「届かない牙」
第7話です。対戦お願いします。
踏み出した瞬間。
⸻
“そこにいた”。
⸻
(――速っ)
⸻
認識が、遅れる。
⸻
次の瞬間。
⸻
衝撃。
⸻
ルクスの身体が弾ける。
⸻
地面へ。
⸻
木々へ。
⸻
空気へ。
⸻
一斉に散る。
⸻
「……反応はするか」
⸻
低い声。
⸻
すぐ近く。
⸻
フェンリル。
⸻
ただ立っているだけ。
⸻
それだけで、距離の意味が消えている。
⸻
(なんだよ、これ……)
⸻
再構成。
⸻
無理やり形を戻す。
⸻
距離を取る。
⸻
だが。
⸻
フェンリルは動かない。
⸻
ただ、見ている。
⸻
観察している。
⸻
「来いよ」
⸻
軽く言う。
⸻
「逃げても意味ねえんだろ」
⸻
ルクスが吐く。
⸻
息が荒い。
⸻
まだ一撃。
⸻
それだけで、分かる。
⸻
(格が違う)
⸻
「いいな」
⸻
フェンリルが、わずかに笑う。
⸻
「分かってる顔だ」
⸻
挑発。
⸻
だが、事実。
⸻
ルクスは歯を食いしばる。
⸻
逃げない。
⸻
分散。
⸻
広がる。
⸻
木々の間へ。
⸻
地面へ。
⸻
影へ。
⸻
一斉に動く。
⸻
「――拡散」
⸻
言葉が漏れる。
⸻
フェンリルの目が細くなる。
⸻
「それか」
⸻
興味。
⸻
その瞬間。
⸻
風が走る。
⸻
いや。
⸻
違う。
⸻
フェンリルが動いた。
⸻
見えない。
⸻
だが。
⸻
“全部”が崩れる。
⸻
「……っ!」
⸻
分散した全てが、同時に弾かれる。
⸻
統制が切れる。
⸻
繋がりが、途切れる。
⸻
(やべえ……!)
⸻
戻せない。
⸻
一瞬、遅れる。
⸻
その隙。
⸻
牙が迫る。
⸻
直撃。
⸻
削られる。
⸻
「――ぐっ!」
⸻
初めての感覚。
⸻
“減る”。
⸻
(……なんだ、これ)
⸻
再構成。
⸻
だが、遅い。
⸻
足りない。
⸻
「遅いな」
⸻
淡々とした声。
⸻
だが。
⸻
どこか、楽しんでいる。
⸻
追撃は来ない。
⸻
待っている。
⸻
(……見てるのかよ)
⸻
試されている。
⸻
完全に。
⸻
「どうした」
⸻
フェンリルが言う。
⸻
「それで終わりか?」
⸻
ルクスは息を吐く。
⸻
悔しさが、滲む。
⸻
(終わるかよ)
⸻
踏み込む。
⸻
分散。
⸻
今度は、意識する。
⸻
バラバラにしない。
⸻
繋げる。
⸻
ズレを減らす。
⸻
「――収束」
⸻
集める。
⸻
一点へ。
⸻
圧を乗せる。
⸻
叩き込む。
⸻
一直線に。
⸻
フェンリルへ。
⸻
直撃。
⸻
――のはずだった。
⸻
止まる。
⸻
爪で、受け止められている。
⸻
軽く。
⸻
まるで。
⸻
何でもないように。
⸻
「……軽いな」
⸻
一言。
⸻
弾かれる。
⸻
身体が崩れる。
⸻
地面に叩きつけられる。
⸻
「くそ……!」
⸻
立て直す。
⸻
分かっている。
⸻
(届いてねえ)
⸻
だが。
⸻
(さっきのは)
⸻
確かに、届きかけた。
⸻
フェンリルが、わずかに首を傾ける。
⸻
「今のは悪くない」
⸻
評価。
⸻
上から。
⸻
当然のように。
⸻
ルクスは息を整える。
⸻
(なんでだ)
⸻
考える。
⸻
さっき。
⸻
セリアの時も。
⸻
今も。
⸻
“流せた”。
⸻
偶然じゃない。
⸻
(なら――)
⸻
フェンリルが、一歩踏み出す。
⸻
圧が増す。
⸻
来る。
⸻
今度は、速い。
⸻
さっきよりも。
⸻
明らかに。
⸻
(見えねえ……!)
⸻
だが。
⸻
感じる。
⸻
軌道。
⸻
流れ。
⸻
来る位置。
⸻
瞬間。
⸻
身体を“ずらす”。
⸻
流す。
⸻
牙が、掠める。
⸻
当たらない。
⸻
完全に。
⸻
初めて。
⸻
フェンリルの動きが、止まる。
⸻
「……ほう」
⸻
興味。
⸻
はっきりと。
⸻
ルクスは息を吐く。
⸻
(できた……!)
⸻
確信。
⸻
偶然じゃない。
⸻
再現できる。
⸻
フェンリルが笑う。
⸻
楽しそうに。
⸻
「いいな、それ」
⸻
一歩引く。
⸻
自分から。
⸻
距離を取る。
⸻
「今日はここまでだ」
⸻
「は?」
⸻
思わず声が出る。
⸻
フェンリルは背を向ける。
⸻
興味は消えていない。
⸻
むしろ。
⸻
強まっている。
⸻
「壊れねえし」
⸻
「少しは見れる」
⸻
振り返らないまま言う。
⸻
「次は、もっと見せろ」
⸻
歩き出す。
⸻
止まらない。
⸻
森の奥へ。
⸻
気配が遠ざかる。
⸻
やがて、消える。
⸻
完全に。
⸻
静寂が戻る。
⸻
ルクスは、その場に残る。
⸻
動けない。
⸻
息を整える。
⸻
「……なんだよ、あいつ」
⸻
悔しさが残る。
⸻
圧倒的だった。
⸻
手も足も出ない。
⸻
それでも。
⸻
(……やれた)
⸻
ほんの一瞬。
⸻
だが。
⸻
確かに、届いた。
⸻
(足りねえけど)
⸻
歯を食いしばる。
⸻
(やれる)
⸻
確信が残る。
⸻
確かに感じていた
というわけで第7話でした〜。矛盾しないように書いてるつもりだけどやっぱり難しいです




