第13話。初日です。
ガチャリと鍵を開け、少し重たいドアを開ける。スイッチを押すと廊下に明かりが灯った。
「鍵は警備員さんに、入館手続きの後に出してもらってください。
それでライトを点けてもらったら、右側がスタッフルームになります」
そう言ってみのりは山辺さん――改め、ゆかりさんに説明する。ゆかりさんは「はい」と頷きながら、スタッフルームに入ってきた。
「朝番でお願いする時は、まず猫たちのチェックですね。
私もやり方はMofittoで教わった通りにやっているので、それでお願いします。
チェックが終わったら猫たちは下ろしてもらって大丈夫です。勝手に隣へ行きますから」
「分かりました。ところで爪切りとかはどちらに?」
「キッチンの引き出しに入れてあるので、そちらからお願いします」
そう言えば「はい」と答えたゆかりさんが、キッチンの引き出しを開けて確認する。
手早く二人で自動給餌機やお水、トイレなどをチェックしていく。
横目でチラリとうかがうと、ゆかりさんは慣れた様子で確認を進め、猫たちの目や耳、爪の状態も見てくれていた。
(……さすが)
猫カフェチェーン店で3年以上という経験は伊達じゃない。
ホッとこっそり息を吐き、最後の一匹を確認して床に下ろした。朔夜含めてスタッフルームにもう猫は一匹もいない。
「お客様にお出しするペットボトルは、キッチン横の冷蔵庫と保温庫に入っているのでそちらからお願いします」
「ストックはどちらに?」
「キッチンの下に入れてます。このケースからなくなったら、お願いしている業者さんに連絡する感じですね」
二人でキッチン下を確認した後、スタッフルームを出る。
「トイレ掃除は隙を見てって感じでやってました。
お店部分の掃除はお客様がいらっしゃらない時にちょこちょこ、ちゃんとするのは閉店後ですね」
話しながらお店に入る。猫たちは思い思いの場所でくつろいでいた。
「開店前準備をして、オープンって感じです。
……大丈夫ですか?」
「だいたいMofittoと同じですよね? 大丈夫だと思います。
なにかあったらまたおうかがいしますね」
「はい、お願いします」
ニコリと笑って頭を下げてくれるゆかりさんに、みのりも頭を下げる。
説明をしながら二人で外回りの開店準備をし、開店時間の10時を迎えた。
「休憩時間は外の案内にも書いてあるんですけど、11時半から1時間を設定しています。お昼は……面接の時にもお伝えしたんですけど、一人の時はお店でお願いします」
「分かりました。猫ちゃんたちと一緒に過ごせてうれしいです」
ニコニコ笑顔のゆかりさんを見てホッとする。
まだ説明しただけで一緒に働いたわけでもない。でも朝から一緒に動いてこの人なら大丈夫そうだ、と思えた。
「とりあえず初日ですし、少しずつ慣れていってもらえれば。
なにかあれば遠慮なく言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます。
私ももし何かやっちゃったら、教えてくださいね」
「もちろんです!」
二人でクスクス笑っていると、カウンターに朔夜がひょいっと乗ってきた。
ゆかりさんが朔夜の背中をそっと撫でている。……朔夜もまんざらではなさそうだ。
ガチャ、と。外の扉が開き、二人で背筋を伸ばす。
入ってきた金橋さんに
「いらっしゃいませ」
一緒に頭を下げた。




