
「いえ、ちょっと過敏になりすぎてるだけかもしれません。
……ごめんなさい、嫌な言い方になってしまって」
「いえ、そんなことはないですけど。
でも珍しいな、って思って……」
みのりがそう口にすれば、ゆかりさんがふぅとため息を吐いた。
「……少し、前のお店でのことを思い出してしまって。
大丈夫そうならよかったです。来店されたら教えてくださいね。私もお菓子のお礼申し上げたいですし」
「分かりました。
でも、アレだめだと思いません? お菓子お引き取り願おうと思ったら「猫飼ってないから返されても困る」ってー!」
そう言われちゃったらこっちもありがたいし返せないー!
そう言ってみのりが机に突っ伏すと、ゆかりさんがクスクスと笑ってくれた。
「まぁ猫の方が嗅覚優れてますし。
朔夜が嫌がらないなら大丈夫かなって。まぁおやつの誘惑に負けてたら分かんないですけど」
「さくちゃん責任重大ですね」
「ボスなんでそれぐらいは助けてもらわないと」
そう言ってクスクス笑っていると、ピピピピピとスマホからアラーム音が鳴る。アラームを止めて、ゆかりさんと二人で立ち上がった。
休憩時間終了15分前。午後の準備をするべくスタッフルームから店内へと戻ると、朔夜がカウンターに座っていた。
「朔夜店長、お疲れ様」
スタッフルームでのノリでそう声をかけてみると、尻尾をゆらゆらと動かされた。
ポンポンとお尻を叩くと、ウンッと伸びてそのままカウンターから降りていく。のそりのそりとクッションに向かって歩いていく姿を見て、力が抜けた。
午後からも、頑張ろう。




