表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある伯爵令嬢の復讐事件簿〜妹に婚約者を奪われたので、浮気探偵はじめます〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/45

プロポーズと最後の事件(11)

 元魔術師のカース・ギューデが捕まった。報道によると、逃亡後は雑木林や森で潜伏していた。その時、偶然、ロージー先生がカースを見つけた。


 ロージー先生にとってはかつての恋人。浮気されて捨てられた過去はあるものの、彼を匿ったらまた恋人同士に戻れると考えた。


 カースにとっても逃亡中の身の上だ。ロージー先生は遊び相手だったが選択肢はない。ここで利害が一致。結局、雑木林で小屋を作り、二人で生活していたらしい。人気がないこの場所、隠れるのにはちょうどよく、警察も見つけられなかったらしいが、カミルの元にはホームレスや娼婦、前科者などから目撃情報があったという。


 カミルもカースの居場所やロージー生活との関係を掴んでいたが、決定的な証拠がないまま、私とケイシーがロージー先生を尾行しているのに気づき、後をつけ、さらに先回りしカースの小屋を発見。警察に通報し、今に至る。こうして事件は解決し、王都にも平和が戻った。依頼者のオドレイ夫人も満足していた。


「それにしてもカミル。私、ケイシーと尾行しているようで、されていたとか……。ケイシーも私も全然気づかなかった」


 こうして平和が戻った探偵事務所。文句が漏れていた。探偵事務所の休憩室は相変わらず。マーサが編み物をし、猫のミルクは我が物顔でソファを鎮座し、カミルはお茶を啜っていた。その目はちょっと意地悪そう。口元も笑いをこらえていた。


「エステル、君はまだまだだ。あのケイシーにも伝えてくれ」

「そうだけど」


 何か悔しい。あれ以来ケイシーは推理や探偵の仕事に興味深々。推理小説も読み漁り、この探偵事務所にも正式に助手になった。


 推理にどんどんハマっていき、カミルへの思いも消えたらしい。カミル様とも呼ばなくなった。「師匠」とか「先生」とか呼び、今日も一人で迷い猫の聞き込みに行っていた。卒業後は探偵の専門学校にも行きたいとまで語ってるぐらいだ。


「というかケイシーが頑張ってくれているから私の仕事はもうないわねぇ」


 おかげで尾行も聞き込みも何もやっていない。実に平和な日々だが、何か違和感が残っていた。


 一つ謎も残ってる。なぜカミルは私たちが尾行していたって知っていたのだろうか。しかも偶然カミルに助けられたのは三回目。偶然だとしても三回も続いたら必然だ。


「そんなエステルに問題だ。その謎を解いてみろ」

「えー? わからない」


 カミルに目を覗き込まれた。嘘もつけないような澄んだ目だった。一方、マーサはヒントを出す。


「ヒントですわ。カミル様はエステルお嬢様のことを大事に思っているって事です」


 マーサは編み物を終えると、休憩室から出て行く。猫のミルクもマーサの後を追っていた。お腹が空いているらしい。餌をねだって鳴いてる。


「ど、どういう事? え、私が大事?」


 一方、カミルの目は泳いでいた。何かバレたら困ることでもあるのだろうか。


 もう一度よく考えてみた。もしかしたら、カミルに私の動向を伝えている人物がいるだろうか。スパイと言ったら大袈裟だが。


 だとしたら偶然ではなくなる。それは誰か。この探偵事務所と学園の共通人物は?


「あ! アクレシアね! あの子が私のこと、カミルに教えていた?」


 ふっとその名前が出てきた。アクレシアはあの妹の事件の時に親しくなった子だ。一つ下の学年だったが、今でも友達。まさかアクレシアが学園での私をカミルに伝えていたか予想外だったが、よく考えたらわかってしまった。


 なぜアクレシアはスパイみたいなことをしたのだろう。アクレシアは人懐っこい性格だ。自分からスパイ役を引き受けるとは思えない。だとするとカミルが依頼した。その理由は……?


「私が信用できないのね。探偵事務所の守秘義務を漏らすかもって思ったのかしら」


 そう考えるのが妥当だ。しかしその回答を言うと、カミルはお顔を真っ赤にして怒ってきた。


「違う、そうじゃない! エステルは鈍い! アクレシアだって俺の意図をすぐにわかったぞ!」


 珍しく感情的に声を荒げるカミル。気づくとカミル、私のすぐ側まで来てる。


「エステルは本当に鈍い。アクレシアから他校の男子生徒にちょっと噂されてモテてるって聞いたからな。だからスパイ役やらせたんだよ」

「え? え? どういうこと?」

「鈍いな〜。変な虫がつかないか心配だったんだよ!」

「それって父親的な?」

「違うー!」


 頭を抱えているカミルを見ていたら、私でもようやく気づいた。それは多分、嫉妬とか他の男にち取られるんじゃないかっていう心配のため。ようやく気づく。カミルの気持ちにも気づいてしまい、居た堪れない。私の頬も熱い。恥ずかしい。今まで感じたことがないものが胸に染み込んでいく。


「エステル、婚約を前提に付き合ってもらう」


 おまけにこんな命令もされた。でも、カミルも子供のように顔が真っ赤だったし、あんまり命令らしくなっていないから、思わず笑ってしまう。


「そこは結婚を前提にじゃないの? 婚約前提?」

「どっちでもいいだろう」

「確かに」


 しばし見つめ合うと、笑ってしまう。予想外のプロポーズだったけれど、今は素直になりたくなった。


「カミル、ありがとう 嬉しいわ」


 自分の気持ちを言葉にすると、また笑ってしまった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ