番外編短編・アクレシアの独り言
私はアクレシア。商家の令嬢だけど、ひょんなことから伯爵令嬢のエステルと友達に。
同じ学園とはいえ、学年も違う。家柄など共通点もないけれど、あの事件の時のエステルは泣き寝入りしなかったし、嫌いじゃない。
「エステルって令嬢可愛いよな」
「一見地味だけど美女だ」
「どうする? 狙っちゃう?」
「マジで? 伯爵令嬢だぞ」
そんな時、他校の男子生徒たちがエステルの噂をしているのを聞いた。エステル本人は鈍いので全く気づいていないけれど、隠れファンはいるみたい。
「どうしようかな。一応あのカミルに報告しておいた方がいい?」
それは少し悩ましい。今のところカミルがエステルを気に入っているとか確証などないし。
とはいえ、このまま黙っておくのもなんか違う気がする。
私はエステルがいない日を見計らい、探偵事務所に向かい、この件を報告した。
事務員のマーサは勝手に盛り上がり「やっぱりエステルお嬢様はかわいいですからね!」と笑っていたが、カミルはむすっとしていた。超不機嫌。露骨すぎじゃないの。これ、エステルが気づいていなかったら、相当鈍いわ。さすが箱入りのお嬢様という感じではあるが。
「カミル様、そんな露骨に不機嫌になることないでしょー。そうだ、もうプロポーズしちゃえ!」
私が揶揄うとカミル、飲んでいたコーヒーを吹き出す。もう本当にわかりやすい。本当に探偵が務まっているのか首を傾げてしまう。猫のミルクはこんなカミルに呆れたように鳴いていた。ミャァ〜。
「でもエステルに悪い虫がつかないか心配だね。マーサもそう思うでしょ?」
「アクレシアお嬢様の言う通りですよ。もし悪い男に引っかかったりしたら、大変です。ね、カミル様」
カミルはまたむせていた。余計に不機嫌になっていたし、これはちょっと側から見ていると面白い。
「私、エステルに悪い虫がつかないか見ておこうか? いわばスパイだよ」
自分で提案しておきながらワクワクしてきた。最近、スパイ小説を読んだからかもしれない。
「まあ、保護者としてはそう思う。アクレシア、頼んだぞ」
結局、エステルの様子を観察し、カミルに報告することになったが、自分のことを保護者だとはねぇ……。本気で言っているとしたら、カミルも相当鈍いかもしれない。
その後、エステルの影をこっそり追ったり、他校の男子生徒の噂を調べたりした。
なぜかロージー先生もエステルを美女コンテストに誘っていたことも全部カミルに報告。ロージー先生のことも怪しみ、カースと関係あるんじゃないかと目を光らせていたけれどね。
「エステル、美女コンテストで優勝してから男性ファンが増えてるわ。他校の男子生徒も学校まで押しかけるかもしれない」
そのことも報告すると、カミルは露骨に不機嫌な顔を見せてきた。舌打ちまでしている。
これにはマーサも私も大笑い。さらにカミルは不機嫌になっていたけれど、心配だから学園までエステルを迎えに行くと出て行ってしまったわ。しかも威嚇のためか、大人っぽいスーツに着替えて髪までセットしている始末。
「ところでアクレシアお嬢様、エステルお嬢様はスパイみたいなことされてるって気づいてます?」
「それが全然気づいてない。私が後をつけても。あの子の鈍さ、筋金入りでは?」
思わずマーサと顔を見合わせ、苦笑してしまう。
「エステルは探偵向いてないわよ。結婚した方がいいタイプだと思う」
そう呟くと、マーサも深く頷く。猫のミルクはあくびをし、眠そうな目を見せていた。




