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「正しさの代償」

第8話です。この作品は短く作ろうと思ってるんですがどんどんとキャラが動いてくれて書いてて楽しくなって予想より長くなりそうです。泣きそうだけどルクス達を書くのが楽しいよ

空が、わずかに白み始めていた。



 どれだけ歩いたのかは分からない。



 時間の感覚が、曖昧になっている。



 ただ。



 あの戦闘から、一日は経っている。



(……逃がした)



 小さく、吐く。



 選んだのは、自分だ。



 それでも。



 納得はしていない。



(あれは、危険だ)



 確信している。



 あの存在。



 放置していいものではない。



 なのに。



 思考の奥に、引っかかるものがある。



(……似ている)



 言葉にしてしまえば、それだけだ。



 だが。



 それだけで済ませていい感覚ではない。



 剣を握る手に、わずかに力が入る。



 思い出そうとする。



 何に、似ているのか。



 だが。



 形にならない。



 ただ、断片だけが浮かぶ。



 光。



 熱。



 焦げた匂い。



 誰かの声。



 伸ばした手。



 ――届かない。



 そこで、途切れる。



「……っ」



 わずかに息が詰まる。



 それ以上は、出てこない。



 出そうとすると、思考が鈍る。



 拒絶するように。



(……なんだ、これ)



 眉をひそめる。



 自分の記憶のはずなのに。



 うまく掴めない。



 違和感だけが残る。



 首を振る。



 振り払うように。



「……関係ない」



 切り捨てる。



 今、優先するべきことは一つ。



 排除。



 それだけだ。



 再び、歩き出す。



 迷いはない。



 そう思った瞬間。



 気配。



 微かに。



 だが、はっきりと。



 止まる。



 視線を向ける。



 前方。



 木々の隙間。



 “いる”。



 黒い影。



 揺らぐ輪郭。



 セリアの呼吸が、わずかに乱れる。



(……まだ動けるのか)



 あの戦闘。



 確実に削ったはずだ。



 それでも。



 立っている。



 ルクス。



 反射で、剣を構える。



「動くな」



 低く告げる。



 だが。



 ルクスは動かない。



 逃げない。



 ただ、そこにいる。



 距離がある。



 それなのに。



 妙に遠く感じない。



(……なんだ、この感覚)



 違和感が、強くなる。



「……なんだよ」



 ルクスが口を開く。



 少しだけ息が荒い。



 完全ではない。



 それでも。



 立っている。



「また来たのかよ」



 軽い調子。



 だが。



 どこか、無理をしている。



 セリアは答えない。



 ただ、見ている。



 観察ではない。



 確かめるように。



(……似ている)



 また、浮かぶ。



 断片が、揺れる。



 手。



 声。



 名前。



 ――呼ばれた気がする。



 だが。



 思い出せない。



「……名前は」



 気づけば、口にしていた。



 自分でも、理由が分からない。



「は?」



 当然の反応。



 それでも、引かない。



「お前の、名前は」



 ルクスは少しだけ黙る。



 迷うように。



 それから。



「……ルクス」



 短く答える。



 その瞬間。



 胸の奥が、わずかに軋む。



(……違う)



 違うはずだ。



 そんなはずはない。



 それでも。



 何かが引っかかる。



 消えない。



「……そう」



 それだけ返す。



 それ以上、言葉が出ない。



 沈黙。



 張り詰める。



 剣を握る。



 力を込める。



(斬れ)



 分かっている。



 やるべきことは一つ。



 排除。



 それだけ。



(なのに)



 動かない。



 身体が、拒んでいる。



 理由は分からない。



 分からないまま。



 時間だけが過ぎる。



「……来ないのかよ」



 ルクスの声。



 責めるでもなく。



 ただ、確かめるように。



 セリアは答えない。



 答えられない。



 やがて。



 剣を、下ろした。



「……次は」



 小さく言う。



「迷わない」



 言い聞かせるように。



 背を向ける。



 歩き出す。



 振り返らない。



 振り返れない。



 気配が遠ざかる。



 やがて、消える。



 ルクスは、その場に残る。



「……なんなんだよ、あいつ」



 小さく呟く。



 意味が分からない。



 殺しに来た。



 そのはずなのに。



 斬らなかった。



(意味わかんねえ……)



 だが。



 頭の奥に残る。



 あの視線。



 あの、迷い。



(……なんだよ、それ)



 理解できない。



 それでも。



 引っかかる。



 消えない。



 空は、完全に明るくなっていた。

という事で第8話でした。次回は少し過去編でもやろうかなと思います。ちょっとだけルクスとセリアの関係が分かる?かも?

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