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とある伯爵令嬢の復讐事件簿〜妹に婚約者を奪われたので、浮気探偵はじめます〜  作者: 地野千塩


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プロポーズと最後の事件(6)

 ガタガタと馬車が揺れる。どうも道の様子が悪いらしいが、探偵事務所までしばしの我慢だ。


「というか、昨日も今日もどうして来たの? カミル、偶然?」


 私は首を傾げ、隣のカミルに聞いていた。私は美女コンテスト自体もカミルに言っていないし、偶然にしてはタイミングが良い。


 カミルは咳払いをし、いつものように少し意地悪そうな目を見せた。


「偶然さ」

「えー? 本当?」

「実はカース・ギューデをこの辺りで見たっていう噂を入手した。まあ、数年前のことだが」

「あ、そういう事……」


 つまり調査の一環で偶然来ただけの話だった。恥ずかしい。何か勘ぐったみたいで私らしくないじゃないの。


 それに嫌がらせの手紙の件も報告しなきゃ。馬車はガタガタとうるさいけれど、今は一番これが重要だ。


「何だこの手紙は?」

「たぶん美女コンテストの出場者の誰かが犯人だと思うけど、この手紙だけ妙よ。なんで私たちがカースの調査中って知ってるの?」


 カミルの目が鋭くなった。手紙も睨んでいた。


「おかしいな。まるでこれだと……。まさか学園内にカースがいるのか? あるいはカースの協力者が」

「その可能性があると思うのよね。何でこんな手紙を送ってきたのか謎だけど」

「そうか……」


 カミルは腕を組み、しばらく無言。余計に馬車の音がうるさく感じた瞬間、カミルはニヤニヤと笑い始めた。決して善人には見えない笑顔だった。何か企んでいるのに違いない。


「エステル、この嫌がらせの犯人を捕まえろ」

「え、私? もしかして一人で?」

「決まってるだろ。俺は学園内に入れない。身分を偽って潜入はできるが、そう長くいられない。エステルがきの件を調査するのが自然だろう」


 調査をけしかけてきた。予想通りではある。初めて会った頃も同じように復讐をけしかけてきた。


「こんな風にブスとか言われて悔しくないのか? カースの件はともかく、こんな卑怯なやつら復讐しろ」

「でも私、別に美人じゃないわよ。美女コンテストで優勝できたのは偶然」


 本当にそう思う。たまたま演技審査が良かっただけ。しかもカミルの助けがあったからだ。他の出場者のマギーやケイシーの方がよっぽど美人だと思う。


「いや、違う」

「違うって何が? 何が違うの?」


 カミルは悔しそうに下唇を噛む。こんな感情を表現するカミル、初めてだった。


「エステルはブスじゃない。いや、美人だ」

「は?」


 驚いた。そんな美人とか滅多に言われたことは無い。貴族のお世辞では何度も聞いたことはある。でもそれは棒読みの社交辞令だったし、お父様や妹にも顔を悪く言われてきたのがリアルだ。


「いいや、エステルは美人だ。美人に決まってる」


 何か子供が拗ねているみたい。カミル、どうしちゃったのだろうか。どこかで頭でも打ったのだろうか。


「本当にブスだったら美女コンテストで優勝なんて無理だから」

「そ、そう?」

「いいか、エステル。自信をもて」


 今日のカミルは変だ。やはりどこかで頭をぶつけたのだと思う。


 これ以上、美人とか美女コンテストの話が耐えきれなくなり、私は一度咳払いをすると、話題を変えた。というか戻した。カースの件に。


「そうだなぁ。俺は引き続き、この王都でカースの目撃談や噂を調査する」

「それがいいわね」


 話題がようやく戻り、私はほっと一息つく。


「私もその調査する?」

「いいや、エステルは学園内で嫌がらせの犯人を捕まえろ」


 どうやらそれは決定事項らしい。まあ、それで良いだろう。美人とか美女コンテストになるよりは。


「こんな嫌がらせに負けるなよ、エステル」

「え、ええ」


 カミルに励まされてしまい、もう本当に嫌がらせの犯人を捕まえるしか無さそうだった。


 翌日、私は朝一番に学園に行くことにした。嫌がらせの犯人が再度犯行する可能性が高い。まずは下駄箱を見張ることにした。


「うーん、誰も来ないわね……」


 下駄箱を見張っていても犯人らしい人物はいない。他にも部活や勉強で朝早く来ている生徒に聞き込みをしてみたが、それらしき人物はいなかったという。


 なんだか拍子抜けだ。昼休み、カフェテリアで一人サンドイッチを食べていたが、わからない。犯人は朝、下駄箱に向かった可能性は低い?


「だとしたら放課後から夕方?」


 そのことに気づくと、持っていたサンドイッチを落としそうになる。放課後や夕方に犯行に至ったとしたら、生徒だけでなく教師や職員も容疑者になるだろう。


 特に学園が閉まる時間は夜の八時。もうこの時間に生徒はいない。夕方の五時には全員校舎から出る校則があった。


「となると、職員や先生も犯人の可能性……」


 てっきり生徒が犯人だと思いこでいた。しかし、この学園の先生も職員も門の警備員、用務員やカフェテリアのスタッフ、特に怪しい人物はいない。


 ここ数日、学園内で聞き込みをしてみたが、有力な情報は一切ない。


 がっくりと肩を落とし、探偵事務所に向かう。もう数日も経てば美女コンテストの騒ぎも落ち着き、日常に戻っていたが。


 一方、カミルの方は進展があったらしい。カースの元浮気相手の女たちを調査し、一人怪しい人物がいたらしい。その女はカースに捨てられた後もしつこく迫り、執着していたらしい。しかもカミル、聞き込みの結果、その女の似顔絵も作成していたが。


「え?」


 その似顔絵を見て声に詰まってしまった。カミルもマーサも調査が進展して嬉しそうなのに、驚いた。


「え、本当にこの人……?」


 似顔絵を見つめながら、声が漏れる。


 その似顔絵、ロージー先生にそっくりだったから。まさか嫌がらせの犯人もロージー先生?


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― 新着の感想 ―
Σ 突然、挙動不審になるカミル、かわゆいのでは??と思っていたら、どえらいことに!
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